--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.248 (2003.01.30)

Q. bagusさんからの疑問

 ローマ字の「らりるれろ」はなぜ、「ra、ri、ru、re、ro」で表記するのでしょうか?
 現在のところもっともインターナショナルである英語では、周知の通り「r」の発音は舌を上歯茎につけませんよね。
 しかし私たちが通常「らりるれろ」の発音をするときには、舌を上歯茎のあたりにつけて発音するはずです。これはむしろ 「la、li、lu、le、lo」に近く、表記もそうあるべきだと思います。
 また、「r」の発音は、たとえば、英語、ドイツ語、フランス語、インドネシア語、中国語(ピンインと呼ばれるアルファベット表記)で全て大きく異なります。
 その点、「l 」であれば、それぞれの言語で (厳密には違いがあるのでしょうが)、それほど発音が異なるようには聞こえません。そういった意味でも、「la、li、lu、le、lo」を採択する方が理にかなっていると思います。
 なぜ、よりによって各言語で音の異なる、しかも日本人の最も不得意とする「r」を選んだのか、声を大にしてヘボンさんに激しく抗議したい!
 ちなみに、私の名前には真ん中に「り」が入ります。海外駐在なので外国人から名前を呼ばれる機会が多いのですが、その度に「違う、違うんだぁ!」と心の中で叫んでいます。


A. 岡寛さんから

 これは、英語のヒアリングを鍛えれば納得できると思います。
 英語の発音の「L」と「R」が聞き分けられるようになると、口蓋前部(歯茎の裏)に舌を伸ばし押し付けて発音する「L」と、舌を奥の方に曲げ口蓋に接触させないで発音する「R」の違いは必然的に解ってきます。
 さて、そのような耳で、舌を口蓋上部に接触させて発音する日本語の「らりるれろ」を聞くと、ほとんどの日本人の発音は、舌を後方に巻いた状態からくるっと前方に回して母音につなげる「Ra-Ri-Ru-Re-Ro」としか聞こえません。
 もちろん中には例外もあって、舌が長い人や舌を器用に動かせない人は、舌を口蓋上部につける事ができず、「La-Li-Lu-Le-Lo」と発音してしまうようです。あくまでも私個人の感想ですが、そう発音する人達の日本語は聞き取りづらいです。
 それと、会話と違って、歌の中では日本人でも「L」の発音をする人が多いです。中には1曲の中で「L」「R」の両方の発音をする人がいます。
 以上に述べたのはあくまでも英語と比較した場合の日本語の「らりるれろ」の場合で、他の言語との比較では同じ結果になるかどうかは解りません。しかし、ドイツ語やイタリア語との比較でも同様の結果になるのではないでしょうか。とにかく、発音を聞き分けられるようになることが肝腎だと思います。

A. うにうにさんから

 ヘボン式は、宣教師のヘボンさんが考え出したわけではありません。当時日本にあったローマ字団体の一つが使っていた方式を、彼が『和英語林集成』という和英辞典を作る際に採用したのです。
 もし天国に行って抗議するとしたら、その矛先はヘボンさんに向けないほうがよいのではないでしょうか。
 とはいえ、彼が採用したからには、おそらく日本語のラ行の音を「l」ではなく「r」で表すことについて、何か自然に感じられるものがあったのではないでしょうか。
 当時の文献を見たわけではないので完全な推測ですが、英語の[l]音は、舌を上あごに押しつけ、そのの両側を息が通り抜ける音(側音)なのに対して、日本語のラ行の子音(発音記号では[r]の縦棒を省いた、ゼンマイの芽吹きのような記号で表します)は、舌が上あごをたたいて出す「たたき音」でかなり響きが違います。おそらく、/ra/と[ラ]の違いよりも、[ラ]と[la]の違いのほうが大きいと感じたのでしょう。(ちなみに、/r/とは、英語の話者がrの音だと思っている音全般、の意味です。)
 また、スペイン語でrと書かれる綴りの発音は日本語のラ行の音とほぼ同じですし、rrの発音はいわゆる巻き舌の[r]で、江戸っ子の「べらんめえ!!」なんていうときの音です。
 ヘボンさんがアメリカのどこの出身かはわかりませんが、地域によってはスペイン語を話す人が多数住んでいますし、こういう音を耳にする機会が多かったのかもしれません。
 さらに、巻き舌のrは、イタリア語にもありますし、フランス語やドイツ語でも、舞台発音や方言などでは使われます。もしかしたら、ヘボンさんは江戸っ子の威勢のいいしゃべり方を聞いて、
「舌を上あごにしっかり押しつける[l]よりも、[r]のほうが近い」
と思ったのかもしれません。

A. 名無しさんから

 なぜ日本語のラ行の子音を[r]で示すか、という質問ですが、実は[r]という文字の発音自体が曖昧なものなのです。
 [l]は印欧語族の中でも、明確に「舌を上の歯茎の裏にあわせて発音する」ということが決まっているのに対して、[r]はかなり曖昧です。
 英語ではご存知のとおりの発音ですし、フランス語では日本人にとっては[h]の発音に聞こえます。また、イタリア語では巻き舌のように発音しますし、ドイツ語では、通常では英語に近いですが、歌を歌う場合のみ巻き舌にします。
 さらにいうと、ドヴォルザークというチェコの作曲家がいますが、ドヴォルザークのつづりは[DVORAK]です。あまりにも巻き舌がすごくて、日本人が聞くと「ドヴォルザーク(ドヴォルジャーク)」と聞こえます。
 ということで、[r]の発音は、[l]の発音を曖昧にした幅広い発音を表しているのです。そんなこともあってヘボンさん(今風にかくとヘップバーンさんですが)はラ行に[r]を使ったのではないかなと思います。