Q. kodamaさんからの疑問
先日(2003年10月)、中国の有人人工衛星が無事帰還しましたよね。そこで人工衛星に関する疑問です。
「人工衛星の軌道って?」
Webで調べてみたら、衛星の高度とそのときの速度と進行方向で軌道が決まるらしいことは分かったのですが、まだまだ疑問があります。
衛星の飛んでる図などを見ると、必ず衛星は地球の自転と同じ方向に進むように描かれているけど、自転と逆方向に進むことはできないの?
静止衛星は地球の自転と同じ速度で回るけど、自転よりチョット遅く回る後戻り衛星なんてないの?
また、人工衛星同士が衝突しないようにするための国際的な決まりごとなんかはあるのでしょうか?
A. JH9IFGさんから
先に結論を述べましょう。地球の自転速度も利用して、人工衛星は打ち上げられているのです。
「人工衛星」は地球の自転と同じ方向に進むように発射した方が、衛星軌道速度を出しやすいから、地球の自転方向と同じに発射するだけです。
逆方向に発射する場合、まず地球の自転速度+衛星軌道速度の加速をしてあげなくてはいけないため、燃料がたくさん必要になります。そのため、ロケット自体も大型にする必要があります。
ただでさえ、打ち上げに必要な費用がたくさん掛かる「人工衛星」ですから、「無駄」なことはする必要がないだけですね。
A. ルネぞうさんから
まず、自転と逆方向の人工衛星は作れないかとのことですが、原理的には作れます。が、誰もそんなことはしないでしょう。メリットがないから。さらに、地球の自転の影響で、だんだんスピードが落ちてきて、早くおっこっちます。
ロケットの打ち上げは、地球の自転のスピードを利用して行われます。地球の外から見ると、発射前のロケットも地球の自転と同じスピードで動いていることになります。そのエネルギーを利用しない手はありません。
逆に、自転と反対方向に打ち上げようと思ったら、自転のスピードを殺して、さらに再加速しなければいけません。もったいないですね。
ちなみに、自転のスピードの影響は、赤道直下の方が強く、北極や南極に行くほど弱くなります。同じ回転スピードだと、軸からの距離が大きいほどスピードは速くなります。だから、日本の打ち上げセンターは種子島にあるんですね(沖縄だと輸送費がかかりすぎるから)。
衛星同士の衝突回避ですが、だいたい軌道修正要の補助ロケットを利用して行われます。衛星の軌道は計算されてますから、ぶつかりそうな場合はちょっとよけることができるんですね。
ただ、これも問題があって、軍事衛星なんかは、存在が公表されていないんで(公然の秘密なんですが)計算がやりにくいこと。
スペースデブリ(宇宙のくず)と呼ばれる隕石や壊れた人工衛星のくずも、存在が確認されていないのがたくさんあって、たまに人工衛星とぶつかっています。それでも、大きめのスペースデブリは日夜観測され、軌道も計算されてよけることができるようです。
A. maroさんから
「地球の自転と同じ方向」に打ち上げた方が、速度・燃料の点で有利になるのです。
赤道上では、地表は「東向き」に約0.46km/sの速度を持っていますから、東向きに打ち上げれば、この分だけ「加速がすくなくて済む」=「燃料がすくなくて済む」となります。
もちろん、緯度が高くなると、この効果はすくなくなり、極から打ち上げるときは、どちら向きでも変わらないことになります。
自転よりチョット遅く回る後戻り衛星なんてないの? ということですが、そんな人工衛星があっても、利用価値が無いのではないでしょうか?
もしかすると、何らかの利用価値があって、実際に飛んでいるかもしれませんが、私は不勉強で知らないです。どなたがご存知でしたら、ぜひ続報をいただきたいです。
静止衛星軌道は「高度」が決まっていますし、赤道上にかぎられていますから、あまり密になると、確かに衝突のリスクが高くなります。また、将来、静止衛星を打ち上げる国が出てきたときのために、衛星先発国が「良い場所」を占めてしまわないよう、あらかじめ調整しておくことも必要かもしれません。
したがって、現状では、通信衛星・放送衛星などの静止衛星を上げる際には
「国際電気通信連合(ITU)」に「事前公表」や「通告」し、「調整」する
ことになっているようです。
総務省のホームページから
「情報通信→電波利用→周波数割当て・公開→衛星の軌道位置・周波数の情報」
と手繰っていくと、日本付近の静止衛星の位置割当ての表がありますよ。
A. なぞなぞすき^^;さんから
子どもの頃、西から昇る太陽をみるという漫画がありました。日本初の有人宇宙船を、西方向に向けて打上げ、西からの夜明けの太陽をみるといったものでした。
地上から打ち上げる人工衛星の類はすべからく、東向きに打ち上げます。また、打上げ基地もすべて赤道上から中緯度地域にあります。地球周回軌道にのせるためには約8km/sという速度が必要で、打ち上げたものが地上に落ちてこなければいいのですが、これを「第一宇宙速度」と呼んでいます。
よく、富士山からボールを投げて、速度により落下位置がどんどん伸びて、最後には落ちずに……、いう例がのってます。
周回衛星は落ちてこないというか、常に落ちてるんですが、その地点での高度が最初と同じだということで……。この速度を実現するために、地球自転速度を利用します。赤道上では0.46km/s(時速1666km)となります。自転速度は、当然、低緯度〜中緯度で大きく、高緯度になると小さくなり、極地点ではゼロとなります。そのため、北に位置する国では、できるだけ南に打上げ基地が位置しています。それだけ引力を振り切るにはエネルギーが必要ということでしょう。
自転よりチョット遅く回る後戻り衛星についてです。「静止衛星」ということは、自転速度と同期しているということで、赤道上空約36,000kmを飛行します。このとき、衛星の飛行速度は約3km/sです。ちょっと遅いということは、これよりも、軌道を高くすればいいのです。でも、あまり意味はないんではと思いますが……。
これも昔聞いた話ですが、東京上空での静止衛星はできないのかってことを思いだします。周回軌道は南北に回るものやらいろいろありますが、赤道上を除いてある緯度の上空を周回するものはありません。あくまでも地球の中心の周りを周回します。そのような周回を実現するには常に推進エネルギーが必要だからでしょうね。それだったら、東京上空数十kmに大型飛行船を停泊させる方がまだましかも?!
人工衛星同士が衝突しないようにするための国際的な決まりごとについてです。静止衛星を除いては特にないのではと思います。
ただ、打ち上げた衛星が経年により軌道が低下し、落下し、地上に被害が出た場合はその打上げ国に責任があるとしていますね。落下による被害が出る確率は非常に小さいものですが……。衝突については1996年にあるようですね。それだけ宇宙は広いということでしょう!
余談ですが、「領空」とは国の領土、領海の上空ですが、大気圏までだったと思います。
静止衛星については、赤道上空の位置について取り決めがあります。ただ、打上げ数が増えるについて、その間隔も狭まっています。最初は4度おき(スロット)でしたが、それが2度、1度、と需要によって狭まってます。今では0.25度(1440スロット)ではないかと思います。0.25度というと、約180kmに1個となります。
静止衛星ではなく、赤道面に対して45度の角度をもつ軌道に、衛星を3個打ち上げて使うという話も聞きました。「準天頂衛星」といわれます。これですとどれかは日本上空にあるので切り替えて使います。メリットは、日本から見てその仰角を上げられるということです。ビルの谷間でも不感地帯がすくなくなるということです。
詳しくはその筋の人(一体だれ??)からきいてくださいm(_
_)m
★Aaronさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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