--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.303 (2003.10.02)

Q. ひさたむさんからの疑問

 私は埼玉県在住ですが、ずっとギモンに思っていることがあります。
 橋にさしかかるとき、川の名前が看板になって立ててありますよね? 漢字とその読み方がローマ字で書かれていますが、
利根川は「TONE RIVER」となっているのに、荒川は「ARAKAWA RIVER」なんです! 「ARA RIVER」じゃないとおかしいと思います。
「利根川」「荒川川」がそれぞれの名称ならわかりますが……。どういうことなのか教えてほしいです。

自宅近くにある法隆寺は、「HORYUJI TEMPLE」です。「TEMPLE」とつけることで、外国の方に「寺」だということを説明していると思っていたのですが……。
 多分、利根川の表示の方が少数派だと思うのです。各地からの報告、謎解きをお待ちしています。(星田)


A. ぷちこさんから

 回答ではないのですが……。
 昨日、箱根に行ってきました。芦ノ湖で遊覧船に乗ったのですが、船内で英語のアナウンスがあって、「芦ノ湖」のことを「Lake Ashi」と言っていました。
 聞いた瞬間、この問題があったのを思い出したので、帰宅して早速書いてみました。

いつもメルマガのことを、疑問のことを、心に留めおいていただき、感謝。(星田)

A. 雪風さんから

 特に深い意味はなかったと思いますが、同じ様な例で、山形県の「月山」も道路看板には「GASSAN MOUNTAIN」になっています。
確か理由は「GA MOUNTAIN」だとおかしいから……、だった思います。
 アルファベット表記にして違和感を感じる場合に「ARAKAWA RIVER」の様な表記になるのではないでしょうか?

A. ニャロメさんから

 昔、田端義夫の歌で『大利根月夜』という歌がありました。その歌詞の中で
「利根の流れの流れ月……♪」
というくだりがあります。つまり、利根というのは「地名」であり、荒川の「荒」というのは地名ではないのです。
 したがって、利根川をローマ字で書くと「TONE RIVER」、荒川をローマ字で書くと「ARAKAWA RIVER」となるのでしょう。
 同様に、法隆寺の「法隆」は地名ではないので、法隆寺をローマ字で書くと「HORYUJI TEMPLE」となるのでしょう。

A. うにうにさんから

 道路標識の地名等のローマ字表記には、一応の基準があります。
 国土交通省道路局のサイトをみると、次のような説明が載っています。
 
http://www.mlit.go.jp/road/roadqa/landmark/hqa02.html

「富士山はMt.Fujiでわかります。しかし月山をMt.Gatsuとかいては日本人でも分かりません。 芦の湖もLake Ashiでは通じないのでLake Ashinokoとするなど、ローマ字表示はきめ細かに工夫しています。」
(前掲URLのページを開き、一番下の「知って役立つ案内標識の豆知識」をクリックすると表示されます。実例もいくつか載っています)

 また、KICTECという道路標識メーカーのサイトには、次のような例があがっていました。
 
http://www.kictec.co.jp/inpaku/iken%20keikai/syasin/hebon/romaji.html

「公園の名称のうち慣用上固有名詞の一部として切り離せないものにおいては下記の例による。
  偕楽園 Kairakuen Park 東照宮 Toshogu Shrine

 川、山、湖の名称の〜川、〜山、湖等の部分は固有名詞の一部として切り離せないものにおいては下記の例による
  木曽川 Kisogawa Riv. 荒川 Arakawa Riv.
  立山 Mt. Tateyama 芦ノ湖 Lake Ashinoko
  東大寺 Todaiji Temple 松本城 Matsumotojo Castle

 すでに表記法が定着していと認められる場合は下記による。
  富士山 Mt. Fuji     琵琶湖 Lake Biwa  」

 さて、ここで改めて、「どういう場合には切り離せずに“〜kawa(gawa) River”となって、どういう場合には切り離されてkawa/gawaが省かれるのか」を自分なりに考えてみました。
 まず、たとえば「利根川」「荒川」などでいうと「利根」「荒」を「本体」、「川」を「語尾」と呼ぶことにします。
 大ざっぱにいって、

1. (a) 日本語でも本体部分だけで呼ばれることがある場合は、語尾を含めずに書く(Tone Riv.方式)傾向がある。
(b) 一方、日本語でもつねに語尾をつけて呼ばれる場合は、ローマ字でも語尾をつける。

(a)の例
富士山……「富士の山」とか「富士の高嶺」など、「ふじさん」ではなく「ふじ」だけで切り離されて呼ばれることがあるので、Mt. Fuji.
利根川……たとえば、「利根大橋」「大利根町(群馬県・埼玉県内の地名)」「(千葉県立)大利根博物館」「大利根酒造」など、「川」を伴わないで「利根」(時には「大利根」)の形でしばしば使われるので、Tone Riv.

(b)の例
荒川……「荒の流れ」とか「荒で川下りする」などとは言わず、つねに「あらかわ」でセットなので、Arakawa Riv.
姉川……同様に、「姉」とは呼ばないので、Anegawa Riv.

2. 本体が短いものは、語尾まで含めて書かれる(Arakawa Riv.方式)傾向がある。
例:「大島」O Islandだと変なので、Oshima Island

 なお、昔は、
「〜kawa Riv.では二重になってしまうので、なるべく1a方式にする。ただし、どうしても1b(および2)方式で書かないと不自然な場合は仕方がない」
という考え方が主流だったようですが(ひさたむさんも同様のお考えのようですね)、最近は、たとえ意味の上でダブっていても、語尾まで含める表記が増えているように思われます。
 たとえば、前記の例のうち「松本城 Matsumotojo Castle」などは、切り離してMatsumoto Castleとしても、さほど違和感はなさそうですが、これも切り離さないほうの例としてあがっていますね。

 Arakawa Riv.という表記は、機械的に日本語に訳して「荒川川」と考えるから、「馬から落馬」式の冗語表現だと思ってしまうんです。
 そうではなくて、これはあくまでも英語の説明の省略形であって、
「地元でアラカワという名称で呼ばれている川(river)なのだ」
と考えればよいのではないでしょうか。

 英語でガイドするとしたら、
「This river is one of the biggest river in Tokyo. We call it Arakawa.」
とか、
「This is a river called Arakawa.」
とは言えても、
「We call it Ara. This is a river called Ara.」
とは言えない(無理に言ったとしてもなんだか不自然)と思います。

moon-jellyさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。