Q. やまおさんからの疑問
なぜ、船の名前には「丸」が付いているのでしょうか?
なぜ、船の名前には「丸」が付いているのでしょうか? もともとの船の形が、円盤のように丸かったとも思えません。
「おまる」と関係があるのでしょうか。
★船舶だけではありませんね。刀、鎧、笛や箏などの楽器にも「――丸」って名前が付けられます。共通点は、いかに?
意外と奥が深い疑問かも知れません。(星田)
A. おっくんさんから
テレビ番組『世界・ふしぎ発見!』の問題で、
「昔は子どもを、鬼やもののけから守るために、人間の嫌がる物を幼名の最後に付けて、鬼やもののけを嫌がらせようとしました。さて、この言葉は何?」
というのがありました。
答えは「丸」。丸とは「お丸」。つまり便器のこと(「牛若丸」とか)。ですから、船にも「丸」と付くのは、海難事故(海の魔物)から、船を守るためだったのではないでしょうか。
A. 岐泊さんから
「〜丸」と名づけるのは魔除けのためです。
「マル」は平安時代頃、「糞」を意味した言葉でした。現在も子ども用簡易便器を「おまる」と呼ぶのは、宮中の女房言葉として後世に残っていた便器(※1)の呼称が一般家庭にも伝わったものだそうです。
「〜丸」とは、もともとは、わざと魔物も忌避してくれそうな名をつけることで大事な男の子を守ろうとの願いから名付けられた幼名(※2)でした。こういった魔除けを願う命名の風習は多くの民族で見られます。
現代では慣習として、そう名付けられているようですが、船をはじめとする様々の大切な道具に「〜丸」と名付けるのも、同様な魔除けの効果を願って、というのが本来のはじまりでしょう。
※1 平安時代の便器(貴族用)
蓋付きの箱で漆塗り(防水仕様)が一般的だったようです。使用後はすぐに役目の人が中を廃棄しに行ってくれることになっていたらしい。自室で使用するとは限らず、専用の室があったりもしたようです。
蛇足ですが、こんな面倒な貴族生活の一方で、川の上に設けた天然水洗な庶民的「厠(かわや)」も当時からありました。
※2 幼名(ようみょう)
無事成人して改名するまでの呼び名。
だから本来は成人が「〜丸」という名であることはないのですが、昔は主人に仕える僕(しもべ)は半人前というか、こども並みの扱いというわけか、「ナントカ丸」という立派な大人の忍者とか……がいたりはします。
A. 造船マンさんから
日本船主協会によりますと、「丸」がついた船は、千年ぐらい昔の十世紀ごろからあったそうです。
丸にはいくつかの意味があります。最も有名なのが「麿まろ」から転化したという説です。
「麿」は自分を言うときに使う言葉ですが、愛犬や刀などにも使うようになりました。この麿が、丸になって、船の名前についたというのです。
また、お城も「本丸」「一の丸」と言いますが、城を呼ぶときと同じように、船を城のように見立て、丸がついたという説もあります。
明治時代には「船の名前には最後に、丸の字をつけるように」という決まりもありました。
A. ルネぞうさんから
法律で決まっているからです
「船舶法取扱い手続き」で、
「船舶ノ名称ニハ成ルベク其ノ末尾ニ丸ノ字ヲ附セシムベシ」
となっています。「成ルベク」なので付けたくなければ付けなくても良いのですが、船の名前ぐらいでお上に逆らっても仕方ないので、とにもかくにも「丸」がついていました。
では、なぜ船名に「丸」を使うかというと、その起源にはいろいろな説がありますが、江戸時代以来いくつもの説が出ているわりに、決定的な説が今のところないというのが現状です。代表的な説をあげてみましょう。
・愛称説
昔の人が、愛用する笛や刀など大事なものに「丸」をつけたのと同じように、船にも愛称として「丸」をつけたというもの。男の子の名前に「日吉丸」「牛若丸」と「丸」をつけている。
・ 人格説
遣唐使の時代、航海には大変な苦労があったため、無事帰港したときに労を讃えて船そのものに官位を授けたというもの。
・問丸説
古くは問屋のことを「問丸」と呼んでいたが、その関係から、問丸の有する船に「丸」をつけたというもの。
・城郭説
城の本丸、二の丸といった呼称に由来しているというもの。艦隊を組むとき、同様に隊の中の位置により、船のことを「本丸」「二の丸」等と呼んだとされる。
・外来語説
朝鮮で役所のことを意味する「まろ」が、日本で「まる」に転かして建造物一般を指すようになり、船、問丸、城などを全て「まる」と呼んだというもの。
他にも数説ありますが、どれが説得力がありますか?
愛称についての「丸」の由来ですが、昔の貴族(公家)が使う「麿」がなまったものらしいです。一人称のほかに名前にもつけられてました。たとえば人麿や仲麿の麿です。
★にゃんこさん、ひとひらの雪さん、おっくんさん、トマトカレーさん、zaitoさん、
土佐さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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