--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.239 (2002.12.26)

Q. れいかさんからの疑問

 歌で、2コーラスぐらい終わってから、今まで出てこなかったメロディーが1回だけはいることありますよね。
 英語では、この部分を「bridge(ブリッジ)」というんですが、日本語では何ていうのですか?

はいはい、今、ミスチルの「Tomorrow never knows」を聴いているのですが、この曲もブリッジが入りますね。
 ブリッジに関する他の蘊蓄も一緒にお寄せください。


A. うにうにさんから

「ブリッジに関する他の蘊蓄も」
ということだったので、つい調子に乗って書いていたら、だいぶ長くなってしまいました。ブリッジに関するというより、楽曲の形式に関する話になってしまいました。
 まずは、疑問の核心ですが、「Cメロ」ということが多いですね。
 もっとも、これが純粋な「日本語」かどうかは疑問の余地がありますが、すくなくとも日本では音楽関係者の間で、「サビ」などの語と同様に使われているという意味で、とりあえず日本語扱いにしました。もし質問された方が「横文字や外来語はダメ」というのであれば,残念ながら私は回答を持ち合わせません。
 では、楽曲の代表的な形式について、すこし説明しておきましょう。

 以下、ひとまとまりのフレーズ(クラシックで言うところの楽節)を、A、B、Cなどで表します。また、具体例として私がカラオケなどでよく歌うことの多い曲を使いました。

 まず、一部形式のもの。A−A−A…とでも表せるでしょうか。
 たとえば、『赤とんぼ』(夕焼け小焼けの…)は4番までありますが、これは一つのverseが4回繰り返されているということができます。このような場合、「1番」「2番」などのことをverse 1, verse 2 などといいます。
 次に、二部形式のもの。1番が大きく前半と後半に分かれるものです。
 まず、単純にA−Bという形式の場合。Aをverse(日本語ではAメロ)、Bをchorus(日本語ではサビ)といいます。実際に合唱するわけではなくても、chorusです。メロはメロディーの略だと思われます。
 また、verse 1(あるいはthe first verse)というと、1番のAの部分だけを指すこともありますが、AとBを合わせた「1番」全体のことを指す場合もあります。
 たとえば、坂本九さん(など)の『明日があるさ』の場合、A−B−Bとサビが2回繰り返されています。2度目のBでは、歌詞も毎回同じですし、実際に合唱が入っており、chorusという名にふさわしいものになっています。
 一方、同じ二部形式でも、さらに細かくA−A−B−A(または、A−A'−B−A'など)と分けられるものもあります(A−Aが前半、B−Aが後半になります)。
 この場合、Aをverse(日本語ではAメロ)、Bをbridge(日本語ではこれもサビという場合がある)といいます。
 また、この形式でも「verse 1」というと、Aだけを指す場合と、1番全体(つまりA−A−B−Aの全体)を指す場合があります。Bridgeは「橋」ですので、次の楽節につながって行く橋渡しの感じです。
 再び九ちゃんの例を借りて、『上を向いて歩こう』をみてみましょう。
 イントロの後、「上を向いて…」がverseです。歌詞を変えてもう1回繰り返します。
「幸せは…」がbridgeです。もし、bridgeが終わったところで止めてみると、なんだか落ち着かず、次に行きたくなります。
 コード進行の用語を使って説明すると、ドミナント(5度の和音)で終わっている半終止なので、つぎにトニック(1度)が欲しくなるのです。そしてもう1回、verseが歌われて、1番が終わります。
 この後に、またverseの旋律が流れますが、歌詞はなく、口笛で演奏されます。このようにverseと同じ旋律(あるいは旋律は違っても同じコード進行)の一節を、インストルメンタルだけで演奏する部分を、soloといいます。「上を向いて」の場合は、実際に一人の演奏者がメロディーを演奏しますが、そうでなくても、インストルメンタルになる場合はsoloということが多いようです。
 次に三部形式のもの。A−B−Cでひとまとまりになります。最近はこの形式が増えてきました。
 この形式では、

  A=verse(日本語ではAメロ)
  B=bridge(Bメロ)
  C=chorus(サビ)

となります。
 実例は、松田聖子さんの「青い珊瑚礁」。
 6小節のイントロの後、「あゝ」で始まるのが、サビです(このように、いきなりサビから始まるのもあります)。サビで盛り上がった後、ちょっと雰囲気が落ち着いたところで「あなたと〜」と入ってくるのがAメロ。2回繰り返されます。「素肌に〜」からBメロ。すこし気分が変わります。最後の部分はサビにつながるように盛り上がります。 そしてサビ。
 全体の構成は、

 イントロ→サビ→1番(A→B→サビ)→間奏
 →2番(A→B→サビ)→エンディング

という、比較的単純な造りになっています。
 なお、この曲の間奏は、AメロやBメロの再来ではなく、純粋な間奏として新たに登場するものです。このような間奏はinterludeと呼ばれたりします。
 さて、ようやくご質問のケースにたどり着きました。
「今まで出てこなかったメロディー」(それも間奏ではなく、きちんと歌われる)は、日本では「Cメロ」と呼ばれます。特徴としては、

・2番のあとに出てくることが多い
・そのあとは、新たな間奏を経て、あるいは経ないで、
 サビ(またはBメロ→サビ)の再来につながることが多い
・Cメロが出たあとでAメロが再来したり、またCメロ自体が再来
 することは普通はない

という感じでしょうか。
 英語では、ご質問のようにbridgeという場合もあります。ただし、これは二部形式の「verse−chorus」でワンコーラス(英語ではone verseか?)完結しているような場合でないと使えないですね。(なお、その場合、bridgeを日本ではBメロというか、それともやっぱりCメロというかは定かではありません。どなたか詳しい方のご教示を待ちたいと思います)
 三部形式、つまりverse−bridge−chorusでワンコーラスになっている場合でも使える用語としては、release(またはrelief)ということが多いようです。サビで盛り上がったあと、すこし緊張が解けて、音量的にもリズム的にもちょっと一息、的な感じが出るところからついた呼び名でしょう。
 また、middle 8(ミドル・エイト)という言い方もあります。曲の途中に新たに挿入される8小節、という意味です。実際には8小節ではない場合もありますが、やっぱりmiddle 8といいます。
 Cメロのある曲の例としては、広瀬香美さんの「ロマンスの神様」。
 イントロの後、「勇気と愛が〜」がAメロ。「週休2日〜」で繰り返します。終わりの部分が微妙に違うので、A→A′とも書けます。(1回めの終りは次に続く感じのコード、つまりクラシックでいうところの半終止。2回めは完全終止。)
「目立つには〜」で調が変わります。ここがBメロ。
「Boy meets girl〜」からがサビですね。
 以上が1番で、次の2番でも同じパターンの繰り返しです。ただしサビだけ繰り返されます。
 そのあと、「よく当たる星占いに〜」という新しいメロディーが登場しますが、これがCメロ。そのあと、ギターソロの間奏を経てサビ、エンディングとなります。まとめると、

  イントロ→1番(A→A′→B→サビ)→イントロ同様の間奏→
  2番(A→A′→B→サビ2回)→C→別の間奏→サビ2回→エンディング

 ちなみに、エンディングのことをアウトロということもあります。和製英語かと思ったらそうではなく、あちらでも使っているようです(intro、outroとも)。Introはもちろん、introductionの略語。Outroは、inをひっくり返してoutというシャレですね。
 Outroは他に、テレビやラジオの番組のエンディングや、コマーシャルの決めゼリフなども指すようです。
 

Comment  ボラーチョさんから

 音楽に詳しくないので、質問自体の意味がわからず、
「ブリッジって何のこっちゃ?」
という感じだったのですが、うにうにさんの非常に丁寧な解説でよく理解できました。
 長かったですが、例に出された曲も空でメロディを思い出せるよく知った曲ばかりでわかりやすかったです。

A. 名無しさんから

 僕の認識では、「最後に一回だけ入る部分」は「Cメロ」です。
『Tomorrow never knows』の場合は、

「とどまる事を〜」「人は悲しい〜」の部分をAメロ
「無邪気に〜」「今より前に〜」の部分をBメロ
「償うことさえ〜」「果てしない〜」の部分をサビ

と一般的には呼んでいる気がします。
 そして、「優しさだけじゃ〜」の部分、指摘の部分ですが、これはA、Bの次なので「Cメロ」と呼んでいます。
 最近の曲だと、この

  Aメロ→Bメロ→サビ→(繰り返し)→Cメロ→エンディング

という流れが多いです。ですから、「Cメロ」と言ってもよいのかと思います。
 ただ、「bridge」はサビに至る前の繋ぎの部分、すなわちBメロを指したりもします。また、サビのことをCメロと呼んだり、日本でも混乱しているようです。あまり確定的なことはいえないと思います。

A. ブラックバードさんから

 仕事上の経験からお話すると、日本のレコーディングの現場では、「大サビ(おおさび)」でだいたい通じます。
 海外では楽曲の構成を verse, chorus で大きくわけて、プラス bridge で考えることが多いですね。middle eight とも言います。
 日本のポップスの場合、いわゆる

  Aメロ、Bメロ、サビ、オオサビ

と4セクションで考えることが多く、外国人のエンジニアやプレイヤーに説明するときは、現場処理でその場で言い方を決めていたような記憶があります。B-verse とか。譜面上にもAとかBとか目印をつけますが、4セクションで考える曲のときには ブリッジは、「Dセクション(=Dメロ)」と呼ばれます。
 めったにないですけど、複雑な曲のときには Eメロなんてものが出てくるときもあります。譜面があれば、このアルファベットで英語圏のスタッフとも誤解なくやりとりできました。