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疑問No.1210 (2016.11.18)

Q. アンギラスさんからの疑問

「雑学のソムリエ」を拝見してて、イチョウの話題がありました(2016.11.07掲載)
 イチョウはご存じの通り、雄木と雌木があります。知ってるかぎりでは、キウイ、キンモクセイも雄・雌があります。
 さて、下等な動物(有名どころではカクレクマノミやアマエビ)の中には未熟な両方の生殖機能を備えていて、環境や成長段階でどちらかの機能を発現するものがいます。また、ウミガメのように孵化するときの温度で雌雄が分かれるのもいます。しかし、植物の雌雄は、種子の段階で決まっているように思います。
 植物の雌雄は、どんな経緯で分かれるのでしょうか?  花粉に違いがあるの
でしょうか? あるいは、種子の段階では決まっておらず、発芽や苗木のとき
の環境で分かれるのでしょうか?

これは「素朴」とはいいがたい疑問だと思いますが、ぜひ、私も知りたいです。詳しい方、ぜひ教えてください。


A. ぱぱさんから

 イチョウは非常に興味深い植物です、たとえば葉の形状から、さも広葉樹に分類されそうだが、実は特殊な針葉樹になる。
 齢を経た古木は、古枝の下の方から枝のような突起を「つらら」のように伸ばす。この突起は乳房になぞらえて「チチ」と呼ばれる。
 イチョウ科の植物は中生代から新生代第三期までにかけて世界的に繁栄したが、氷河期にほぼ絶滅した。
 現存するイチョウは唯一のイチョウ綱で、1属1種でイチョウ科を設ける。生きている化石としてレッドリストの絶滅危惧IB類に指定されている。
 17世紀後半に日本でオランダ人ケンペルよって発見され、たった数十年でヨーロッパ全土に広がり、さらには全世界の気候の適したところに進出していった。

 さて、前置きが長くなってしまったが、本題。
 植物の雌雄異株には、カラハナソウやホップなどのように性染色体によって決定されるものと、生育環境によって決まるものがある。
 後者の場合、雌株は種子や果実を成熟させるためにより多くの栄養分や水分を必要とし、それらが十分に得られる環境でなければ雌株として存在できないからだと考えられる。
 こうした植物は、しばし性転換がみられる。マムシグサやムサシアブミなどの植物は若いときは雄株で、成長して環境の変化に強くなると雌株になる。
 イチョウは前者と考えられており、性染色体によって雌雄を決められている。したがって、その性決定は哺乳類と同様に受精の際の性染色体によって決まる(イチョウの雄株は花粉を作らず精子を作るので、受精)。
 ところが、厄介なことにイチョウの雌雄の染色体は、通常の色素などを用いた染色法では現在のところ差異が分かっていない。
 しかし、最新の技術を駆使したDNA分析を行えば、おそらくイチョウの染色体雌雄の差異が明らかになるのではないかと推測されている。

 こうした研究の遅れの背景には動物と比較して、DNAレベルでの植物の性決定遺伝子の研究が盛んでないことがある。現在、植物の性決定遺伝子や性決定機構が明らかになっているのはカキ(柿)属の植物のみだという(主な園芸種は雌雄同株だが、野生種は雌雄異性示すものがある)。
 余談だが、雌株に雄花が少しできる“雌性間性体”のイチョウが存在することが分かっている。いわばイチョウ界のニューハーフといったところだろうか。
 こうした個体は極めて珍しく、日本では岩手県東和町と宮城県仙台市にそれぞれ1本が発見されているのみである。
 またイチョウが生育する過程で性転換したとの報告もあるが、雌雄の見分けが民間判別法によるもので、信頼性は乏しい。

大変詳しい説明を、ありがとうございました。