Q. keiさんからの疑問
プロ野球では、よくドラフト改革が話題になりますが、Jリーグはそのような話はありません。Jリーグでは、新人の取り合いとか、どうして問題にならないのでしょうか?
Jリーグはプロ野球と違って、たくさんチームができて、それも地方都市や、それも同じ地域に2つもチームがあったりして、それでどうして経営が成り立っているのでしょう? 不思議です。
A. アンギラスさんから
Jリーグの新人選手の獲得の詳細はよくわかりませんが、クラブの経営が成り立っているのはおぼろげながら解ります。
Jリーグのクラブの収入は、プロ野球と同じくスポンサー、入場料、テレビ放映権、グッズ販売などの事業があります。
この中でプロ野球と大きく違うのが「テレビ放映権料」です。
野球の場合はテレビ・ラジオの中継が行なわれた試合の「主催球団」の一人占めですが、Jリーグは放送した試合に関係なくJリーグが一括して受け取り、各クラブへ分配しています。また分配金には、特定のクラブのスポンサーではなくJリーグ全体のスポンサーからの収入も含まれています。
支出面では。選手の年俸が全体的に低いことと、各クラブの選手の人数がすくないことがあげられます。
新人選手の年俸は一般的な会社の新入社員の月給ととあまり変わりありませんし、ごく一部の選手を除きかなりのベテランでも2〜3千万円以下です(金額は推定です)。
プロ野球の場合「プロ」として一球団70人以上を保有していますが、Jリーグは「プロ」として契約しているのは30人くらいです。
スポンサーからの資金力が弱く、入場者数の少ないクラブは、人員・年俸などを考慮して、身の丈に合ったチーム構成にならざるを得ません。
それでも赤字が出た場合スポンサーに補填していただくか「有望新人の放出による移籍金収入」「高額年俸者の解雇による支出削減」が行なわれることもあります。
それでも経営できなかった場合は、かつての横浜フリューゲルスのように吸収合併されてしまうわけです。
とはいっても、黒字を出しているクラブはあまり多くはなく、どこのクラブも経営的には苦しいようです。
A. ひいろさんから
新人獲得方法ですが、Jリーグでは2種類に分かれます。1つは、自分の下部組織で成長した選手とプロ契約をする方法、もう1つは、通常高校や大学の選手と直接プロ契約をする方法です。
下部組織というのは、Jリーグに加盟するための条件ともなっていて、ヨーロッパや南米のサッカークラブでは当たり前のものです。
つまり、小学生の頃から地元の有望な子どもたちを育ててプロに送り出す組織で、ジュニアユースやユースというのを聞いたことがあると思いますが、それはこの下部組織のことです。
たとえば、今日本代表で活躍している宮本選手や稲本選手はガンバのユース出身ですし、最年少記録を更新しているヴェルディの森本選手も小学校の頃から下部組織でもまれていました。
もう1つの高校生や大学生と直接契約する方法は当然自由競争になりますが、基本的にチーム間でもめることもありません。それはチームと選手の考え方が他のスポーツと全然違うからです。
選手の当面の目的はリーグ優勝ですが、最終的な目標は、日本代表に選出されてワールドカップで勝つことです。そのためにはまず所属チームでレギュラーになって活躍しないと代表に選出されません。
そのため選手は特定のチームに固執することなく、出場機会を求めて移籍することになんの抵抗もためらいもありません。
今のチームでリーグ優勝を目指すことも大事ですが、代表に選ばれないと意味がないのです。
期限付き移籍、いわゆるレンタル移籍や移籍金などの制度もあって、チーム間での選手の移動は普通に行われています。
またチームが金にものをいわせていい選手を集めたとしても、そのチームが必ず強くなるとはかぎらないですし、出場機会がすくない選手はチームを去ることもありえるので、特定のチームがずばぬけて強くなることもありません。この典型的なチームが、最近のレアル・マドリードですね。
また、選手は世界中にいるので、新人が取れなくても、チーム力が極端に不均衡になることもありません。
また、クラブチームの経営ですが、これは昨年のプロ野球のドタバタで、野球とサッカーの違いとしてクローズアップされました
まずリーグの成り立ちが全然違います。
プロ野球はまずチームができて、それが複数集まってリーグが誕生しました。そのためリーグよりもチームの力が強いので、総論賛成・各論反対に陥りやすい体質です。
しかしJリーグは、最初にリーグ組織を立ち上げて、行動指針や目標となる理念をまず決めました。そしてその理念に賛成して、プロとしてやっていける条件を満たしたチームがリーグに参加申請をするという形を取りました。そのためリーグが繁栄するのがまず第一という体質が生まれました。
その結果、リーグというのもがチームを統率する立場として、大きな権限を持つことになりました。
その1つにテレビ放映権料の一括管理があります。
これはテレビ局での放送権をリーグが一括して販売し、Jリーグ加盟の全チームで均等分配する仕組みです。これによりチームは、大小に関わらず、一定量の収入が保証されます。
また、チームスポンサーという制度も野球などに比べて、広く行われています。簡単にいうと、ユニフォームの胸や背中のロゴに自社名を入れる権利がチームスポンサーですね。このような制度で最低限度の収入を得られることになっています。
これから先は各チームの経営努力次第ですが、基本的には身の丈運営というものになります。
一応全てのチームがリーグ優勝を狙いますが、常に優勝を至上命令として有力選手を多く集めるトップチームと、若手を育てることを念頭において、年俸の安い選手でがんばるそれ以外のチームに分かれています。自分の経営状況を考えずに、プロ野球のように赤字を垂れ流すようなチームはありません。
ここにはかつてフリューゲルスが消滅した時のJリーグバブル崩壊の教訓も生かされていると思います。
また先ほど出た理念の中に、地域密着というものがあります。
早い話、「おらが街のチーム」というものを目指そうということです。チームは自分のいる街から選手を発掘し、育て、活躍し、ヒーローが生まれることで人々はまた地元のチームを応援するようになる。こうして人々は地元のチームを盛り上げ、応援するという気風が生まれます。その結果、同じ県に複数のチームがあっても、お互いが潰し合うこともないわけです。
また、同じスタジアムを本拠地とするチームもありますが、チームカラーが全然違うのでそれぞれ自分にあったチームを応援することで、両立しえるのです。
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