--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.460(2005.08.09)

Q. ひらいさんからの疑問

 私はパソコンで文字を打つときには、ローマ字で入力しています。
 ローマ字で入力するか、かな入力するか、どちらが優れているからよく議論がありますが、今回の疑問は、キーボードの文字の配列です。

 アルファベットにしても、かなにしても、あの配列は何なのでしょうか?
もう指が覚えてしまったので、苦労はありませんが、もしかしたら、もっと能率的な配列があるのではないかと考えてしまいます。
 こんな配列になった経緯を、特にかなの配列がこのようになった経緯を知りたいと思います。
 

これは、詳しい人がたくさん居るかもしれませんね。
 特に「かなの配列」について、お願いします。(星田)


A. torosanさんから

 かなのキーボード配列についてはわかりませんけど、アルファベットの場合は、速く打ちすぎないため、と聞いたことがあります。
 タイプライターが全盛の頃、熟練者が打つとあまりの入力スピードに、タイプライターの活字(?)が絡まってしまっていた、といいます。それで、あえて、スピードが出ないように、ランダムなキー配置にした、とか。
 ちなみに、昔、私が持っていた日本語ワープロは、50音順配列でした。

A. Picorinoさんから

『世界ウソ読本』によれば、アルファベット配列はアメリカのクリストファー・レイサム・ショールズのタイプライターから始まりました。当初はABC順でした。
 しかし、この配列では速く打つとキーが絡まるのです。それを解決したのは彼の義兄です。売り文句は、「指の動きを最小限にした、最も速くキーが打てる配列」。後に科学的に最良配列が考えられましたが普及しませんでした。
――ということだそうです。

A. 安岡孝一さんから

 アルファベットの方のキー配列は、1872年にChristopher Latham Sholes という人がタイプライター用に考案したものですが、初期段階では以下のようなキー配列だったと考えられています。

 AEI  YUO 
BCDFGHJKLM
 ZXWVTSRQPN

 すなわち、アルファベットをMとNの間で折り返して中段と下段に配置し、そこからAEIOUYの母音を取り出して上段に配置したものです。
 ただし、Sholesは、タイプライターのキーを目で探して打つことを想定していたので、これでは子音の中で最も高頻度のTが下段にあって探しにくいですし、連続して打たれる確率の高いEとRが離れている、という問題点があります。
 そこでこれらの文字を上段に移していって、現在の配列になったという説が有力です。
 ちなみに「印字棒がからまないようにして、タイプライターの故障を防いだ」という説は、August Dvorakという人が1930年代に新しいキー配列を考案した際に、既存のキー配列を攻撃するために言い出したもので、実は根拠がありません。
また「タイピングスピードを遅くするため」という説は、Robert Parkinsonという人が1972年に唱えはじめたものですが、彼の論文を読む限り、19世紀のタイプライターの印字機構と20世紀の機械式タイプライターの印字機構を混同しており、眉唾と言わざるを得ません。

 カナの方のキー配列は、1923年に山下芳太郎とBurnham Coos Stickneyという人たちがカナタイプライターのために考案したもので、元々は真ん中から左に向かって、「カキクケコ」「サシスセソ」「タチツテト」がそれぞれ集まってたり、上の方に「アイウエオ」が集まってたりと、五十音が探しやすいように配置されていました。
 ところが、1950年代になってカナとアルファベットが両方使えるタイプライターを作った際に、アルファベットの並べ方を優先したので、カナの方はそれまでのわかりやすい並べ方を崩さざるをえなくなり、それが現在に至っているわけです。

 詳しくは、私の
http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~yasuoka/publications.html で

・『QWERTY配列再考』(情報管理, Vol.48, No.2 (2005年5月), pp.115-118)
・『キー配列の規格制定史 アメリカ編―ANSIキー配列の制定に至るまで』
  (システム/制御/情報, Vol.48, No.2 (2004年2月), pp.39-44)
・『キー配列の規格制定史 日本編―JISキー配列の制定に至るまで』
  (システム/制御/情報, Vol.47, No.12 (2003年12月), pp.559-564)

などの論文を公開していますので、合わせてお読みください。

punyonpenさん、Jun Penskeさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。