杉本つとむ『現代語源小辞典』(開拓社 1983年)の「鉢巻」の項に次のように出ています。
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鉢巻(はちまき)(近[代語=14世紀〜17世紀]) 「鉢」は植木鉢の鉢と同じ。何かことをしようと決意するときなどに、頭をしばる細い布。梵語のpatra(パートラ)[最初の"a"の上に"-"]の中国(シナ)訳「鉢多羅」の「鉢」。訳して器。僧侶が施しものを受けるのに用いる器である。ちょうどその器に似ていることから、頭蓋骨の呼称に転用し、さらに頭をさすようになった。
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「鉢」を「頭蓋骨の呼称に転用」するようになったのはかなり昔からのようで、『史記抄』(1477年)に「頭のはちを漆で塗りて酒杯にしたぞ」(織田信長の逸話の原典?)とあり、1604年に出版された『日葡辞書』にも次のように記載されています。
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Fachi. ハチ(鉢) 頭蓋の上の方.例,Cobeno
fachi. (頭の鉢)[最初の"o"の上に"v"]
¶ Cabutono fachi.(兜の鉢)冑の頭覆い.
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「出会い頭に、頭と頭をぶつけること」の意の「鉢合せ」が使われるようになったのは江戸時代のようです。
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鉢合して眼のヱレキテル (『器新集』 寛政10年刊の雑俳集)
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そして「思いがけず出合うこと」の意が生じました。
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これも検束自動車から降りて来た団長の高木と鉢合せした
(徳永直『太陽のない街』)
正装したサンタ同士が、街角や住宅街で鉢合せしたりする
(『読売新聞』1959年11月5日夕刊)
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★つまり、「鉢」=「頭」で、「鉢合わせ」=「出会い頭」なんですね。(星田)