Q. やまおさんからの疑問
円周率ってそんなに(コンマ以下)必要ですか?
円周率はコンマ以下ずっと続きますが、現実はどこまで使っていますか? 建築、精密機械等、円に係わりのある方教えてください。
★日常生活では、3で十分だと思ってますが、
「私は、円周率を小数点以下○桁まで必要とします」
という情報をお待ちしています。(星田)
A. 前田憲男さんから
直径100mの円(大体、東京ドームくらい)を考えますと、円周の長さは、314.159……mです。
円周率を3.14で計算すると16cm弱短くなります。 3.142で計算すると4cm強長くなります。
3.1416で計算すると1mm弱長くなります。東京ドームなら1mm程度の誤差は無視できるでしょう。
計算の手間は電卓使えばどうってことないので、銀座の一等地の測量でも3.1416で実用上問題ないと思います。
A. mkunさんから
円周率にかぎらず、定数は有効桁数という考え方で決定されます。3.14をかけた結果は上から3桁まで正しいという考えかたです。工業的に、必要な精度がありますので、それにあわせて使う桁数がきまります。
たとえば、直径100mm±0.01の円周の長さをもとめる場合の必要桁数は、最大100.01にかけるのですから5桁以上必要ということになります。ただし、実際は測定誤差の考慮も必要なので6桁ほど必要です。
さらに、計算はほぼコンピューター、電卓なので、8桁〜32桁を使っているというのが現実ですね。
A. ルカさんから
「およそ3」という考え方では、たとえば、以下のような場合に困ります。
高校数学の三角比の知識を必要とするので詳細は省きますが、円の面積は、πr^2、この円に内接する正十二角形を考えて面積を計算すると3r^2となります。π≒3とすると円とそれに内接する正十二角形の面積が等しくなってしまいます。また、頂点が13以上あれば、内接する多角形が円の面積を超えるという超常現象が起きます。
数学がむずかしいものだと思っている人だと、常識で考えて明らかにおかしいことでも気がつかずに、結果を鵜呑みにするかもです。
A. 4pyoさんから
工学部教員です。
使う場面で必要とする精度が変わるので、単純に言うことはできません。 暗算の場合は、3で充分です(誤差4.5%)。他にも3で計算していい場面はいくらでもあるでしょう。
しかし(質問の答えからはズレてしまいますが)、小学校で円周率を3と教えることには絶対反対です。どこまで使うかは別として、円周率は3.14と教えるべきです。3.14だから円周率であって、3はただの3です。計算で3までしか使わないことは全く構わないのですが、円周率はあくまで3.14……なのです。
3.14と言われれば誰だって円周率だと思う、でも3と言われて円周率だと思う人はまずいない、ここがポイントです。
同様に、重力の加速度は9.8m毎秒毎秒です(標準重力加速度の定義は、9.80665m毎秒毎秒)。10として計算して全く問題ない(誤差2%)ことはよくありますが、でも9.8、あるいは9.81と教えるべきです。9.8と聞くだけで重力の加速度だと分かるからです。
A. しぎまるさんから
私は、円周率を10桁まで必要としています。
微積を教えているのですが、円周率は、身近でわかりやすい材料です。また、仕事で、浮動小数点のシステムには、テストで円周率の計算をさせています。
A. takaさんから
私はときどき「乱数表」として円周率を使っています。というのも円周率は「乱数」として見た場合、0〜9までの数字がほぼ10分の1の確率で出現して、かつ、ほとんど規則性がない、かなり優秀な乱数として使えるからです。
というわけで、00〜99までの2桁の数字で、50行50列の表を使っていますので私の場合は「5000桁」です。頭から5000桁ではないので、計算するときは、100万桁まで出しています。
A. しげ3さんから
10数年前に高校生だった頃、音楽の男性教師が答案用紙を返すときに
「今回のテストは答えのパターンがわかれば、問題を見なくても正解できる。そのパターンは円周率の50桁目からだ!」
と言っていました。
確かに、すべて選択問題で変な数字(3択で6,7,8のどれか?とか)でした。
50問ほど問題があり、教師は自慢げに全部暗唱していましたが、私のいる文系のクラスではだれも正しいかわかりませんでした。
A. 円周夫人さんから
ここまでは、小学生のときに覚えました。
★……おどろきです。
私の元へ、小数点以下16384桁の円周率がメールで届きました。紙面の都合で、掲載はできませんが……。(星田)
A. ポテトさんから
僕は仕事で、人工衛星の画像を使って地面のエネルギーの計算をしています。
一見、円とは関係なさそうですが、円周率をたくさん使います。たとえば、ある特定の日の、特定の時間の太陽光の強さを計算する時にも円周率を使いますし、角度を一般的な度数表記からラジアンに変換するだけでも使います。
数えたことはありませんが、1つの衛星画像を処理するのに100回以上は円周率を使ってるんじゃないかと思います。
さて、このような仕事は、全く精密なものではありません。なにしろ地上700kmのところから撮った写真を元に、いろいろ解析をしているわけで、精密な計算はできません。とはいっても、円周率はやっぱり3じゃ困ります。円周率に3を使うと、それだけで誤差が4.5%になります。
1回4.5%の誤差でも100回以上積もり積もると、使い方によってはすごい大きな誤差になる可能性があります。3.14を使った場合、誤差は0.05%で、これなら、ちょっと不安だけどけっこういけるかもしれません。3.1416ならば文句なしにOKです。
さて、実際はプログラムがPIという数字を用意しているので、それを使っています。はっきりと小数点以下何桁まで使っているのか知りませんが、おそらく9桁は使ってると思うので、3.141592654という感じでしょうか。
これだけの桁が必要だというんじゃなくて、3.1416で充分だけどせっかくだからPIを使っているというだけです。
また、プログラムを見直すときに、たとえば
「2.45*3.1416+558.435/3.1416」
と書かれているよりも
「2.45*pi+558.435/pi」
と書かれているほうが、わかりやすいという利点もあります。
パソコンで作業を行う場合、人工衛星の画像解析ソフトのような複雑なものでなくても、エクセルなんかの表計算ソフトでもPIの関数があります。それを使えばいちいち誤差について考えなくてもいいし、計算時間は全く変わらないし、見やすいので、ほとんどそれを使っています。
最近は何でもパソコンですが、もし紙と鉛筆で計算しないといけないなら、3.14を使うでしょうね。
A. うにうにさんから
私自身は、地学(特に天文計算)で円周率を使うことが多いのですが、関数電卓やポケコンのπキーを使ってしまうので、たいていは有効数字10桁(3.141592654)で計算しています。ただ、実際には10桁も必要なことはすくなく、式に出てくるほかの数字の有効桁数にあわせて4桁から6桁程度あれば十分な場合も多いのですが。
ところで、円周率の記事の中で、「小学校で円周率を3と教えること」についての一文があったので、質問の趣旨からは多少それますが、すこし補足しておきます。
よく、私の周りにも
「最近の小学校では円周率は3になったんだって?」
とか
「3で教えてるんだって?」
という人がいます。このことは、かなり広く流布しているようです。ある新聞はこれを1面トップでとりあげていましたし、テレビのワイドショーでもそのような扱い方をしていた番組があったようです。
しかし、これは誤りです。
2002年度から実施された、現行の小学校学習指導要領をみると、第5学年のところに、
(4) 内容の「B量と測定」の(1)のイ【円の面積の求め方を考え、それを用いること】及び「C図形」の(1)のエ【円周率の意味について理解すること】については、円周率としては3.14を用いるが、目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮するものとする。
と書かれています。(【 】内は私の補足)
つまり、あくまでも円周率は原則として3.14を用い、「目的に応じて」3を用いる、ということなのです。
しかも、これは今回の指導要領に始まった話ではありません。一つ前の指導要領(1989年公示、92年度から実施)でも、第5学年のところに
「円周率としては3.14を用いるが、目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮する必要がある。」
と、若干の言葉遣いの差はあるものの、同じ意味のことが書かれています。
そんなわけで、マスコミが伝えた「円周率が3になる」は誤報・デマといっていいと思いますが、それならば今回の指導要領の改訂で、円周率の扱いは何も変わっていないのか、というと、実はそうでもないのです。
何が変わったかというと、「目的に応じて3を用いる」の「目的」です。
前の指導要領のもとで作られた算数の教科書を見ると、3を用いる例として、切り株の直径を測って、幹の周囲の長さや、断面の面積を求めるような問題が載っていたりします。
つまり、円といってもコンパスで描いたような正確な円ではないし、実測値には誤差も伴うので、円周率だけ有効数字3桁もあったって仕方がない、1桁で十分だ、という事例です(小学校で「有効数字」という言葉は使いませんが、考え方としてはそういうことになります)。これはこれで、「概数の計算」として意味のあることです。
つまり、「概数で十分な場合、無意味な手間を省く」のが「目的」です。
ところが、新しい指導要領では、もっと大きな「目的」が現れます。しかも、これは学習指導要領の「円周率」の項目だけを見ていてもわからないので、気づきにくいと思います。
第5学年のところに、こんな規定があるのです。
内容の「A数と計算」の(3)のウ【ウ 小数の乗法及び除法の計算】については、1/10の位までの小数の計算を取り扱うものとする。
つまり、小数第1位までの小数ならかけ算・割り算ができますが、3.14のように小数第2位が入ってくると、できないのです。この制約は、6年生に進んでもとれません。
古い指導要領では、小数点以下の桁数に関して明示的な規定はありませんでした。このため、さまざまな桁数の問題を扱うことにより、「かけ算では小数点以下の桁数の和が、積の小数点以下の桁数になる」というルールを体得できました。簡略化することでかえって身に付きにくくなるのではないかと思いますが、その議論は今はおきましょう。
大事なのは、「目的」が「指導要領で、小数2位数の乗除算は扱わないことになったから」という、算数の本質とは関係ない横やりである点です。
これは、「概数」などのケースと異なり、計算する上で本質的・必然的に意味があるものではありません。あくまでも、カリキュラムの都合です。
そうはいっても、面積や周を計算したい場合もあるでしょう。そういうときは、仕方がないので電卓でやりましょう、とならざるを得ません。
実際、指導要領の文面上でも、電卓の使用は大幅に緩和されています。旧指導要領では、
「統計的に考察したり表現したりする際に大きな数を多く取り扱う場面や小数の乗法及び除法で計算法則が成り立つかどうかを確かめる場面などで、計算の負担を軽減し指導の効果を高めるため、そろばんや電卓等を第5学年以降において適宜用いさせるようにすること。」
とあったのが、新指導要領では、
「問題解決の過程において、桁数の大きい数の計算を扱ったり、複雑な計算をしたりする場面などで、そろばんや電卓などを第4学年以降において適宜用いるようにすること。」
となりました。
つまり、旧指導要領では基本的に、「統計などで億・兆などの大きな数が多数出てくる」とか「計算の仕方そのものではなく、計算の法則を確かめるのが目的の場合」など、限定的に使用(それも5年以上)していたのが、新指導要領ではもっと自由に、4年から使えるようになっています。
以上まとめると、「円周率を3と教える」は完全な誤りだが、「3を使ったほうがよい(使わざるを得ない)理由」については新旧の指導要領で根本的な変化が見られる、といえましょう。
なお、昨年(2003年)暮れに指導要領の一部改正が行われ、それまで「原則的には指導要領に示された範囲を超えてはいけない」と厳しく枠をはめられていたのが緩和されました。
たとえば小学校の第1章・総則には
「第2章以下に示す内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての児童に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる。」
のように示されています。ただし、これによって小数2位数や3位数の乗除算を教えるかどうかは、各学校に任されています。実際には土曜日が休みになって以降、かなり時間的に厳しいところが多いかもしれません。
★しこうさん、しがないサラリーマンさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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