Q. ほおーっさんからの疑問
ひらがなの「お」と「を」の発音は同じですか? 違いますか?
今まで「同じ」と信じて疑ったことがなかったのですが、この二つを[o]と[wuo](正確な発音記載が難しい)と区別して発音するという人がいるらしいのです。
まさかと思いながら何人かに尋ねましたら、それに同意する人もいるではありませんか。
自分の日本語に自信がなくなってきました。本当のことを教えてください。
★表記が違う以上、もともとは違っていたのでしょうね。きっと。
この疑問はきっと「素朴」ではないと思うのですが、挑戦の意味も込めて掲載します。回答をお待ちします。(星田)
A. ぷ〜さんから
「お」というときは普通に「お」、「を」というときは極端にいうと「うぉ」って感じで、私は発音しています。
ちょっと説明があやふやですが……。
A. ALLIEさんから
私は愛媛県に住んでいます。
普通に会話するぶんには区別はしませんが、「これを発音してください」といわれて、「お」と「を」を示されたら、区別して発音します。
「お→お」「を→うぉ(woh)」
こんな感じです。
国語の先生が言うには、愛媛は田舎だったから、「お」と「を」の区別が現代まで残っているのではないかということらしいです(昔は「ゐ」と「い」・「ゑ」と「え」も厳格に 区別があったらしいです)。
私も、区別のない人たちがいると知ったときに、すごく驚いたのを覚えています!
A. 西毒さんから
》表記が違う以上、もともとは違っていたのでしょうね。
↑この一言につきると思います。
「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」は、「四つがな」と呼ばれるくらい有名な問題です。また、文中の「〜が」の「が」も鼻濁音の「nga」と発音の仕方を区別していたように、古代の日本語の方が音の数は多かったのでしょうね。
A. くろちゃんから
「お」と「を」は違いますね。ローマ字入力するときも「O」と「Wo」です。
五十音順で言えば「を」は、ワ行になります。ワ行にはこのほか「ゐ」と「ゑ」があります。それぞれローマ字入力では「Wi」と「We」になります。
つまり、「わゐうゑを」は、「W」が子音なんですね。ところが現代国語では、なぜか「わ、うぃ、う、うぇ、うぉ」としてしまいました。「ウィンター」や「ウェスト」「ウォーク」などほとんどは外来語表記に使われています。
なお、外来語のうち、日本の発音になかった「V」には、「ヴァ、ヴィ、ヴ、ヴェ、ヴォ」という表記があります。現代表記では全て「バビブベボ」です。「ヴァイオリン(バイオリン)」とか「ヴィーナス(ビーナス)」とか。
A. TOBYさんから
これは完全に違う音です。おそらく、日本語を母語とする人の多くは、意識しないまでも、「お」と「を」を発音し分けているのだろうと思います。
しかし、それを明確に実感しようとなると、実際に、文章を口に出して読みながら音を確認した方がわかるのではないかと思います。試しに以下の文章を大きく口を動かしながら読んでみてください。
「おーばあちゃん、おーきなおーいもをーおーくってくれてありがとー」
いも「を」「お」くってくれての部分、自然と違う音を出してはいませんか? もしわかりにくかったら、文章を覚えて、鏡を見ながらやってみてください。
「お」のときには、口は大きく縦長に丸くあけていると思います。「を」のときは、「お」よりも唇をすぼめ、歯に唇をかぶせている感じになっているのではないでしょうか?
あるいは「うー」「おー」のふたつの音を繰り返し発音してみてください。次にそのふたつの音の中間の形になるように唇を調整すると「を」の音に近くなると思います(これも鏡を見ながらだとわかりやすいと思います)。
ちなみに私はずっと「を」をローマ字表記する場合は「wo」となるのだと信じて来たのですが、国際標準表を改めて確認すると「o」なのですね(woも許されるという方式もあるようですが)。パソコンのローマ字入力で「wo」なのは、文字変換の煩雑さを回避するためなのでしょう。
A. 舞武さんから
おそらく、区別している人はいると思います。というのも、「お」と「を」以外で、使い分けている方がいるからです。
日本語は13個の子音と5つの母音の組み合わせだけで、全ての文字を発音できる、とてもシンプルな構造です。ただ、それはあくまで文字の表記上の話。地方では、もうちょっと細かい使い分けをしているようです。
たとえば、東北地方の方言では、濁音と鼻濁音を使い分けているそうです。 ガラスの「ガ」と、ナガノの「ガ」を口に出して言ってみてください。ナガノの「ガ」は、「ン」と「ガ」を足し合わせたような発音になると思います。これが鼻濁音です。
西の方だと、この鼻濁音は今ではあまり使っていないらしいので、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、NHKのアナウンサーなんかは、ちゃんと使い分けられるように訓練するとか(視聴者からクレームが来るそうです)。
余談ですが、江戸っ子は「ひ」と「し」の区別がつかないなんて言いますね。他にも、和歌山近辺だと「ざ行」と「だ行」の区別がつかないとか。意外に、自分も区別がついているようで実はついていない発音があるかもしれません。
A. Issieさんから
問題の「お」と「を」の区別ですが,私は以下のように考えます。
すくなくとも「共通語」においては、「お」と「を」の区別はなくなっている――と考えます。
今問題になっているのは、実際に現在でも「を」と表記する「助詞の“を”」だけについてであるように思うのですが、かつて(旧仮名づかい、または歴史的仮名づかい)で「を」と表記するものはもっとたくさんありましたよね。
一方で、旧仮名づかいでも「お」と表記するもの、あるいは「ほ」と表記するがその後の変化で「お」と発音するようになったものもあります。
この「を」と、「お」または「ほ」を今、発音し分けていますか?
たとえば、
「をぢ(伯父/叔父/小父)さん」と「おじい(爺)さん」
「うを(魚)」と「かほ(顔)」
「はなを(鼻緒)」と「ほのほ(炎)」
「かをり(香り)」と「はおり(羽織)」
これらを今でも発音し分けていれば、「お」と「を」の区別はあると言えるだろうと思いますが、実際はどうでしょうか?
あるいは、発音だけで旧仮名づかい(歴史的仮名づかい)の「お/ほ」と「を」を“正しく”書き分けることができますか?
過去の表記で書き分けていたというのは、つまりその表記法が確立した頃には区別されていたことを意味します。
けれども今、これらを“正しく”発音し分けることも、書き分けることもできなければ、現代日本語において「お」と「を」の区別は既に失われている、と考えるべきです。
現代仮名づかいにおいて「助詞の“を”」についてのみ「を」という表記が残されたのは、本来、発音上の区別が意識されたのではなくて、文法上特別な役割を持つ「を」という単語を、他の一般の「お」と取り立てて区別することが目的です。
具体的には「助詞の“を”」だけが「を」と表記されるために、分かち書きをしなくてもそこが文節末であることがわかります。これを「お」と表記したらかなり混乱しそうですね(ただし、これはある程度は“慣れ”の問題であって、ずっとそのように表記していれば、やがて違和感はなくなります)。「わ」や「え」と発音するのに、「は」「へ」の表記が残された他の助詞の場合も同様です。
繰り返しになりますが、現代仮名づかいでは、これは本来は発音によるものではなくて文法を意識した例外措置です。
文法上で特別な役割をする単語に特別な表記を行うことは、他の言語にもしばしば見られますね(イタリア語の
e の書き分けなど)。これはあくまでも“表記上のお約束”であって、どう発音するかということと直接は関係ありません。
にもかかわらず、「お」と「を」を区別しなければならないように感じ、実際に少なからぬ人が区別をし、あるいは区別をするように教育されているのは、「を」という表記に引きづられた“後付の理屈”であると考えます。
本来、無意識では区別していないにもかかわらず、かえって区別しているように意識してしまう。
けれども、最初に戻りますが、本来「を」という音を持っていたのは「助詞の“を”」だけではありません。それ以外の、現代仮名づかいでは「お」と表記する元々は「を」であったものについても体系的に「お」と区別していなければ、区別ができなければ、「お」と「を」の区別があるとは言うことはできないと思います。
余談ながら、上の例に挙げたように「香り」は旧仮名づかいでは「かをり」と表記しました。小椋佳の歌が一般化に大きく貢献した「かほり」という表記は本来“誤り”です。にもかかわらず、この“間違った表記”が旧表記と誤解されているところも、現代語において「を」と「お/ほ」の区別が失われている証拠であるように思います。
★YOSHYさん、麻生有美さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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