Q. アンギラスさんからの疑問
夜にラジオをチューニングしていると、昼間には聞こえなかった中国語やハングルの放送が聞こえたりします。
また、番組内でも、
「夜になると、###(この放送局)が聞こえます」
とかなり遠方のリスナーからの葉書などが紹介されています。これは、深夜ラジオ族向けに電波の出力を夜だけ上げているんでしょうか?
あるいは大気圏の電離層が昼と夜では変化が起こり、電波を遠くまで伝えやすくなるのでしょうか?
★夜間だけ出力を上げるなんてことをしてるとは思えないので、きっと、夜になると、何かが違うのでしょうね。(星田)
A. knさんから
一般のラジオの電波は中波が使われていますが、夜になると中波を吸収する電離層がなくなってしまい、その上の電離層に反射されて遠くまで届くのだそうです。
電離層は地球を取り巻くイオンと電子の層で何種類かに分かれているはずです。
A. ユウさんから
たぶん、たくさんの方から返答があると思いますが、これは、電離層の仕業です。電離層は、地上の低い方から、D層、E層、F層と別れていて、中波のラジオ放送の周波数では、E層で反射します。逆にD層では吸収されます。
電離層は、太陽に関係が深く、特にD層は、日中に活発となり、夜には消えてしまいます。というわけで、中波のラジオ放送の電波は、日中は、D層に吸収されて近くしか聞こえませんが、夜間は、D層がなくなるため、E層で反射して遠くまで届くということになります。
無線工学で習ったことで、電離層も電波も実際に見たことがないので、そうだろうとしか言えませんが……。また、どこかの外国の放送局で、夜中になると出力をあげている局もあるとか!?
A. とんとんさんから
大気圏は地表から順に「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」があり、これらは、対流の仕方や、温度変化などで区別するようです。
中間圏から熱圏のあたりの大気は、別の分け方で「電離圏」と呼ばれ、太陽からの紫外線によって空気の一部が電離してイオンや電子がバラバラになっています。これらの電子などが電波を吸収したり反射したりします。
電離層はさらに細かく下から順にD層、E層、F層と分けられます。D層は電子の密度が低く、電波(ラジオ放送に使われる中波)を吸収するはたらきがあります。E層、F層は電子の密度がD層より大きく、電波を反射するはたらきがあります。
D層は太陽光のある昼間に発達し、夜にはほとんどなくなります。そこで昼にはD層で吸収される電波が、夜にはE層、F層まで届くことになります。
E層やF層は、夜になってもD層ほどは減らないので、夜になって地上からやってくる電波を反射します。
このようにして、夜は電波が大気圏上層部で反射されるので、遠くのラジオが聞こえやすくなります。
なお、短波放送は、短波がD層を通り抜けるので、昼夜に関係なく遠くまで届きます。このため、海外放送が短波で行なわれています。
FM放送は、短波よりさらに短い波長の電波を使っており、D層だけでなくE層、F層も通り抜けてしまい、反射されないので、これまた遠くまでは届きません。
A. YOSHYさんから
ラジオ局の電波は、電離層の中のE層で反射されるため、遠くでも聞こえるわけです。ただ、昼間は太陽からの宇宙線が降り注ぐため、その下にD層ができるのですが、それが中波の電波を吸収するためE層に届かず、遠くまで伝わりません。
夜中に遠くの放送局が聞こえる科学的根拠は以上です。
ただ、国家がPRのために日本語放送をすることがあり、それはそのときしか放送されないので、多くの場合、夜だけで聞こえるのしょうね。
また、NHKの海外向け放送は、対象国(たとえば南米)に向けての放送のときには、電波に強い指向性を持たせて発射するため、たとえずっと放送されていても、自分の方向に向けて発信されてなければ、聞こえにくいですね。
A. みーさんから
投稿者の方がおっしゃる通り、昼と夜とでは電離層が変化するので電波の伝達が違います。
昼間は太陽からの宇宙線にさらされるため、電離層D層があります。上空に飛んだ電波はD層でラジオで使われている短波は突き抜け、中波は吸収されます。
しかし、夜間は地表が太陽と反対の方向に向くため、太陽からの宇宙線が減少して電離層D層が消滅します。そうするともうひとつ上空にある電離層E層が現れるのですが、E層は電波を反射します。ですので、短波はより高い上空で反射され、中波は昼と違って反射するため、夜間では遠くまで届きます。
テレビで使われている電波の周波数は電離層を突き抜けて行きますので、この現象は起こりません。
初夏頃にときどき電離層の一部の密度が上がる『Eスポ』が起きると、とてつもなく遠いところからの電波が届きます。Eスポにより、日本海側は中国や韓国の電波の混信が起きるんで大変なんですよ。
A. 松山 巌さんから
質問をされた方が、
》 あるいは大気圏の電離層が昼と夜では変化が起こり、電波を遠くまで伝え
》やすくなるのでしょうか?
と書いておられますが、それで正解です。
実は,以前『理科がもっと面白くなる科学小話Q&A100 中学校2分野編』(明治図書)という本の中で、この質問を取り上げたことがありますので、以下に紹介します。
「中学生に朗読して聞かせても通じるように」という注文だったので、なるべく分かりやすく説明したつもりですが、いかがでしょうか。
ちなみに、この本の『小学校高学年編』には星田さんも執筆されていますね。
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31 夜になると遠くのラジオも聞こえるのはなぜ? 松山 巌
ラジオの選局(チューニング)ダイアルを回すと、いくつかの放送が聞こえてきます。ところで、昼と夜とで比べてみると、聞こえる放送局の数が違うことに気付いた人はいませんか。ただしAM放送だけです。
たとえば、東京で聞いていると、昼間は首都圏にある放送局しか聞こえませんが、夕方ごろからだんだんと遠くの放送も聞こえてきて、夜になると北海道や大阪や福岡、はては韓国や中国・ロシアの放送まで入ります。ただ雑音が多かったり、音量が波のように大きくなったり小さくなったりして、近くの放送に比べると聞きづらいのですが…。
これは上空にある「電離層」という、電波を反射する層のいたずらです。
大気は窒素や酸素など、いろいろな種類の気体が混ざってできていますが、上空の大気は太陽からの強い紫外線を受けて一部がイオン(電気を帯びた分子・原子)になっています。この紫外線は、電離層を作って弱まったり成層圏にあるオゾン層でかなり吸収されたりするので、地上にはあまり届きません。
電離層は、地上からの高さがおおよそ60〜300kmのあたりにあり、下のほうから4つに分けてD層、E層、F1層、F2層と名前が付いています。
電波は波長の長さで分類されており、いわゆるAM放送は中波という種類の電波を使っています。送信所のアンテナから送り出された中波は、四方八方に広がっていきますが、そのうち上に向かったものはD層で吸収されてしまいます。したがって、地上でラジオを聞いている私たちは、送信所から下に向けて直接送られてきた「直接波」を受信しないと放送が聞こえません。
ところが、夜になると太陽からの紫外線が届かないので、イオンの数がぐんと少なくなり、特にD層はほとんど消えてしまいます。そして、中波の電波はもっと上空のE層まで届きます。E層は中波を吸収せずに反射します。もっとも、E層も夜は弱まっているのですが、下のD層がないので、それなりに電波を広範囲に伝える役目を果たします。
中波より波長が短い短波という電波を用いた放送もあります。短波は、上空のE層だけでなく地表でもよく反射するので、上空と地表とを往復しながら、かなり遠くまで(条件がよければ地球の裏側まで)伝わります。このため、昔から短波放送は外国向けのラジオ放送に用いられてきました。
もっと波長が短い極超短波は、FMラジオやテレビ放送に用いられていますが、これらは電離層を突き抜けてしまうので、直接波でないと受信できません。したがって、東京にいて大阪のFM放送を受信することはできません。ただし、突発的にE層のイオンが多くなるスポラディックE層が発生すると、短時間ながらよその地域のFMなどが混信することがあります。
こんど夜、遠くのラジオ放送に耳をすませてみましょう。雑音の多い放送の中に、はるか上空の自然の変化が感じられるかもしれません。
(補足)
◆AM・FMという語は変調の方式を示しており、電離層の反射特性とは無関係(関係あるのは波長/周波数)なので、本来なら「中波ラジオ放送」「超短波ラジオ放送」などというべきであろうが、ラジオのバンドセレクタにはたいていAM・FMと記されているので、便宜上それに従った。(短波の受信できるラジオでは、短波=SWとの対比で中波=MWと記されていることも多い)
◆鉄筋の建物では電波が入りにくいので、遠地放送を聞く時は窓際や屋外で受信するとよい。
★ksさん、ごんたさん、異邦人さん、きくちゃん、JH9IFGさん、ゴッドハンターさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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