--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.324 (2004.01.08)

Q. イルカさんからの疑問

 自前のビデオカメラで映画を撮りたいのですが、全くの他人がその中に入ってしまうのは、法律には触れないのでしょうか? たとえば肖像権みたいなものにひっかかってしまうのでしょうか?
 ご存知の方、教えてください。

 


A. Kidさんから

 映画ではありませんが、映像関係の仕事してます。おそらくポイントは3つ。
 1つは、知ってる人が見てその映っている人を「あ、○○だ!」ってわかるほどの映像なのかどうか。街の雑観みたいに、たくさんの人が何となく映っている場合は問題ないと思います。
 2つめは、はたから見て撮影してることが明らかにわかるかどうか。業務用のカメラを使った「いかにも撮影してる」ような撮影風景なら、周囲の人々に撮影中であることを暗に認識させているということで映ってしまったとしても、それは了解の上ということになります。したがって、隠し撮りや小型のデジタルカメラなどによる撮影だと微妙です。
 3つめは、映像をどのように利用するか。販売や上映など商業目的になると権利問題はかなり複雑になりますし、肖像権だけでなく撮影する場所にも許可が必要になります。

A. ポポンさんから

 法学部出身の方なら(私は商学部ですが)ご存じかもしれませんが、京都府学連事件などであったように、「犯罪の現場(現行犯)を撮影している」等の「正当な理由」があれば肖像権やプライバシー云々の話にはなりません(犯罪行為をしていなくて映りこんでしまった人も)。
 この「正当な理由」が曲者ですが、テレビでの街頭インタビュー等で映りこんでしまっている人もいるわけで、映画の撮影も「正当な理由」になるかもしれません。このあたり曖昧ですみません。
 ただ、撮影現場周辺で「撮影します」「撮影中です」などと、事前に、最中に、知らせることは必要です。

A. Julianさんから

 結論から言えば、多分問題はないでしょう。
 自作の映画とはどの程度の撮影機材・スタッフで行われるかは分かりませんが、「映画」という以上、周囲の人たちは「何かのロケかな?」という認識は持ちます。
 たとえば、新聞では、祭りや雑踏など、不特定多数の人物が写り込む可能性のある場合、新聞社の腕章を着け、「いま取材中ですよ」ということを意思表示した上で撮影します。後日、新聞にたまたま顔が写った本人から苦情が来ても、対処できるように細心の注意を払います。
 ただ、特定の人物をアップで撮る場合は明らかに肖像権が発生しますので、個別に許可をいただきます。(とすれば、写真週刊誌の隠し撮りなどはどうなるんだろう?)
 要するに、たまたま写った人が肖像権を主張しても受け入れられる可能性は低いでしょう。それより、映りたくない人は、いかにも取材・撮影をしている場面に出くわしたら、その場をよけるのが賢明です。そういう判断をしてもらえるようないでたちで撮影をしてはいかがでしょうか?
 ただ、「肖像権」なる明確な規定(条文)がわが国にはない、ということに思い当たりました。
 つまり、こういうことです。憲法13条には「包括的人権規定」という概念があります。そこから、その一部として「人格権」という権利が導き出され、これが俗に言う「肖像権」とされるものです。
 ですから、「肖像権を侵された」といって、訴えることはできますが、この場合、適用されるのは、憲法の「人格権」ないしは「名誉毀損」(民法・刑法)に直接は基づくものです。「肖像権侵害」という名の罪はないのです。
 もちろん、数々の判例で結果的に「肖像権」は認められていますので、今回の問答に支障はないと思います。
 付け加えて言えば、タレントや政治家など署名人には「パブリシティー権」といわれる、一般市民とは別の権利も作用します。これは憲法29条の「財産権」から派生した概念です。
 いずれにしても、今回の疑問のケースでは、その人物を狙い撮りするわけではないのですから、問題はないと思います。

zekeさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。