--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.149 (2001.11.20)

Q. コサクノーさんからの疑問

 婚姻届と離婚届に関して質問です。
「女性は離婚後、6ヶ月経過しないと再婚できない」ということを知ったのですが、「へぇ〜」と思うと同時に、いろいろ疑問も湧いてきました。以下のようなものです。

・離婚は、結婚した日にできる?
・同じ相手となら、離婚した日に結婚できる?

上記が可能なら、

・同じ日に結婚→離婚→結婚→……を繰り返すことはできる?

 現実性は低いのですが、どうも気になって……。
 ぜひ、おしえてください! 実際に試してみたという方もお待ちしています!


A. shimomoさんから

 離婚は、結婚した日にできます。実例を挙げます。
 私の知り合いで夫婦別姓を貫いている方がいらっしゃいます。入籍して戸籍上はどちらかの姓となっているが、仕事上や普段はそれぞれの旧姓を名乗っているという夫婦ならありがちですが、そこは2人とも研究者ですので論文を発表する際に戸籍上の本名でないといけないということもあり入籍をしておりません。
 そんな2人に子どもができたときのこと。入籍していないままだと非嫡出子となってしまいます。それを回避するために夫婦が取った方法は、婚姻届と出生届と離婚届を順に同日に提出するのです。これでその子どもは非嫡出子とならず、一瞬一方の姓は変わってしまいますが夫婦別姓も維持できます。役所は戸惑いながらも事情を説明したら受理してくれたそうです。
 ちなみにこの夫婦、2人子どもがいますので、今までに2回結婚と離婚を繰り返していまして、すでにバツ2です。学会も旧姓での論文発表を認めたり、夫婦別姓を政府が認めてあげればこんな苦労もいらないわけで、女性の社会進出が目覚しい中、時代に則した法改正はあってしかるべきではないかと思いますね。
 ただ「同じ相手となら離婚した日に結婚できる」ということは、やはり民法の制約上できないのではないでしょうか。

A. ぽかさんから

 私たち夫婦は夫婦別姓を実践していますので、結婚したときには、籍は入れていませんでした。
 その後数年経って子どもが生まれたので、嫡出子扱いにしてもらうために、出生届と婚姻届と離婚届をまとめて市役所に持っていったところ、出生届と婚姻届は受理されましたが、離婚届は受理されませんでした。その時の市役所の言い訳はこうです。
「離婚届が同日に出されると、婚姻の意思がないということで婚姻届自体が無効になってしまう」
 翌日なら問題ないといわれたので、翌日に離婚届を提出し、問題もなく無事に受理されました。
 ということで、結婚した日に離婚はできないと思います。

A. うにうにさんから

 まず、前置きとして、「女性は離婚後6ヵ月間は結婚できない」という規定そのものについて。
 この規定は民法733条にあり、「再婚禁止期間」とか「待婚期間」と呼ばれています。この規定の趣旨はご承知のとおり、妊娠した際に父親を推定しやすくし、父子関係の紛争を予防するためのものです。
(女性だけにこのような規定があるのは不公平だし、これだけ医学が進んでいるのだから、もっと短く(例えば100日)するとか、なくしてもいいのではないか、などの議論もあります。)
 従って、次のような場合は適応されません。
(1) 離婚する前から妊娠していた場合(出産を待って結婚可)
(2) 前の夫との再婚
(3) 配偶者の生死が3年以上不明なので離婚判決を受けた場合(民法770条第3号の規定による離婚)
(4) 女性が高齢の場合(昭和39年に、再婚禁止期間中の67歳の女性の婚姻届を受理した実例あり)
(5) 離婚後に不妊手術をしている場合(ただし卵管結さく術はだめ)。婚姻届に手術の証明書を添えて提出。

 というわけで、

・離婚は、結婚した日にできる?

 法律上は可能です。ただ、なんのためにそのようなことをするのか尋ねられることは間違いないでしょう。
「出頭した届出人の挙動に不審な点があれば、離婚意思の存否が問題となり得ることから、挙動不審の理由の確認を要する」そうですから。(「はじめての戸籍法」日本加除出版)
 また、次項と同様、手続きに要する時間がありますので、実際問題としてはかなり困難だと思われます。

・同じ相手となら、離婚した日に結婚できる?

 上記(2)のケースですので、法的には可能です。早くも1926年(大正元年)11月25日に(2)のケースを認める内部通達が出ています。
 実際、結婚後も通称として旧姓を使用していた女性が、パスポートに記載される氏名が一般に知られている氏名と異なっていると海外に行ったときに不便であるとして、いわゆる「ペーパー離婚」をしたケースがあります。
 この場合は事情をきちんと話した上で受理されて、旧姓に戻った戸籍謄本を手にすることができ、そのままパスポートの申し込みに行ったそうです。
 ただ、パスポート申請を終えてからその日もう一度役所に戻ってきて、婚姻届を提出しようとしたら、さまざまな事務手続きがあるのでできれば明日にしてくれないか、といわれて翌日出直したそうです。
 婚姻・離婚などの届けが出されると、届けに書かれた事項が正しいか、書き方に不備がないかなどの審査をしたり、居住地の役所に住民票の訂正の通知をしたり(一般には本籍地と住民登録地は必ずしも一致しないので)、さまざまな手続きが必要になるため、同一人物について全く異なる効果を持つ2つの届け出が提出されると混乱の元になるからです。
 したがって、

・同じ日に結婚→離婚→結婚→……を繰り返すことはできる?

は事実上不可能でしょう。

A. うにうにさんから

 Shimomoさんのお知り合いの方の例で、
「論文を発表する際に戸籍上の本名でないといけない」
とありましたが、そんなことはないと思います。
 業界によって違うのかもしれませんが、常識的に考えて論文や学会発表するのに戸籍は関係ありません。
 研究発表は世界中から人が集まって行われるものです。戸籍などこだわっていては仕事になりません。日本には日本国籍を持っていない外国人研究者がたくさんいて、その方たちも日本の論文誌に発表することができていますし、逆に日本国籍の我々も海外の学会や論文誌に発表することができています。その際、戸籍を調べられたことはありません。
 入籍している女性研究者が旧姓で発表している例もまるで珍しくありませんし、[旧姓+戸籍名+名前]のようにミドルネームにする方もいます。つまり、戸籍は関係ないということです。
 ちなみに旧姓を使いたがるのは、参考文献で引用される場合、

[Suzuki,1998]

のように名字+年で紹介されるため、名字が変わってしまうとそれまで積み上げてきたキャリアが分かりにくくなってしまうからです(業界の有名人なら名前が変わったこと自体が有名になるので問題ないんですが……)。
 おそらく、お知り合いの方が戸籍を入れないのはその方のポリシーだと思いますよ。