Q. ノーガイドさんからの疑問
初めて行く寺や神社で、その名称をどう読めばいいのかいつも迷ってました。
あるとき、寺は音読みが多くて、神社は訓読みが多いのに気が付きました。これってどうしてなのでしょう?
★私の住む奈良県には、たくさんの寺や神社があります。
・大神神社……おおみわじんじゃ ・鏡作神社……かがみつくりじんじゃ
・東大寺……とうだいじ ・薬師寺……やくしじ
確かに、神社は訓読みですね。
簡単に言えば、「寺」は外来だから――という結論なのでしょうか? プラスアルファの回答をお願いいたします。(星田)
A.
アイオーンさんから
答えというわけではないのですが、京都の有名なお寺には例外もありますよ
清水寺(きよみずでら) 地主神社(じしゅじんじゃ)
などです。
A. ひいろさんから
まず漢字の音読みと訓読みの違いですが、音読みは中国での発音に近い音を当てはめたもの、訓読みはその漢字が元々持っている意味と同義の日本の言葉を読み方にしたものです。ですから、訓読みを英語で言うと、「Japanese
Reading」となります。
寺の名前は、山号と寺号から成り立っています。たとえば「東叡山寛永寺」いうようなものです。この山号、寺号は、地名等に関係なく、属する宗派などから授かったりするものだそうです。
もともと仏教は中国から伝来したわけですから、仏教用語など関連するもの全てが中国語で伝わりました。そのため日本の仏教では、中国での発音、すなわち音読みが慣習となったようなので、山号、寺号も音読みとなっているのではと思います。おそらくお経や戒名が音読みなのと同じ理由ではないかと思います。
逆に神社の場合、その名前は祭っている神の名前に由来するのが多いそうです。たとえば氷川神社は、氷川神を祭っている神社となります。もともと日本では、土地神や氏神、生前に功績があった人などを神として奉ったりする信仰があったために、そのまま奉った神の名前が神社の名前となったようです。そのため元々が日本の名前が由来となっているので、漢字も日本語読み、すなわち訓読みが多いのではと思われます。
ただ、明治以降にできた国策神社(明治神宮など)では、このかぎりではないようです。
A. 鰻田社会科雄さんから
神社は、その土地その土地の氏神様を祭ることが多いので、地名を取って「○○神社」と呼ぶことが多いです。地名は、普通は古くからの大和言葉が多いので、自然に訓読みになるのです。
例:湯島天神、神田明神、熱田神宮など
一方、元々仏教というものが外国から導入した宗教ですから、お寺の名前は仏教教理上の哲学的概念を示すものが多いです。すると自然とお経から取ることになり、お経は全部漢文ですから、音読みになります。
例:本願寺,観音寺など
そして、一度それが慣習になってしまうと、後から作られた神社もお寺も自然にその「神社は訓読み,お寺は音読み」という習慣を踏襲するようになります。
たとえば、東京・浅草にある浅草神社(三社明神)と浅草寺は、神仏混淆によって江戸時代までは一体でした。明治になり、神仏分離政策によって神社とお寺に分離した後、浅草寺は地名なんですから「あさくさじ」または「あさくさでら」と読ませてもよさそうなものですが、「せんそうじ」とあえて音読みにしています。
また、明治になってからできた靖國神社は、地名ではなく概念から付けた名前ですから「しょうこくじんじゃ」と読ませても良さそうなものですが、「やすくにじんじゃ」と訓読みにしています。
A. パートタイム和尚さんから
いちおう仏門に入っている者です。
私見ですが、やはり仏教が外来だからという理由が近いと思います。
仏教は、中国経由で日本にやってきたので、お経も漢訳の形で入ってきました。漢訳というのは、皆さんもご承知の通り、『西遊記』で有名な三蔵法師ら中国の高僧達が艱難辛苦の果て、インドからサンスクリット語の経典を持ち帰り、時の中国語に訳したということです。
つまり、我々僧侶は日常、「漢」の言葉で書かれた翻訳ものの聖典を、日本式の読み方で読んでいるという、少々わかりにくい状況にあるわけです。
お経は通常、訓読みはしません(場合によっては「訓読」‘くんどく’といって漢文の読み下し的な読み方をするときもありますが)ので、この日本式の読み方が、つまりは音読みであり、慣習として、寺名にも反映されているのではと思われます。
もちろん、寺名をお経の中の言葉から直接とってくる例が数多いという事情もあるでしょう。
ちなみに、音読みには「呉音」「漢音」「唐音」などがあります。「呉音」では、たとえば、「決定」は「けつじょう」、「教化」は「きょうけ」と読んだりします。
全くの予断ですが、私の宗門では、「呉音」にふさわしくない名前は許されず、私は半ば強制的に改名させられました(笑)。
★タマさん、cocoさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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