Q. どらエモンさんからの疑問
背筋が寒くなるようなときに「ゾッと……」。
さて、みなさんは、「……」のところを何て言いますか?
世の中には「ゾッとしない」という人もいるんですね。私はずうっと「ゾッとする」だと信じていましたし、語感も合っていると思うのですが、なんでまったく正反対の表現が共存しているんでしょうか。
よろしくお願いします。
★背筋が寒くなるときは、「ぞっとする」でしょうね。やっぱり。
広辞苑では「ぞっとする」「ぞっとしない」、両方の表現が出ています。しかし、意味は違います。みなさんの周囲での使用状況のご報告をお願いします。また、なぜ、まちがって使う人が出てくるのでしょうか?(星田)
A. 藍色狸さんから
以前から私も、同じ言葉についていろいろと理由を考えていました。自分なりに考えて引き出して来た答えは、次のものです。
「元々の表記は『ぞっとせむ』だったのであろう」
現代表記に意訳すると「ぞっとしてしまう」(「む」は意志・推測の表意)であり、簡単に表記すると「ぞっとせん」となります。この最後の「ん」が否定の「ん」と誤訳されたがために、『ぞっとせぬ』との誤表記に拠って、意訳すると「ぞっとしない」になったのでしょう。いかに日本人が「n」と「m」の発音を混同しているのかが推察されます。
同じような疑問が湧いてしまう言葉に「せわしい」「せわしない」がありますが、これについては今だ考え中です。
A. ポポンさんから
「震えが来た」という言葉を使うときを考えてみましょう。一つは、悪寒が走ったとき。もう一つは、感動・興奮したときです。
同じく、「ゾクゾクする」っていうのもありますね。背筋に走る震えは、良い意味にも悪い意味にも使われます。
ゾッとする・しないの「ゾッ」も同じで、背筋から全身に震えが走る状態を表します。つまり、「ゾッとする」のときの「ゾッ」は、悪寒の意味が強く、「ゾッとしない」のときの「ゾッ」は、感動しない・興奮しないという意味を表します。
そこから転じて「ピンとこない」とか「賛同しがたい」という意味にもなります。
よって、用法的にはどっちもマイナス的な表現ですね。
★『広辞苑』によりますと……
「ぞっと」……寒気・畏怖・恐怖などで瞬間的に心身が縮むような冷気を感ずるさま。「―立ちすくむ」
「ぞっとしない」……それほど感心したり面白いと思ったりするほどでもない。
(星田)
A. あんりU・ω・Uさんから
私も「ぞっとする」と使いますよ!!
ぞっとしないは使ったことないですが、使うとすれば、
「あそこのおばけ屋敷にいったけど、全然ぞっとせんかった〜(ぞっとしなか
った〜)」
という風に使うのではないでしょうか??
「食べる」の反対は「食べない」
「話す」 の反対は「話さない」
「聞く」 の反対は「聞かない」
「可愛い」の反対は「可愛くない」
「きれい」の反対は「きたない」
という風に日本語はだいたい、「〜ない」とすると反対の意味になるから、「ぞっとしない」のように間違えて使っている人がいるのではないでしょうか? 私の推測ですが……。
A. とんとんさんから
「背筋が寒くなる」「恐怖を感じる」というときは、「ぞっとする」ですね。
「ぞっとしない」などという言葉は聞いたこともありません。いったい、誰がそんなことをいっているのでしょうか?
広辞苑に載っているというので見てみましたが、意味の違うことで載っていました(私は知りませんでした)。
寒いとき・怖いときの「ぞっとする」は、「鳥肌が立つ」感じを表しています。鳥肌が立つのは、皮膚のすぐ下にある「立毛筋」という筋肉が、うぶ毛を立てようと緊張して皮膚が細かく盛り上がるからです。
さらに、なぜ寒かったり怖かったりするとうぶ毛を立てようとするのかというと、話は人類の過去にさかのぼります。
今の人類は「裸のサル」ですが、かつて体毛がたくさんあったとき、寒いときには体毛を立てれば、間に空気が含まれて断熱効果を持ち、体温が奪われるのを防げます。また、怖いときに体毛を立てるのは、体毛が立つと体が大きく見えて、敵に対する威嚇効果があるからです(猫が怒って毛を逆立てると、体やしっぽが大きく見えるのと同じですね)。
この「寒い→空気を含むために体毛を立てる」「敵が来た→体を大きく見せるために体毛を立てる」という神経回路が、うぶ毛になっても残っているのが「鳥肌が立つ」です。
結論。寒いとき・怖いときには「ぞっとする」というべき。この意味で「ぞっとしない」という人があるとすれば、単なる言い間違いか、知らないだけと思われます。
なぜこんな言い間違いをする人がいるのか、という理由まではわかりませんが、「流れに棹さす」を間違って使うように、意味を確かめることもなく言葉を使う人がいる、ということではないでしょうか。
★塩少々さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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