Q. Matthewさんからの疑問
★雑木話★第三十八段「ダブルの悲劇」に関連しての疑問です。
「W」は「double
U(ダブル ユー)」ですが、「double V」じゃないのはなぜでしょう?
視覚的には大文字、小文字共にV(v)が妥当と思うのですが……。筆記体ならばU(u)なのかも。
★確かに筆記体のような形ならUUに見えますね。(星田)
A. けんさんから
むかし、アルファベットのUとVの使い方の区別があまり明確にできていませんでした。ある程度のきまりとしては、石碑というか記念碑的なものには、UではなくVを使ういう決まりがあったらしいです。
宝石や時計のブランドのBVLGARIもUでなくVなのは、その時代から使われてきてそのまま商号なってしまったのでしょう。
よって、こんな時代にWができてしまったで、これを「ダブルU」と読むようになってしまったようです。
ちなみに、ドイツ語ではWは「ダブルV」と発音しますよ。
A. jacopoさんから
「w」は、フランス語ではおっしゃるとおり「ヴェ」が二つ、「ダブルヴェ」です。
こんな疑問のすべての答えは、英語という言語が、ラテン語を起源とするドイツ語、フランス語、その他多数の言語よりさらに辺境の方言にすぎなかったという解で求められます。
A. ミネルワのふくろうさんから
そもそも、まず子音と母音の定義について。
どんな発音も、口から息を出して発音します。その際に呼気の流れを途中で邪魔して発音するものとそうでないものを区別して、前者を「子音」、後者を「母音」と呼びます。
子音と母音の違いは、呼気の流れを邪魔するか邪魔しないかということですが、これは「聞こえやすいか聞こえにくいか」ということに置き換えることができます。
子音は呼気の流れを邪魔するので聞こえにくい音です。母音は邪魔しないので聞こえやすい音です(人を呼ぶとき「おーい!」と母音で呼ぶ人はいても、子音で呼ぶ人はいません)。
つまり、子音と母音の差は、聞こえやすいか聞こえにくいかの差ともいえます。英語で母音を“vowel”といい、これは“voice”“vocal”と同じ語源です。
同じく子音は“consonant”で、もともと「音(=母音)と一緒にあるもの」の意です。
しかしこの区別は、境界が非常に曖昧なものです。
「明らかにこれは母音だろう」というものもあれば、「どちらかと言うなら、母音かな」というものもあります。
「子音であることは間違いない」というものあり、一方で「分類するなら子音」というものもあります。
この境界線の近くにいる母音が、iとuです。すなわちiとuは、これ以上邪魔したら母音ではなく子音になるところまで邪魔します。
そしてときに、一線を越えて子音になることもあるのです。iが子音になるとyになります。uが子音になるとwになります。
現に、古代、「ヤ」は“IA”、「ワ」は“UA”と書き表していました。しかし、このままでは、UAは「ワ」なのか「ウア」なのか区別できません。
そこで、子音のほうはUを変形させた“V”という文字で表すことにしました。ラテン語で“V”はwで発音します。「ミネルワ」は、知恵の女神Minervaのラテン語読みです。
やがて時代がたつにつれて、vの発音が変化したため、新たにvの字を二つつなげた文字を作りました。
これが、wをvvつまり「ダブルユー」と読む理由です。
A. いんべひろしさんから
これは、ラテンアルファベット(いわゆるローマ字。アルファベットは他にも何種類もあるので、以下こう呼びます)の成立事情にかかわっています。
ラテンアルファベットはよく26文字(言語によって、2字組み合わさったものを1字として数えたり、符号がついたものを別に1字と勘定したりしますが)と言われますが、ラテンアルファベットの成立時に26文字あったわけではなく、いくつかは後から生まれています。
最初のラテンアルファベットではUとVとWも区別はありませんでした。というか、全部これはVだったのです。
しかし、ラテンアルファベットがどんどん広まるにつれて、ラテン語を使わない民族も使うようになりました。そうなってくるともともとラテン語を表記するための文字であるラテンアルファベットでは表記しきれない音が出てきます。その一つが「W」の音。ゲルマン語系の言語(ドイツ語、英語、オランダ語など)ではよく出てくる音ですが、対応する文字がない――というわけで、Vを二つ重ねた「W」と言う文字を作成したと言うわけです。
なぜ、「ダブルブイ」見たいな形なのに「ダブリュー」なのかと言うと、その昔は今のUをVと言う形に書いていたからだ。だから「W」で「ダブリュー」でも問題ない、と言うことになります。
もっとも、ラテン語系の言語のアルファベットでも「W」という文字はあります。でも、この文字はゲルマン語系の言語の表記のために作成された文字ですので、「逆輸入」された感じになっています。
この文字がラテン語系の言語で使うラテンアルファベットに組み込まれたのは、すでにUとVを書き分けるようになってからなので、これらの国のアルファベットではフランス語で「ドゥブルヴェ」、スペイン語で「ベードーブレ」(スペイン語ではVもB同様の発音)、イタリア語で「ドビオヴー」というように「ふたつのV」と言うような呼び名になっています。
なお、これらの国では「W」は外来語(特にゲルマン語系)の表記にのみ使用されます。
★ポポンさん、Yoshyさん、トロントの雑草さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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