Q. ぽーじいさんからの疑問
ヘリコプターはなぜ、水平に進むことができるのでしょうか? あの構造だと、上に上に行くように思うんだけど……?
実は私、結構なおじさんなんですけど、これ、昔からずっと疑問なんです。何人かに聞いてみたんですが、誰も納得のいく説明をしてくれませんでした。 あの、上についてる大きなプロペラだけだと本体がクルクル回っちゃうんで、尾翼のところにちっちゃなプロペラが横向きについてるとこまではわかりました。でも、なんでまっすぐに水平方向に進むの?
加速するときは斜めになるって意見もありました。でも、映画とかで飛んでるの見ると水平状態が多いですよ。
最近はヘリコプターを見るたびにこの疑問を叫びたくなります。
「なんで水平に飛んでるんだーー!」
誰か納得のいく説明をしてください。よろしくお願いします。
A. kuDさんから
単純な回答で言ってしまうと、ヘリコプターは胴体は動かさずに、メインローターだけを、おじぎをするように前後左右に傾けることが出来ます。
遠くから、動いているヘリコプター全体を見てもわからないくらいの角度ですが、その程度でヘリコプターは巡航できるのです。
車に例えるとわかりやすいかも。
街中でストップ&ゴーを繰り返すときはアクセルを結構踏みますが、高速道路で安定して走る時はあんまりアクセル踏まなくても80キロや100キロで巡航できるのと一緒です。
ローターの角度変化も限度があり、加速時はそれだけでは前進する力が足りないので胴体そのものを傾けて、浮力の一部を推力として使用しています。
A. anonymousさんから
ヘリコプターには「サイクリック・コントロール」と呼ばれる技法があります。これは、回転翼(ローター)の刃の傾きを回転につれて周期的に変化させて、傾いた方向に機体を進ませる方式です。
上から見て反時計方向に回るローターの場合、ブレードが右側にきたとき傾きが最小になり、左側にきたとき最大になるようにすれば、そこに働く揚力も右側で最小、左側で最大になります。するとジャイロ現象によってローター回転面が前へ傾き、ヘリコプターも前進します。同様にして後進も横進もできるわけで、これを操縦桿の前後左右の動きによって行います。
A. Ereさんから
ヘリコプターは基本的にメインローターを傾けることで、揚力と推進力を得ます。
支えのない空中で、どのようにローター(機体)を傾けているかは、力学的な説明になるので割愛させてもらいます。
映画等でよく水平に飛んでいるという話ですが、実は、最近の(特に軍用の)ヘリコプターは機体に対してローターの軸は垂直に取り付けられているわけではなくやや前のめりについています。これは、前進時に空気抵抗を少なくするためです。つまり、機体が水平のとき、ローターはやや前に傾いているのです。
逆に映画等で、ヘリコプターが接地するとき、機体の下のそりが機体の後ろ側から先に接地するシーンをよく見るはずです。
これは、垂直降下の時はローターを水平にするため、逆に機体前方がやや上向きになるためです。
A. なぞなぞすき^^;さんから
そのままだと垂直に移動のみ……、確かに……。
「竹とんぼ」など水平に飛ばそうとすると、前傾姿勢にして回転させ離します。すると、後方への空気の流れと垂直方向とに分かれて、飛びます。
実機でも、戦闘ヘリなど機動性を要求するものは機体を前傾させて飛んでます。メインロータの回転モーメントを打ち消すために後部に小さいロータ(テールロータ、もしくはジェット)をつけてますが、これは推進にはあまり関係なく、方向転換のときには役立ちますね。
いちばん手っ取り早いのは、模型屋に行ってヘリの機体を見てくるのがいいと思うんですが、実は秘密はメインロータにあります。
これは単に回るだけでなく、回転角度が微妙に変化します。と同時に翼のひねり、ピッチも変ります。ロータ部分をみてみるとわかりますが、何やらパイプのようなものも一緒に回ってますね。これで翼の回転面に対し何度か上下します。これは前進のときに竹とんぼの翼が前傾するのと同じです。つまり、回転翼が前部にきたときは下げて、後方に回ったときは上げる動作をします。これで、前進できます。
ある速度で飛んでると、同じ回転速度では翼が右にきたときと左にきたときで、揚力が同じではうまく飛べません。回転速度を変えるわけにはいかないので、可変ピッチ機能がついています。つまり、進行方向と同じ向きに翼がくるときは相対速度が上がりますので、ピッチを小さく、反対側に翼がきたときは逆にピッチを大きくします。
このように速度と合わせ、一回転中に微妙に翼を変化させながらメインロータは回り、うまく飛べるわけです。単なる固定回転翼ではなく3次元的に動きながら回転しています。
余談ですが、ドラえもんの竹コプター、これでは回転モーメントを打ち消す機能がついてませんので、翼と反対方向に回ってしまうはずです。
そこで登場したのは、ダブルロータ! 回転方向を逆にして2枚の回転翼をつける、これだとあの小さいテールロータないしは横向きジェットは不要です。
また、回転方向はメーカによって左と右があるようです。翼の模様は回転を認識するためについています。
A. Picorinoさんから
ヘリコプターの上で回っているものは、英語では単に「ローター」ですが、日本語では「回転翼」といいます。つまり、回転している翼で揚力を得て、機体を上に持ち上げるということです。
回転翼が回ると、機体は逆方向に回されますから、それを打ち消すためにテイルローターが着いており、そのローターが発する力を操縦士が制御して方向を定めます。
回転翼が単に回転するだけなら、ヘリコプターには上向きの力だけしか発生せず、前後左右に移動することはできません。
ところが、回転翼は一枚一枚のブレード角度(空気流に対する角度)を自在に変化させることができます。一度、ローターの根本をじっくり見てください。そのための複雑な機構がついているのがわかります。
たとえば、機体の後ろ側にブレードが来たときは角度を大きく、前側に来たときは角度を小さくします。そうすると、後ろ側の揚力が大きくなりますから後ろが持ち上げられ、機体は前傾姿勢となります。前傾すると、機体の上向きに発生していた力は、地面に対して前向き成分を持つことになり、機体は前進します。
ヘリが前進加速をするときを観察してみてください。大きな前傾姿勢をとります。巡航状態では高速度であっても大きな前進力は必要ありません。つまり、空気抵抗に釣り合う前進力があれば速度は維持できるのです。したがって、巡航時の前傾姿勢はわずかなものとなります。
また、設計の段階で、これが考慮に入れられます。つまり、高速巡航を主目的として作られたヘリは、巡航時に機体が水平姿勢に近くなるように設計します。逆に低速での釣り上げ作業などを重視するへりは、高速を出すと抵抗が大きい形状になりがちですので、高速では前傾が深くなるはずです。
A. 的場部副部長的場さんから
まず基本的な原理について多くの方が誤解されていまして、ヘリコプターは決してプロペラで発生した風を地面に向けて吹き付けて飛び上がっているのではありません!!
では、どういった原理かといいますと、あのプロペラ1枚1枚が飛行機の翼と同じ「翼断面」を持っています。
飛行機はジェットなどの推進力を得て前に進み、翼に風を受けてこの翼の翼断面の上と下を流れる気流の「気圧差」を利用して浮力を発生して浮かび上がります。
飛行機の翼の翼断面は上側が下側より空気が撫でる距離が長くなっていて、翼が進んで風が当たると、下側より上側が速く空気が進まなくてはならず、結果的に気圧が下がり、上の方向へ吸い上げられるのです。
※流体(気体)中では気圧の低いほうに向かって物は吸い寄せられる。
では、ヘリコプターはどうかといいますと、プロペラを回転させると、風が翼断面に当たります。翼断面の上と下で気圧差が生じ、上に引っ張られます。そうして、浮かび上がります。
水平に移動しているようなヘリコプターも、実は、数度の角度で前傾していて、機体に対して上方向に引っ張られているので、前傾していると斜め方向に引っ張る力が働きます。
そのままですと斜め上に上がってしまいそうですが、重力に引っ張られるので、その兼ね合いをスロットルで調整しながら飛行すると前に進むことができます。
ちなみに、テールローター(後ろの小さいプロペラ)は、メインローター(主プロペラ)を回転させると、機体も一緒にグルグル反対方向の回転力が働き回ってしまうので、その力と反対方向にバランスよく逆推力をあててピタっと機体の回転を止めているのです。
このテールローターが故障すると機体はグルグルと回転してしまうのです(尾翼も抵抗の一つとしてスタビライザーの機能を持っていますので、即グルグルというわけではありませんが……)。
また、あのメインローターの翼は、1枚づつ角度が可変して動くようになっています。これにより、角度のコントロールも可能にしています。そうしないと、前傾姿勢になれないんですね。
A. かいちょさんから
以前、某ラジコンメーカーに勤めていた時に得た知識から……。
簡単に言うと、「機体は水平でも、メインローター(いわゆる大きい方のプロペラ)面は進行方向に傾いている」ので、前後進や横移動ができます。 以下に、理論的なことを書きます。
注1)名称は全て某メーカーで使われている名称です。実機の名称とはたぶん違います。
注2)あくまでも、「ラジコン」でのことです。ただし原理としてはなんら変わりありません。
ヘリコプターが飛行するときは、「メインブレード(大きい方のプロペラの羽根)」の角度の制御が「キモ」になります。
その説明の前に、構造を簡単に説明します。
・駆動系
エンジンからの出力を減速して「メインマスト(プロペラの軸)」を駆動します。「メインマスト」の先端に、「メインマスト」と直角に「スピンドルシャフト」があり、そこに「メインブレード」がある範囲の角度、回転できるように取り付けられています。
たとえると、竹とんぼの「羽根」の部分の角度を変えられるような構造です。
・制御系
操縦桿(実機の場合です)の動きをロッド類で「メインマスト」の「スワッシュプレート」(メインマストを軸とする円盤状のもので、下半分に操縦桿からのロッド類が付き、上半部に「メインブレード」へのロッド類が付きます。上下一体になっていますが、それぞれ自由に回転します)を経て、「メインブレード」に伝えます。
ここから実際の動きについて説明します。前提として、「メインブレード」が二枚で、機体を上から見て時計回りとします。
機体が「ホバリング」(空中で停止する事)から前進する場合。機体を上から見て「メインブレード」が機体中心線に対し直角にある瞬間を、機体の右から見るとして……。
操縦桿を前に倒すと、「スワッシュプレート」が前に傾きその動きから、手前に見えている「メインブレード」の(回転面に対する)仰角(ピッチと言います)が大きくなります(そうなる様に作られています)。すると、下向きに送る空気(風)が多くなり揚力が増大します。そのとき反対側の「メインブレード」のピッチは小さくなり揚力は減少しています。
ここまでの説明で「違うんじゃない?」と思われた方、構造や動きを(こんな文章で)よく理解してくださいました!
普通に考えると、このままでは(右側の揚力が大きいので)左に傾くのが当然ですが……、回転体には「ジャイロプリセッション」というものが働きます。「ジャイロプリセッション」とは、
「回転している物体の回転軸に横向きの力を加えたとき、その力の作用は回転方向に90度進んだ方向に現れる」
ことを言います。
たとえば、「こま」を時計方向に回して、軸を右から左に押したとします(上の動きの説明と同じ状態です)。すると「こま」は、左には傾かずに向こう側に倒れようとします。
このことから、前述の機体右側を押し上げようとする力は、回転方向に90度進んで機体の後側を押し上げようとする力として現れます。
結果、「メインローター」の面は前に傾き、揚力+前方向への力となり機体は前進します。
以上がヘリコプターの飛行原理についての説明です。このような説明で理解していただければ幸いです。
ちなみに、「尾翼のところにちっちゃなプロペラ(テールローターと言います)」ですが、「疑問」のなかにある通り「メインローター」の反トルクで機体が回転するのを防ぎ、また左右方向に機首を振るためにあります。
最近では、「テールローター」の代わりに機体後部から横方向にジェットエンジンの排気(ジェットエンジンのタービン軸からメインローターの動力を採っているもの)を噴出する機体もあります。地上作業員にとって、「テールローター」は結構危ないものらしいです。
「メインローター」が前後(稀に左右)にあるものはそれぞれを反回転させて反トルクを打ち消しています。
また、一本の「メインマスト」に上下二段に「メインローター」を取り付け、反回転させている機体もあります。
★麻生有美さん、ポポンさん、00000さん、Yoshihiroさん、洞窟ピングーさん、カズトのおとうちゃんさん、ジャズ大名さん、noridarさん、JH9IFGさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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