--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.223 (2002.10.24)

Q. Ucaさんからの疑問

 世界にはいろいろな国があります。日本やイギリスには、首相がいます。アメリカには、大統領が居ます。
 ところが、世界には一国に首相と大統領とが存在する国があります。たとえばドイツ、韓国などです。権限等の違いはどうなっているのでしょうか?
 歴史的な経緯もあるかと思うのですが、わかりやすく教えてください。

そうなんですよ。ここは、きちんと理解したいですね。(星田)


A. しっぽさんから

 ドイツでの大統領というのは、他の大統領制国家と異なり、行政の責任者ではなく形式的・儀礼的存在となっています。国家元首ではありながら、連邦が危機に直面した際の議会解散権等を除いて、政治的権限はもっていません。
 これは、ワイマール共和国において大統領の権限がとても強く、自由に組閣できた結果、ナチスの台頭を助けてしまったことの反省として、戦後に大統領の権限を大幅に縮小したことから来ています。
 韓国の方はわかりません。

A. 浜猫さんから

 これはその国のシステムによります。
 まず、議会制民主主義を採用する国では、行政権の所在は大きく分けて二種類のシステムに基づいています。一つは議院内閣制。これはイギリス、日本、ドイツ、イスラエルなどが採用しています。もう一つは大統領制。これはアメリカ、韓国、フランスなどがあります。
 ここで重要なのが、「大統領制を採る国=大統領が存在する国」ではないということです。簡単に言えば、直接選挙で選ばれた大統領が実際の行政権を握る国が『大統領制』であり、議会に選出された首相(もしくはそれに準ずる職責の人)が実際の行政権を掌握するのが『議院内閣制』です。そして、議院内閣制の国の場合、大統領は『権威』を司ることになります。
 たとえば、議院内閣制を採用するドイツの大統領は連邦上院の議員から互選により任期5年で選出されますが、儀礼上の職責のみを持ちます。そういった意味では、日本の天皇やイギリスのエリザベス女王と同じ職務に就いています。
 日本の場合、天皇は日本古来から続く朝廷行事を司ります。また、実際の権力を握る首相の助言と承認に基づき、儀礼上の国家元首として(憲法上明記されてはいませんが、世界最古の王朝の当主として、外交上は国家元首の処遇を受けています)、首相の任命、その他の首相が任命した閣僚の承認、上級公務員や外交官の認証、叙勲、法律、条約の公布などの行為を行い、国家としての「権威」を司っています。また、余談ですが、日本に着任、離任する大使は必ず皇居に参内し、天皇の謁見を受けます。この様に、議院内閣制の基では、「権威」を司る者は実際の行為には責任を負わず、「権力」を司る者が責任を取ります。このようにして、権威が傷つくのを防いでいます。
 大統領制(アメリカ、ロシア、韓国などが採用)の場合、大統領は行政権を掌握し、立法権、司法権とは完全に独立した存在になります。
 議院内閣制のもとでは、議会によって行政権を主宰する首相が選出されるため、立法権と行政権がある程度関連を持ちますが、大統領制では完全に独立します。また、議院内閣制も含め、ほとんどの国では三権分立が基本ですが、国によって、その三権の抑制関係は異なります。アメリカを例に取れば、議会下院には、大統領の弾劾を発議する権限があり、その正当性を審議するのは上院の役割になります。さらに、アメリカの場合、大統領には議会への議案提案権はなく、「教書」という形で、議案を提出するよう議員に提案するというシステムになります。また、閣僚の任命権は大統領が握りますが、韓国、ロシアなどでは議会の承認が必要です。アメリカの閣僚が議会の承認を必要とするかは
解りませんが、政権が変わると行政府の高級官僚が総入れ替えされます。このようにして、実務の上でも、大統領が完全に行政権を掌握するのです。
 フランスの場合は、大統領制と議院内閣制の中間の制度を採用しています。つまり、大統領は直接選挙で選出し、首相は議会が指名します。大統領制では、議会が首相人事に関与する場合は「大統領が指名または任命した首相の承認」という権能を追うことが一般的であることを考えると、首相人事では議会の関与の度合いが大きくなっています。どちらかというと、行政権では首相の方が権能が強いようですが、国防、外交などでは大統領がリーダーシップを採ることが多いような印象を受けます。このとき、首相と大統領の所属政党が保守と革新に分かれた場合、保革共住政権というようです。
 ところで、フランスの首脳は大統領であり、首相ではありません。議院内閣制の国の場合、天皇、国王、大統領と言った儀礼上の国家元首が存在してもその国の首脳は首相であり、儀礼上の国家元首ではありません。こういった意味では、フランスは議院内閣制の要素を取り入れた大統領制、と言うことができるでしょう。
 と、こんな感じだと思います。如何でしょうか。こういうのを調べる載って面白いんですよね(笑)

A. ZACさんから

 共和制(君主制と対置される制度)を採用する国には、国家元首として大統領が存在します(例外有り)。国家元首とは、国家を国外に向かって代表しうる地位にある国家機関(人物)を指します。
 米国は(ギリシア等の大昔を除くと)世界初の共和制国家であり、皇帝や国王のいない共和制を採用し、元首として大統領を国民の選挙により選んだのです。
 国王のいない国、たとえばドイツ、フランス、インドなどには大統領がおり、大統領が国家元首なのです。
 逆に言えば、国王がいる国(国王が元首となっている国)には大統領はいないことになります。イギリスはもちろん、英国王を元首としているオーストラリアやカナダといった国々にも大統領はいません。
 ところで、大統領には、米国大統領やフランス大統領のように強大な権限を有しているものと、ドイツ、インドのように名誉職のものと二通りありますが、これは、それぞれの国がどのよう統治機構を持とうとしているか、法的にいえば、憲法でどのように定められているかの違いです。
 米国の大統領は国家元首であるとともに行政府の長でもあるので強い権限を持っています。一方、ドイツの大統領は国を代表する人物であるが行政府(や立法府)の長ではないので政治的な実権なないのです。ドイツのような国の行政府の長には別に首相がいるのが普通です。ですから、ドイツやインドは、大統領より首相の方の名前を聞く機会が多いわけです。
 もちろん、(国王がいたり、それ以外の理由で)大統領がいない国の行政府の長は首相です。フランスは大統領制を採用しながら、首相にも強い権限があり「ハイブリッド型」の統治機構を持っているやや特殊な例といえるでしょう。 日本の場合は、天皇が元首であると憲法で定まっていないので、天皇を元首であると断言できませんが、天皇と首相で国家元首の役割を分担しているのが実態ではないかと思われます。

ルネぞうさんから下記のサイトをご紹介いただきました。
  
http://www.asahi.com/edu/newsland/0530a.html

あんじさん、半蔵門さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。