--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.264 (2003.04.03)

Q. 鈴木さつきさんからの疑問

  幼少期に植え付けられた知識、その当時は何の疑問も抱かなかった知識というものがあります。
 おそらく小学生のころ、「大分」は「おおいた」と読む、そのように教えられたはずです。以来、何ら疑問を持つことなく今日に至りました。
 九州に出張したおり、ボンヤリとテレビの天気予報を観ていて、 
「大分」という文字を見ました。そこでふと、疑問が湧いたのです。「分」をなぜ「いた」と読むのか?
 大分県庁や大分市役所にメールで問合せました。大分の教育委員会にも問合せました。大分県の人も知らないのです。しかし、随分むかしから「おおいた」といわれている(奈良時代のなんとかいう書物に「おおいた」という地名がでている)、そういうご返事でした。
 大分県では国語の読み書きの試験のとき、「分」という文字の振り仮名に「いた」と書いたら正解にするのかと、教育委員会にも尋ねました。もちろん、誤りとするそうです。
 東京の国語研究所にも問合せました。「大分」は「おおきた」と読んでいた。それがなまって「おおいた」になった、そういうご返事でした。
 まだ、すっきりしません。大分県の人たち、疑問に思わないのかしら?


A. げきしぶさんから

 確かに「分」という文字は、どうあがいてみても「いた」とは読まない。そんなわけで、大分県庁に問い合わせたことがあります。
「はい、大分県庁でございます」
 県庁のわりに、電話に出たお姉さんは公務員っぽくない話し方だ。
「あのお、『大分』って『大きく分ける』って書いて『おおいた』……」
「はい、担当に変わります」
 今度はいかにも公務員率100%くらいのおじさんの声だ。
「あのお、『大分』って『大きく分ける』って書いて『大分』ですよね? なんでですか?」
「はい、それはですね……」
 昔、大分は「大刻」と書いて「オオキダ」と読んだらしい。「おおいた」は「おおきだ」という地名だったそうだ。それがいつの間にやら「おおいた」と呼ばれるようになり、名前も、刻んで分けるという同じ意味だからということで「大分」となったらしい。つまり、大分とは当て字に過ぎないのだ。
 それがいつごろからかは不明で、その経緯さえもわかっていない。また、この説も一般的な説というだけで、本当のところは大分県民ですらわからないそうだ。

Y−NAKさんから、げきしぶさんのサイトをご紹介いただきました。

A. 火炎童子さんから

「大分」をオオイタと読むのは「大」をオオ「分」をイタと読むからではないのです。二字が、この順序で、揃っているときにかぎり、二字をひとかたまりとして「オオイタ」と読むのです。こういう読みかたを熟字訓といいます。他にも「七夕」を「タナバタ」、「伊達」を「ダテ」、「五月」を「サツキ」と読むなどの例があります。
 さて「大分」の古い文献に『豊後の国風土記』(奈良時代)があります。最近出た注釈書、小学館の新編日本古典文学全集『風土記』が参考になります。
 それによると、景行天皇がここの大分郡に来て、
「なんと広く大きいものだ、この郡は。碩田の国と名づけるがよい」
と言われたという伝承が書かれています。そして『風土記』の本文に「碩田をば大分という」と注がついています。「碩」は古代渡来の字書に「碩は大なり」とあって、大きいという意味です。それでは大きい田なんだなと早合点してはいけません。キダという古語があって、分割された土地の一つ一つをキダと言いました。農民に分け与えるために分割された土地がそれぞれ大きかったから「大分」つまりオオキダなのでした。平安・鎌倉などの時代を経て、オオキダの言葉がいつかオオイタに変わりましたが、文字はそのままに変わらずに伝わりました。
 景行天皇の言葉は伝承ですが、文献の文字や読みは歴史的事実です。現地の人にさえ起源がわからなくなったほど、古い歴史を持った土地なのですね。

A. トマトカレーさんから

 大分は、もとは「碩田(おおきた)」で、「豊後風土記」によると景行天皇が熊襲征伐の際この地方が肥沃で広々しているのでこう名付けたそうです。「碩」(音読み:セキ、訓読み:おおきい)には、「大きい、盛んな」という意味があるそうです。
 苗字にも言えることですが、

・発音しやすいように音便化した(埼玉も昔は「さきたま」だった)。
・学がない人でも分かる字や、縁起の良い字を当てた(富山はもと「外山」、秋田の古名は「齶田(あぎた)」)。

 上記のことから、「おおきた」が訛っておおいたになり、「碩田」を「大分」に変えたのだと思われます。それではなぜ大分の字を当てたかというと、

・大分川、大野川が大きく分かれるところ
・豊の国を大きく分ける(豊前と豊後)ところ

などの説があります。
 もう一つ、「大分」の「分」に当てるふりがなの件です。
 結局は当て字なので、「大分」二文字ワンセットで「おおいた」と読むルールです。「分」一文字の場合とは別問題だと考えたほうがよいと思います。「百合」「河豚」が二文字そろった場合のみ「ゆり」「ふぐ」と読むのと同様です。
「地名苗字読み解き辞典」丹羽基二著 柏書房
「地名のひみつ」国松俊英著 岩崎書店
 以上二冊を参考にしました。