--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.347(2004.04.15)

Q. マーベラスさんからの疑問

 この前、美術の時間に絵の具を使用していた時にふと思ったことなのですが、絵の具って何から作られているのでしょうか?
 絵の具を見てるかぎり、色は豊富だし、水っぽいし、水彩やポスターカラーなどの種類も多いですよね?
 以前、親友に聞いてみた所、「花からではないか」と言われたことがあります。しかし、仮に花だとしても、どうやって花を絵の具に変身(?)させるのかとかに疑問が浮かびます。

色によっても原料がいろいろあるのでしょうね。(星田)


A. .ASHさんから

「絵の具」といってもいろいろな種類がありますが、基本的には色の元となる「顔料」と色を画面上に定着させる「展色剤」が混ぜ合わされたものを「絵の具」と呼びます。
 同じ顔料でも展色剤にアラビアガムの水溶液を使うと「水彩絵の具」が、リンシードオイルのような乾性油を使うと「油絵の具」が、アクリルエマルションを使うと「アクリル絵の具」が、膠の溶液を使うと「日本画用の絵の具」が、トラガカントガムを使うと「パステル」が、それぞれできあがるわけです。
 絵の具が水溶性かどうかや乾燥後の耐水性、画面の光沢の有無、乾燥の速度という絵の具の性格の違いのほとんどは、展色剤の性格の違いから生じます。
特に生の顔料の色をそのまま再現する絵の具や、顔料を濡れ色にして深みを与える絵の具など、「発色」に関わる違いはビヒクル(展色剤の主要成分)に大きく影響を受けるのです。
 次に顔料の話ですが、顔料は「有機顔料」と「無機顔料」に大別されます。そしてさらに「天然顔料」と「合成顔料」に分かれ、さらにその原料によって25〜30項目に分類されます。たとえば質問文の中にあった「花」の場合は、「天然有機顔料:植物顔料」と呼ばれるわけです。
 天然無機顔料は石膏や焼成土、マラカイトやラピスラズリなどの鉱物、珊瑚や胡粉など、合成無機顔料はコバルトブルーやカドミウムイエローなど、合成有機顔料にはクロモフタルレッドやフタロシアニンブルー、蛍光顔料などが含まれます。
 ところで、カドミウムレッドやバーミリオンなど一部の顔料の原料には重金属の化合物や、人体に対して有害な物質が含まれる場合があります。日本国内産の画材に関しては平成7年7月のPL法施行にともない、統一の有害性マーク(四角い赤地に黒バッテン)がつけられることになっています。

有害性あり

 中でもカドミウムの化合物、セレンおよびカドミウムの化合物、鉛化合物を含むものは特に取り扱いに注意が必要です。物によっては皮膚から直接吸収するものもありますので、パッケージに書いてある説明をよく読んで、安全に使いましょう。特に水彩絵の具は親水性があるので注意が必要です。

A. ひいろさんから

 水彩絵の具には、顔料と色を定着させるための糊材としてのアラビアゴムが使われています。
 絵の具の色の素となる顔料は、昔は天然の土や石、鉱物、金属などから作られていましたが、最近はほとんどが石油から合成された顔料だそうです。今でも鉱物から顔料は作られていますが、非常に高価な絵の具となっています。
 また当然といえば当然ですが、水の上では安定しない顔料を使用する色は、油彩絵の具にあって水彩絵の具には無いそうです。

A. 杉野実さんから

 百科事典によると、

  白……酸化チタン
  朱……硫化水銀
  赤……セレン化カドミウム
  黄……硫化カドミウム
  緑……酸化クロム
  藍……酸化コバルト
  紫……燐酸マンガン

のように、鉱物性のものがほとんどです。黒の炭素は植物油などをもやして作りますし、なかには褐色のイカ墨(セピア)のように、生物からとったものをそのまま使う例もありますが、それはすくないようです。
 色と原料名のくみあわせを見て、「なるほど」と思う方も多いのではないでしょうか。最近ではこういう無機物のほかに、フタロシアニン系など、石油から作られる有機顔料も使われています。

A. アンギラスさんから

 中途半端な知識で申し訳ないんですが、オフセット印刷用インキの場合、色の原料に「金色」は真鍮の微粉末を、「銀色」はアルミの微粉末を使用しています。
 そのため、一般的な黒色、黄色等のインキに比べて比重が大きく、ズシっと重い感じがします。

 

小山田さんからは、以下のサイトをご紹介いただきました。
 まっち美術館 絵の具コーナー
 
http://www.alps.or.jp/match/library/index.html

上記のサイトの小出様から、いろいろと教えていただきました。

A. 小出さんから

 現在各メーカーでで作られている絵の具の中には、専門家用、学童用の別なく、利益本位で水彩絵の具の「糊」に本来使うべきでない糊が使われているものがあります。絵の具の価格を引き下げる目的で、澱粉から作られている「デキストリン」が多く使われているのです。
 医薬品、食料品にも使われ、水彩絵の具の糊に最適とされ数千年の歴史を持つ糊、「アラビアゴム」を使用している絵の具は、悲しむべきことですが私共の製品だけになりました。
 澱粉糊「デキストリン」は、構造から見ますと澱粉の繊維は繋がった形状をしています。「デキストリン」はこの澱粉繊維を、ある程度切断し短く加工したものです。絵の具の糊として使用した場合、この繊維の長さが絵の具の伸びを悪くします。
 何より問題なのは、澱粉糊は腐敗が速く、大量な「防腐剤」というより強力な「殺菌剤」として激毒物のフェノール(石炭酸)を大量に使用しなければ腐敗が抑えられないことです。各社の絵の具フェノールの値は平均2,000ppmにも達します(水彩絵の具のツーンとした臭い、これはフェノールの臭いです)。
 アラビアゴムが、食品、医薬品に使われているわけは、この糊は、天然産品(西アフリカに産するアカシアの木の樹液)で、澱粉のような繊維を持たず、定着がよく、再溶解性に極めて優れているからです。
 この糊を精製して不純物を除くと、腐敗がすくないので、防腐剤は極端にすくなくてすみます。糊に臭いがありませんし、もちろんこれを使った絵の具に臭いはありません。
 しかし、価格差は20倍。それでも、人体への安全性、環境汚染の防止、使いやすさから、敢えて私共は「アラビアゴム」のみを使用しています。
 不思議というより、意図的なことと思いますが、毒性のある顔料には規制がありますが、防腐剤には規制がないのが現実です。
 また、今、「絵手紙」が盛んで、「顔彩」という名の絵の具をご存知かと思います。
 これは、「岩絵の具」「岩彩」の造語で、私どものHPの「館長からの回答」に一部書いてありますので、ご覧ください。
http://www.alps.or.jp/match/
 この問題はネット販売を停止する問題にも発展しています。造語の「顔彩」とはどんな絵の具か、どのメーカーも説明できないのです。
「岩彩」は、激毒物を含む日本画に使う顔料を使います。メーカーの説明ですと、「顔彩」には毒性の含まれない顔料用いている――とのことです。
 ところが「顔彩」のつけられていり名前は?

  朱砂、又は、辰砂(しんしゃ)=「硫化水銀」
  緑青=「炭酸銅」「水酸化銅」

 猛毒物のこれら「岩絵の具」の名前が、平気で「顔彩」の名前として転用されています。
 糊について、顔彩についてすこしだけ述べましたが、利益優先、安全性の無視。悲しむべき現実がここにあることがわかります。
 私共は、これにあくまで抵抗し、消費者の安全性、つまり「使う立場に立って」の商品作りをしています。

麻生有美さん、ポポンさん、hideさん、LEIFさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。