Q. いぶさんからの疑問
初めてメールします。
ちょっと疑問なんですが、雑誌の文章とかメールとかで「(笑)」ってあるじゃないですか? あれ、いつ頃から使われだしたんでしょうか?
今では普通にみんな使ってるけど……。
あと、これって日本語だけの文章技術なんでしょうか? たとえば英語とかにも、似たような表現はあるのでしょうか?
★「技術」ってほどのものではないと思いますが、英語等でもあるのかな?
(星田)
A. Mellowさんから
英語での表現については、「lol(laughing
out loud)」が(笑)に該当すると思います。
ちなみに、最近のネットゲーム等では(笑)をさらに簡略化して(wとかwとか使われてます。それに、英語版顔文字だってありますよ。:)
A. うにうにさんから
(笑い)などの書き方は、座談会の記録などでは相当昔から使われていると思います。たとえば、戦後の国会の会議録を検索してみたところ、早くも第2回国会で次のような例が見られます。(参議院本会議、1947年5月21日)
「○小川友三君 (中略)しかして多少の非難が、人間ですからありまするが、当選した練達の士は、自分の欠点を大いに改めて善処して戴いたならば、誠に結構と信じます。発言終り。(笑声)」
戦前の会議録はまだ電子化されていないので検索できませんでしたが、おそらくこのような、(笑い)とか(笑声)などの形で発言にならないその場の雰囲気を伝える手法は、国会の会議録にかぎらず、一般の雑誌記事などでも、戦前からあったものだろうと思われます。
ただ、最近の議事録では笑い声を一々記録しない傾向にあるようで、1993年11月2日の政治改革調査特別委員会での
「……それで一回選挙をやってみて、その差が大したことなかったということであれば、すぐ一票に直せばいいんです。(笑声)これはもう皆さん笑いますけれども、立法というのはそういうものなんで、……」
が最後のようです。
「拍手」「議場騒然」「聴取不能」などは健在です。
ちなみに英語では、このような場合
(laughter.)
と書きます。これは、今でも、アメリカの議会やホワイトハウスなどの公式記録に出てきます。拍手は、(applause.)
です。
メールや掲示板の書き込みなど、自分の文章に自分でつっこむかのような用法は、おそらくもっと新しいものでしょう。全くの憶測で自信はありませんが、雑誌の投稿欄などで一部の人が使い始め、パソコン通信の掲示板やメールなどで広まったのではないかなあと考えております。
A. 杜野左近さんから
うにうにさんがおっしゃっていたように、(笑)というのが、議事録等に記載された(笑い)(笑声)という符号から派生したという話、おそらく間違いないと思います。
私が思ったのは、議事録等に記載された実況としての(笑い)(笑声)と現在ネットゲーム等で使われている自嘲的含みのある(笑)の間を埋めるモノとして、ヤングアダルト向け小説(ニフティのSF・ファンタジーフォーラムではライトノベルと呼ばれています)や富士見書房の「ドラゴンマガジン」、角川書店の「月刊コンプティーク」といった雑誌の記事の影響があるのではないかということです。
実際、私の手元にあるいちばん古いヤングアダルト向け小説、吉岡平「無責任艦長タイラー」(1989)の後書きには、作品が作者の親友数人の雑談から生まれる課程を議事録形式で書いていますが、そこには(笑い)ではなく(笑)が文中に登場します。
私の持っている雑誌の中では、電源無しゲーム情報誌「RPG
MAGAZINE #21」(1992)の中で既に議事録の実況の符号としての(笑)ではなく、現在とよく似たニュアンスを持つ(笑)が記事の中にちらほら見受けられます。不思議なことに、この雑誌の元となるシュミュレーションゲーム情報誌「TACTICS
#68」(1989)の中には(笑)という記号は一切登場しません。また、その後「RPG
MAGAZINE #5」(1990)の中にも登場しないところを見ると、(笑)という符号が1990〜1992の間に今と似たような形で使われだしたのではないかと思います。
ただ、以上の話は私の本棚というゴクゴク限られた世界での話なので、もしかすると、1980年代にはどこかの雑誌で(笑)が使われ始めている可能性もあると思います。
付け加えるなら、1990年代前半はNifty
ServeやPC-VANといった商用サービスをはじめ、草の根VANといったパソコン通信が一気に普及した時期に重なります。そこで、(笑)という符号が大きなターニングポイントを迎えたのは間違いないと思います。
★麻生有美さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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