--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.571 (2007.01.05)

Q. ななしぃさんからの疑問

 最近、ギャル文字なんかで、小さい「ゎ」をよく見かけます。
 あの小さい「ゎ」は、もともと何に使う平仮名なんですか?

ネットで検索してみたら、あるわあるわ……。
 こんなに使われているとは、知らなかった!(星田)


A. にゃこさんから

 さて、小さい「ゎ」の使い道ですが、「本願寺」の正式な読み方が「ほんぐゎんじ」だと聞いたことがあります。
 実際に、本願寺のWEBサイトのURLは、以下の通りです。
  
http://www.hongwanji.or.jp/index_new.html

「ぐゎ」と発音するのだ、と暗示しているようです。
 ちなみに、「honganji.or.jp」だと、東本願寺のサイトに繋がります。これは、URL取得争いみたいなものを感じて、それはそれで面白いのですが、本題と外れてしまいますので、これ以上は言及を差し控えます。
 しかし、かなで書くときは「ほんがんじ」と書くようです。「が」と書いて「ぐゎ」と読ませるのでしょうか。書き文字としての「ゎ」は使われるのかどうか、分かりませんでした。

A. ginさんから

「く」、「ぐ」に後続して、合拗音を構成します。このとき、一般に「わ」は「ゎ」のように小さく書きます。
 現代標準語の音韻はそれぞれ「か」、「が」と変わらず (/ka/、/ga/)、現代仮名遣いでは「か」、「が」と書かれます。
 なお、/kwa/、/gwa/の音を書き表したいときには「クァ」、「グァ」と書くことがあります。

  火事→くゎじ(かじ)
  喧嘩→けんくゎ(けんか)
  関西学院大学→くゎんせいがくいんだいがく(かんせいがくいんだいがく)
         ※アルファベット表記でも、"Kwansei"となっています

A. 異邦人さんから

 「ゎ」または「ヮ」という文字はカ行の合拗音を表すものです。
 現代音韻ではほとんど使われることがなくなっていましたが、一部、外国語の表記などに使われるようになって来たところに、ギャル文字として復活したものでしょう。
 日本語での使用例ですが、歴史仮名遣いでは「薬缶(やかん)」を「やくゎん」というのがあります(落語のネタにもありますね)。
 そのほか、関西学院大学などは、「くゎんせいがくいんだいがく(かんせいがくいんだいがく)」となります。こちらは欧文表記も「Kwansai」と表記していますね。

A. 賢さんから

 おそらく、拗音の「くゎ」と「ぐゎ」のためではないでしょうか。
 手元の広辞苑には「くゎ」「ぐゎ」という項目があります。
「拗音の一つ。かの発音kaに半母音wを介入して唇音化した音」
とのことです。現在はもう「か」「が」と同じとみなされていますが、江戸時代以前の日本語では明確に区別されて使い分けられていたようです。
「火事」「喧嘩」は今では「kaji」「kenka」ですが当時は「kwaji」「kenkwa」と発音したらしく、今でも「関西学院大学」はローマ字表記ではkwansei〜と書いて「くゎんせいがくいんだいがく」と読ませているようです。
 また、広辞苑には「クヮルテット(四重奏)」という項目もあり、今でも「カ」よりも「クヮ」に近い発音の外来語には使われている場合があるようです。

A. うにうにさんから

 小さい「ゎ」は本来、歴史的仮名遣い(いわゆる旧カナ)で、漢字の音読みを表すときに使われていました。
 漢字の読みには、中国での読み方が元になった「音読み」と、文字の持つ意味を日本固有の単語で表した「訓読み」があります。
 このうち、音読みはもともと、当時の中国語の発音が渡来人や学者などによって日本語に入ってきたものですので、中国語の微妙な発音の違いもなるべく区別しようとしていました。
 たとえば、今日では全て「こう」と読むようになった「江」「甲」「広」「工」「劫」は、元々は「かう」「かふ」「くゎう」「こう」「こふ」と区別して読まれ、また書かれていました。
 このように、漢字の音読みを表すときに原音の違いをなるべく表現しようとする書き方を、「字音仮名遣い」といいます。
 小さい「ゎ」は、字音仮名遣いで[kw]を表すために使われた文字で、[kwa][gwa]をそれぞれ「くゎ」「ぐゎ」と表しました。なお、[kwa]や[gwi]など、[kw] [gw]で始まる音を、合拗音(ごうようおん)と呼びます。
 1946年に現代かなづかいが定められるまでは、字音仮名遣いを含めた歴史的仮名遣いが正式の書き方でしたので、戦前の本や新聞などには「ゎ」が登場します。
 もっとも、大人向けの本では拗音や促音などの「ゃゅょっ」を小さく書かないことが多かったので(「〜であつた」のように)、合拗音も「くわいしや(会社)」などと大きく書かれている場合が多いのですが、小学校の教科書や、子ども向けの絵本などでは、「おくゎし(お菓子)」のような表記が見られます。

 比較的よく使われる、「ゎ」を含む文字を挙げておきましょう。

   くゎ=化花火果華菓課科過
   ぐゎ=画
   くゎい=会回快絵壊
   ぐゎい=外
   くゎく=画拡
   くゎつ=括活滑
   ぐゎつ=月
   くゎん=完官冠巻貫観関館還
   ぐゎん=丸元玩願
   くゎう=広鉱光黄
   ぐゎう=轟

 具体的に、この漢字の字音仮名遣いが何であるかを知りたい、というときは、ある程度大きい漢和辞典や国語辞典をひけば載っています。
 なお、字音仮名遣いにおける[kw][gw]の表記法には、このほかに、

   「kwi=くゐ」「gwi=ぐゐ」「kwe=くゑ」「gwe=ぐゑ」

がありましたが、これらはかなり早い段階で「き」「ぎ」「け」「げ」と発音されるようになってしまったため、実際にはあまり使われませんでした。
 辞典類でも、字音仮名遣いとしてはこれらの表記を認めず、「き」「ぎ」「け」「げ」としてあるものが多いですが、一部の辞典では「貴=くゐ」「還=ぐゑん」などとしてあります。
 余談ですが、これらの合拗音は、現代の中国語や韓国語の発音でもそのまま残っていることが多いので、字音仮名遣いを覚えていると、中国語や韓国語を学ぶときに少し便利です。
 たとえば、日本語で「か」と読む漢字のうち、「くゎ」と書かれたものは、現代中国語でも 果・過guo、花・華・化・火huoのように、中間にuの音が入るのに対して、そうでないものは可ke、加・家jia、下・夏xiaなどと、u音をはさみません。(例外 科くゎ→ke)
 また、今挙げた文字を韓国語で読んでみると、

  「くゎ」→果・過・科kwa、花・華・化・火hwa
  「か」→可・加・家ka、下・夏ha

と、見事に対応しています。
 なお、「ゎ」の用法ですが、字音仮名遣い以外には、[kw][gw]音の残っている方言を表記したり、また外来語の表記に使うことがあります。ただ、今日ではどちらかといえばこれらの言葉はカタカナで表す場合が多いですが……。

A. YOSHYさんから

 関西学院の卒業生として一言コメントさせてください。
 確かに、“Kwansei”と綴りますが、元々創設者の宣教師の父親が、伝道のために上海に渡ったとき「生まれた」方であったため、あちらの発音で表記されています。要するに「外来語」の読み方です。
 外来語を無理矢理に日本語の字に当てはめるとこうなるという見本ではないかと思います。
 やはり、五十音ですべての音を表すのは無理なのかも……。

しなるらさん、鬱兵さん、麻生有美さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。