--- 素朴な疑問集 ---
トップページへ    [素朴な疑問集 TOP]


疑問No.562 (2006.11.18)

Q. 近江八景さんからの疑問

 正倉院の建物は、1997年に「国宝」に指定されました。
 ところが、
そこに納められている「御物」は国宝ではないと聞いたことがあります。わけでしょう?
 歴史的価値の高い物が多いことは周知の事実です。
それが国宝ではないとは不思議でなりません。どうして、国宝に指定されないのでしょうか?
 また、正倉院御物以外に、重要な価値があるのに、国宝に指定されていないのもあるのですか?

そういえば、正倉院展の展示物を見ても「国宝」の2文字を見たことがないなぁ。(星田)


A. 悠々さんから

 宮内庁の管理する皇室御物は、習慣的に、文化財保護法による国宝・重要文化財の指定の対象外となっています。
 ただし、1997年に奈良の文化財が世界遺産に登録されるときに、登録物件がその国の法律で文化財として保護の対象となっている必要があるため、例外として正倉院正倉を国宝に指定しました。

A. イブパパさんから

「国宝」は文化財保護法に基いて指定される重要文化財の一部ですが、御物および宮内庁管理文化財は、第二次大戦以前からの慣例で文化財保護法の対象外となっているため、国宝には指定されていません。
 ただし,正倉院(正確には「正倉院正倉1棟」)は、「古都奈良の文化財」の世界遺産登録の前提条件(登録物件が所在国の法律により文化財として保護を受けていること)を満たすため、例外的措置として国宝指定されました。

A. ポポンさんから

 正倉院そのもの、収蔵されている中の物は、「明治政府以降」「第二次世界大戦以降」「昭和天皇崩御以降」を期に、誰がどう管理するかという管理権限者が様々変更されています。
 正倉院自体は世界遺産登録の際、その条件である「その国の法律によって保護されていること」を満たすために文化財保護法によって国宝に指定されました。
 しかし、収蔵されている中の物については、「文化財保護法によって保護される対象外」である「天皇家の私物」や「宮内庁が管理する物」であるため、国宝や重要文化財などの指定がなされていません。
 両方に属さない正倉院収蔵物があれば指定される可能性もあるんでしょうが、「天皇家の私物」でないものは自動的に「宮内庁が管理」することになっているのではないでしょうか。

A. 高直さんから

 慣例的に、天皇家関係の文化財は文化庁ではなく、宮内庁が管理することになっています。
 宮内庁が管理している○○天皇陵古墳や京都御所・離宮のほか、明治期に献上された「蒙古襲来絵詞」「唐獅子図屏風」といった美術品(現在は国有財産)も国宝・重要文化財指定の対象ではありません。
 ところが、「古都奈良の文化財」がユネスコ世界遺産に指定されるにあたって、正倉院が除かれそうになったのです。世界遺産には「所在国の国内法で文化財に指定されていること」という原則があるため、宮内庁管理のままでは対象にならなかったのですね。
 そこで1997年、文化財保護法に基づいて「正倉院正倉」1棟は国宝に指定されました。ですが、中身は指定を受けていませんから、国宝・重要文化財ではない、ということになります。
 現在も正倉院展などで倉を開く際には勅使が派遣されるそうです。「勅封」といって、敷地を管理する東大寺でさえ勝手に開けることはできません。このことが、所蔵物を傷めずに現代まで伝えることができた理由の一つとされています。

A. ダンの花さんから

 結論から述べると、正倉院御物は天皇家の所有物だから国宝になっていないのです。
 もっと詳しくに答えるには、国宝について述べなくてはなりません。国宝には、旧国宝と新国宝があります。
 まず旧国宝ですが、戦前の1897年の古社寺保存法と1929年の国宝指定法によって指定されたもので、1950年の文化財保護法で戦前に国宝指定されたものは全て重要文化財に指定しなおされました。この重要文化財の中から改めて重要だとされて選定されたのが、今一般に言われている国宝(新国宝)というわけです。
 で、御物なんですが、旧国宝には指定されていません。御物とは天皇の私有物のことです。御物は戦前は法制で価値付けることができない「非民間レベル」の「超文化財」として扱われてきました。ですから現在国宝に指定されている渡辺崋山の「鷹見泉石像」は旧国宝に指定されていたのですが、天皇の手に渡ったときには御物として国宝指定を解除されました。戦後になって天皇が手放した後には再び国宝に指定されなおされました。
 正倉院の建物と宝物は1890年に「世伝御料(世伝の皇室財産)」に指定され御物となりました。戦後の皇室財産解体にともない正倉院の建物は国有化されたのですが、宝物は御物のまま留め置かれました。そのため正倉院の建物は国宝指定されているのですが、宝物はされていないというわけです。
 新国宝は旧国宝を引き継いでいるので、御物を国宝指定から排除しているわけですが、天皇が絶対化されていた戦前とは違うので、現在では国宝に指定しようと思えば指定できるのです。それをしないのは面倒くさいということと、管理がしっかりなされているので、国宝指定して保護する必要がないということがあろうかと思います。
 最後の国宝指定されていない重要な文化財ですが、御物に含まれたものということになります。例をあげると昔の千円札で有名な「聖徳太子像」、鎌倉時代の「絵師草子」等があります。
 ※参考文献:「芸術新潮」特集天皇の宝物 1990年11月号

とおりすがりの読書人さん、異邦人さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。