--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1120 (2014.10.31)

Q. みっちさんからの疑問

 私はカレーライスも好きですが、ハヤシライスも好きです。
 ハヤシライスのことを、「ハッシュド・ビーフ」と呼ぶ人もいます。よくある疑問だとは思うのですが、
「ハヤシライス」と「ハッシュド・ビーフ」は、同じものなのですか? それとも、違うものなのでしょうか? そのまま食べ
るか、ご飯に書けて食べるかだけの違いなのでしょうか?
 また、「ハヤシ」はどう聞いても「林」に聞こえるのですが、由来を教えてください

私も、ハヤシライスは大好きです。我が家ではあまり登場しませんが……。


A. hoshiyanさんから

 ネットで調べてみると、ハウス食品とグリコのホームページに同じような文脈で「ハヤシライスとハッシュドビーフの違いは明確ではない」と掲載されている。したがって、同じようなものなのだろう。
 イメージとしては、ハヤシライスはトマトソースやトマトケチャップなどをベースにした子どもから大人まで親しみやすい味。ハッシュドビーフはデミグラスソースをベースにした大人向けの味ということらしい。つまり、イメージとして違いはあるものの定義としては違わないということになる。
 あたかも別々の料理があるような誤解が生まれた理由は、ハヤシライスに押されて使われなくなっていたハッシュドビーフという料理名を1989年にハウス食品が敢えて、「ハッシュドビーフ」と名づけて高級感のあるルウを販売。これがヒットして、他社もハッシュドビーフとして商品を次々に売り出したことで、消費者が別の料理と認識したからといわれる。
 さて、問題は「ハヤシライス」の語源だ。諸説あるので、以下は私の考えるところということで、お読み頂ければ幸いだ。

・日本人の古い仏教感から牛肉を使った料理を食べていると罰が当って「早死にする」と言われた。この早死がハヤシの語源とする説
・書籍・文具等の販売事業を日本全国に展開している「丸善」の創業者・早矢仕有的が考案したという説
・老舗西洋料理店・上野精養軒のコックだった林頼助という人が従業員の賄い食として考案したとする説
・上野精養軒と丸善がほど近くにあったことから、早矢仕が上野精養軒をよく利用しており、早矢仕とコックの林の合作だとする説などがある
 
 早死に説は縁起が悪いので、日本人の間では広がらないだろうから定着することもなかっただろう。
 早矢仕有的説については、1935年(昭和10)刊行の「明治文化研究第5輯」に、蛯原八郎による「早矢仕有的傳」が収録されている。蛯原八郎は、早矢仕有的がハヤシライスを考案したという説に対し、「話として、余りに面白過ぎるので、私は先日、これを早矢仕有的の長男である早矢仕四郎氏尋ねたら、やはり間違いであったことを知った」と本のなかで述べている。
 林頼助説は肯定も否定もする材料が乏しいが、従業員の賄い食に当時、貴重品だったであろう牛肉を使用する料理を発案しただろうか。
 ここは、「Hash and rice」 (ハッシュンライス)が縮まって「ハイシライス」となり、これが訛って「ハヤシライス」になったと考える方が自然だと思うのだが……。そして、ハッシュドビーフらしき料理は、1885年(明治18)、すでにアメリカ人のホイットニーが著書「手軽西洋料理」でビーフハッシとして紹介している。
 この他にもユニークな話として、東京大学の教授だった金田一春彦氏は「林さんという人が毎日のようにやってきて注文するからハヤシだ」とする説や資生堂パーラーの顧問だった高石^之助氏も「ハヤシライスは横浜のハヤシさんという人が考えた」という説があると紹介している。
 さらに明治の日清戦争後に開けた大陸航路の港、門司港の栄町商店街にある大衆レストランが船に乗る急ぎの客用にケチャップベースの「早いライス」を提供した。これがハヤシライスと呼ばれたからという説もある。

長文、ありがとうございました!