--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.170 (2002.02.26)

Q. しゃちょうさんからの疑問

 犯人が捕まって、テレビのニュースなどで放送されるとき、手錠をかけられているところが、ぼかされているのはなぜなんでしょう?
 ニュースやワイドショーなどで放送されているのを見ると、あきらかに、
「手錠をはめられているんでしょ!」
って、誰しもわかることなのに、ぼかしが入ったりするのは、すご〜く不思議でした。
 自分なりに考えたのは、すごく幼稚なんですけど……、手錠が、全国的に放送されると、それを分析して、合鍵を作ったりする人が、出てくるので、それをふせぐため(いまいちですね)。
 物知りの先輩に尋ねてみたところ、
「視聴者が、興奮しないようにでしょ」
っていうことでした(これもいまいち……)。
 ほんとのところ、どうなんでしょうか?


A. からもくさんから

 以前、TV番組の中で同様の質問がでて、その答えもありました。
 きっかけは、あの有名なロス疑惑事件です。三浦氏が逮捕・連行されたシーンがTVで放送されたと思います。そのとき三浦氏が放送したTV局を人権侵害で訴え、TV局が負けたため、その後モザイクが入るようになったそうです。

A. 麻生有美さんから

 TVで手錠をぼかすのは、人権の問題からです。犯人を呼び捨てにせず、容疑者と言うのと同じですね。

A. うにうにさんから

 一言で言うならば「人権に配慮しているポーズをしている」ためといえるでしょう。
 逮捕された人は、適正な手続きと裁判によって有罪が確定するまでは、無罪と推定されます。これを「無罪推定の法理」といいます。だいいち、逮捕された人が全員真犯人だったら裁判はいらなくなってしまいます。
 しかし、以前のマスコミは、そのあたりが非常にルーズというか、今に比べると人権に無頓着な部分がありました。逮捕された人物(被疑者)は呼び捨てで、ほとんどの場合、被疑者イコール真犯人と決めつけた報道が横行していました。
 こういったマスコミの人権侵害が大きな批判をあびたのが1980年代前半でした。最高裁で死刑判決が確定した人が、再審で無罪になるというケースが相次ぎ、被疑者イコール真犯人とは限らないことが認識されるようになりました。
 無罪が確定してから「○○さん、よかったね」と報道しても、それまでの犯人視した報道が人々に与えた印象はなかなか払拭できないことが多いものです。
 そんな中でひときわ問題になったのが、84年春から85年秋にかけてのいわゆる「ロス疑惑」報道でした。
 会社社長のM氏がロサンゼルスに滞在中に、妻が何者かにピストルで撃たれて植物人間状態となり、帰国後亡くなったという事件ですが、これを週刊文春が「彼が妻に保険金をかけて殺害させた」と報じてから、1年半にわたってワイドショーやスポーツ紙、週刊誌などを中心に膨大な量の「保険金殺人事件」報道がなされました。
 彼が逮捕されたときは、通常なら護送車がそのまま警視庁の地下の車庫に入るのですが、このときはわざわざ、報道陣が数十メートルにわたって整列している所の手前で彼を車から降ろし、手錠姿でゆっくり歩かせてカメラマンに思う存分撮影の時間を与えたのでした(報道陣を整理するあいだ、彼を載せた護送車は時間稼ぎのためにわざわざ回り道までしている)。
 質問された方が質問文の冒頭でいみじくも「犯人が捕まって」とお書きになったように、手錠姿はいかにも「この人が凶悪な犯人である」といった印象を視聴者に植えつける効果があります。
 このときは、手錠姿で歩かされるシーンが江戸時代の市中引き回しのようだ、などと批判が(警察に対しても、それを報道したマスコミに対しても)なされました(市中引き回しは裁判が終わってから刑罰として行われるのだから、江戸時代よりもひどいともいえます)。
 また、その後の裁判の中でも
「これによつてマスコミ、ひいては国民の前にさらし者にされたものといわざるを得ず、本件警察官らによるこのような取扱いは、無罪の推定を受けるべき被疑者の人権に対する配慮を払つたものということは困難であり……本件のような連行行為は原則として違法となるものといわざるを得ない」
と認定されています(93年10月4日東京地裁判決)。
「ロス疑惑」事件そのものは、地裁で有罪、高裁で無罪と判断が分かれて、現在は最高裁で係争中ですが、それとは別にM氏から、報道各社を相手取り、報道によって人権を侵害されたとして多くの訴訟が起こされ、かなりの数が彼の勝訴に終わっています。
 つまりは、あやふやな情報だけで特定の人物を犯人と決め付けて報道してはいけないということです。
 そういったこともあり、最近のマスコミは以前よりも人権に配慮が見られるようになりました。手錠姿の連行シーンも、NHKでは放映されなくなりました。民放では社によって、全く流さないところ、ニュースでは使わないがワイドショーでは使うところ、以前のままのところと、対応が分かれているようです。
 ただ、私見を述べると、手錠をぼかす方法は非常に姑息な手段だと思います。本当に人権を考えているのであれば、そもそも最初から放映しないとか、編集の際にズームアップして上半身だけ映すなど別の方法が取れるはずだからです。
 結局、手錠のボカシは、テレビ局の担当者が
「絵になる(よくこういう言い方をします)場面が欲しい」
と考え、ホンネの部分では「視聴率が大事、人権は二の次」という意識で番組を制作していることの現れではないでしょうか。

A. ポポさんから

 何かのテレビで見ました。
 何年か前に「ロス疑惑」ってありましたよね。三浦和義さんが容疑をかけられた事件。彼が逮捕されて、警察官に連行されるとき、警察署の入り口前にはたくさんの報道陣がいました。たくさんのフラッシュがたかれる中を、まるで見世物のように歩いていきました。もちるん手錠は丸見えで。
 しかし、後の裁判で無罪の判決が出されています(現在は、最高裁で扱われています)。つまり、彼は犯人ではないかもしれないのに、最初から犯人のような扱いを受けたのです。
 この事件をきっかけに、容疑者の人権を考慮して、手錠にはモザイクとかをするようになったようです。
 こんな感じだったと思います。

A. むらちふさんから

 手錠をかけている様子をなぜ隠すかは、人権上の配慮というのがその理由です。昔は社会の耳目を集めたような事件の被疑者が捕まった場合、報道陣の前をさらすように連行することがあったのですが、現在では積極的に隠すようになりました。被拘束者に関する国際基準などのに則しての措置だと思います。