Q. アンギラスさんからの疑問
昆虫の卵から成虫になるまでの過程は、なぜ、2種類あるのでしょう?
チョウやガ、甲虫類は卵からイモムシとさなぎの2形態を経て成虫になりますが、スズムシやカマキリやゴキブリなどは卵から孵ったときから、サイズが小さく羽根が短いなど若干の違いはあるものの、ほぼ成虫と同じ形態です。
完全変態と不完全変態があるのは知っていますが、なぜこのような2種の成長過程ができたんだろう?
進化の過程の違い? 地球上に現れた時の環境の違い? 大きな疑問の解決、よろしくお願いします。
★この疑問を突き詰めると、昆虫にとって、蛹になる意味は何?――ということになりますね。ちなみに、セミやトンボは、不完全変態の方に分類されています。(星田)
A. Pすけさんから
昆虫は、次のように進化してきたと考えられています。
1 無変態(一生孵化したときと同じ形ですごす:シミの仲間)
2 不完全変態(さなぎを作らず、幼虫は羽等の点を除きほぼ成虫と同じ形:バッタの仲間など)
3 完全変態(幼虫と成虫の形が著しく違い、間にさなぎの時期を挟む:チョウの仲間など)
特に2と3のグループの間には成長の過程で非常に大きな違いがあるように見えます。ならば、この2つのグループを繋ぐものは何なのでしょうか。
3の完全変態を行なう昆虫の幼虫はどれも、成虫とは似ても似つかないいわゆる芋虫(またはウジ)型をしています。実はこの芋虫型というのが、昆虫の成長の仕方を説明する重要な鍵となるのです。
一方、2の不完全変態を行う昆虫は、この芋虫型の時期はありません。いや、本当は不完全変態を行う昆虫にも芋虫型の時期は存在するのです。しかし、その時期は卵の中で終了してしまうので人目にはつかないだけなのです。
つまり、完全変態を行う昆虫達は、完全に昆虫としての体が出来上がる前に成長過程の途中のまま卵から孵化し、まず、何はさておき貪欲にえさを食べて急激に成長するのです。そして十分成長した後、成虫になる直前にさなぎを作り、体のつくりを芋虫型から昆虫らしい形へ大幅に変化させます。不完全変態の昆虫が、卵の中で終了してしまう最終段階をさなぎの中で行い、ここでやっと羽化するというわけなのです。
完全変態を行なう昆虫の芋虫型幼虫というのは、成虫になる前にできるだけ多くの栄養を取り入れ(不完全変態を行なう昆虫では卵の中に貯えられている栄養だけでこの時期をやり過ごしている)、より大きくより複雑な体を作ろうとする、進化の過程における大きな進歩と言えるでしょう。
A. Takanoさんから
まず、幼虫と成虫は根本的に役割が異なります。
幼虫は大量の餌を食べ、成虫になることが目的ですが、成虫は異性を見つけ子孫を残すことが目的となります。
幼虫時代に食べる食物は基本的に栄養価が低く、したがって大量に食べなくてはいけません。そのため体は重くなり、あまり移動しなくなります、昆虫は母親が食物の近くに卵を産んでくれるため、食物を探す必要がなく、移動力が低くても大きな問題にはなりません。
しかし、成虫となると異性を探すための移動力が必要となります。移動力を得る手段として羽を昆虫は持つようになりました。そして、食物も蜜のように栄養価が高く、消化に良い物へと変化していきます。口器の変化は、幼虫と成虫の食物を変えることにより、互いの競合を防ぐためという理由もあります。
食べる物が変わるのですから、当然口器も変わります。カブトムシや、チョウを見てもらえば一目瞭然でしょう。
要するに幼虫と成虫はお互いの役割を分担し、互いの成すべきことに集中することにより効率を良くしているのです。そのために蛹へと変化し、体を作り変えているのです。
完全変態、不完全変態を比べると、完全変態の方が生物的に進化しているとも言えます。しかし、羽を得た後退化してしまって翅を失った昆虫も居ます。厳しい生存競争を生き残るため生物は様々な例外を産み出し、生き残りに挑戦しています。今生き残り、我々の目の前にいるということ自体が、生存競争に勝ち残ってきた証でありそれに優劣はありません。
生物の世界はとても奥深く面白いものだと常々思います。
|