Q. 俊兵衛さんからの疑問
中国で、外国人の名前等を最初に書くとき、それに当てる漢字はどのように決めるのでしょうか? 見にくいと思うのですが……。
たとえば、ヨルダンでテロがあったとき、アンマン(これは首都だから以前から決めていたとして)被害者のローレンス・フォリー氏を、新聞社が勝手に漢字を当てると、各社によって違った字を当てると混乱するのではないかと心配するわけです。
★中国だけの問題ではありませんね。日本でも、レーガン大統領を「リーガン大統領」と一時的に表記していました。
以前のNo.157の疑問が、これに関連してますね。(星田)
A. ひとひらの雪さんから
昔、同じ疑問を持ちました。その際に職場の同僚だった中国の人に聞いたことがあるので、以下に書いておきます。
よくある名前は英中辞書に訳があるそうですが、辞書にない場合は適当に当て字を決めているのが実態だそうです。最初に新聞等で使われた訳がそのまま広がってしまうのもよくあることだとか。
ただ、よくある名前に使われている漢字は、ほかの外国人の名前にもよく使われる傾向があるそうです。たとえば、フランスの「アンリ」なんかの場合は、「安利」であって「案吏」とはしません。前者が「アン」と「リ」でよく使う漢字ってことでしょうね。
A. ルカさんから
今回の中国では外人(主として西洋人)の名前をどうするかという疑問ですが、確か以前にNHKの『日本人の質問』という番組の中で「新華社が当て字を決める」というのがあったと思います。
プラスアルファの薀蓄がなくて申し訳ないですが……。
A. うにうにさんから
以前、NHKテレビの『日本人の質問』でやっていたところによると、新たに登場した固有名詞の表記は新華社通信が決めているそうです。
ただ、会社名や商品名は現地法人などが決めることも多いでしょう。それに比べると、人名や地名は、単純に音をあてはめる「音訳」のケースが多いので、比較的楽です。
さて、この「音訳」のしかたですが、中華人民共和国の民政部国家測絵局(測量と地図製作を行うセクション。日本でいうと国土地理院)が1997年1月に定めた「外語地名漢字訳写規則」というルールがあります。この規則の制定にあたっては、新華社なども加わって地名委員会という組織を作って審議したそうです。
この規則(といっても、かなりのページ数がある本です)には、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語について、発音記号やつづり字とそれに対応する漢字が表になっており、詳細なルールや、主な人名・地名とそれの漢字表記の表もついています。
ブッシュ→
[bu]布、 [∫]什
といった要領です。他に、
ビンラディン→本拉登 また は本拉丹
タリバン→塔利班
アフガン→阿富汗
など。今後はなるべくこれに従っていくことになるようです(すくなくとも大陸では)。
ただ、従来からあてはめられている文字があって、既に定着しているような場合は、対照表と一致しなくても、これまでの慣習を重視します。
人名・地名以外の外来語の場合は、音訳、意訳、さらには両者の混合といろいろなパターンがあり、いろいろ混在して使われているうちに、だんだんに絞られていくこともあるようです。
インターネットもさまざまな訳し方をされていましたが、最近は「因特網」(インターは音訳、ネットは意訳)、あるいは全部意訳して「互聯網」あたりが多いようです。
なお、以上はマスメディア上での公式表記の場合です。一般の人が、日常会話などで海外の地名や人名を人から聞いて、それを書き表すような場合は、音が近い漢字を適当にあてはめるか、英語などを知っていればアルファベット表記することが多いようです。
ただ、どんな漢字でもよいわけではなく、昔から何となくあて字によく使われてきた漢字というのがあって、そういった文字があてられることが多いようです。いわば、中国語版カタカナというというところでしょうか。「外語地名漢字訳写規則」は、それを標準化させたものといえましょう。
(以前よその疑問系サイトで回答したことがありますので、それを元に加筆修正して回答とします。)
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