Q. タケルさんからの疑問
焼き肉が好きです。
カルビ、ハラミが特に好きです。レバーを嫌う人がいますが、レバーもおいしいです。
レバーが嫌いな人は、あのザラザラした食感が苦手だとかいいます。たしかにザラザラしています。
同じウシの肉なのに、部位によって、こんなに食感がちがうのはどうしてですか?
★テールスープが好きです。(星田)
A. アンギラスさんから
「レバー=肝臓」です。肝臓は「肝小葉」という1〜2mm程度の組織の集合体で、発泡スチロールみたいな感じです。ですので、ザラザラした食感になります。
それに対して、カルビ(アバラの部分)、ハラミ(横隔膜)は筋肉組織です。筋肉は細い糸状の筋線維が束ねられたものです。
余談ですが、「カニ味噌」も肝臓と膵臓が合わさったような機能をもつ「肝膵臓」と呼ばれる肝臓の一種です。
A. 賢さんから
牛の肉の細かい組成は知らないのですが、とりあえず食感の違いは部位の違いから来ることは間違いないでしょう。
「同じ牛の肉なのに」ということですが、同じ「ヒトの蛋白質なのに」爪と掌と髪では手触りが違いますよね。同じ皮膚でも、おなかの皮膚とかかとの皮膚の硬さは違いますよね。
直接見たことはありませんが、同じヒトでも心臓と胃では硬さが違うと思いませんか? そういうことです。
カルビは腹部で、レバーは肝臓ですよね。含まれる蛋白質も違うし、筋肉の種類やつき方も違うし、脂肪の割合も違うでしょう。食感が変わるのは当然のことではないでしょうか。
A. 4児の父さんから
なぜ、食感が異なるかと問われれば、食べている部分の成分や構成が異なるから、としか答えようがない気がします。
我々が食べている食肉の大部分は、動物の身体を動かす骨格筋(横紋筋)です。カルビ、ロース、ヒレなどが代表的でしょうか。ただ、同じ骨格筋同士でも、筋繊維や脂肪分の多少や性質の差で、硬かったり軟らかかかったり、こってりしたりさっぱりしたりするのだと思います。
一方、レバーは内臓ですよね。
内臓系では、ハツは心筋、モツは腸で平滑筋、ミノは胃でこれも平滑筋ですが、レバーは肝臓ですから、筋肉ではなく実質臓器です。肝臓は、肝細胞の集まりが、小葉という小さな粒を形成し、繊維で覆われております。ちょうど、蜂の巣状の繊維があり、蜂の巣の穴の所に、柔らかい肉(肝細胞)がつまっている状態を想像してください。このような構造が無数に集まって肝臓になっているので、焼くと肉が硬くなり、粒々感がでるのだと思います。
また。肝臓は非常に血流に富む臓器で、その構造上、いわゆる血抜きができないところから、血液独特の生臭さがでていると考えられます。その分、鉄分など栄養は満点なんですけどね!
A. とおりすがりの読書人さんから
生きているときの役割が違うんだと思います。
えっと、まずレバーは、筋肉ではなくて肝臓ですね。
肝臓は放射状に細かく広がった毛細血管の周りに、肝細胞が取り巻いているような構造をしているらしいので、あのザラザラした触感は枝分かれした毛細血管のまわりに房状にくっついた肝細胞の塊でしょう。
それに対してカルビは筋肉です。カルビはバラ肉の韓国語の名称。牛の腹側の肉です。人間でいえば、大胸筋や腹筋のあたりです。ロースは僧帽筋のあたり、人間だとよく肩こりを起こす筋肉ですね。サーロインやらんぷは広背筋のあたり、背中にある筋肉です。フィレは大腰筋で、ハラミとサガリは横隔膜ですね。
これらはみな骨格筋ですが、使い方が違うので、筋肉の質が変ってきます。
ものはためし、ちょっとヘンタイぽいですが、鏡の前で裸になって自分の身体に、牛の図を参考にマジックで線でもひいてみましょう。
それから「バラ」とか「ロース」とか部位名を書き込んでみてください。それから、あちこち手で触ってみましょう。筋肉の弾力や感触が、場所、場所で違っていますでしょう。
これで、一発で肉の部位名を覚えられます。「ああ、ここ食べているんだ」ってカンジです。
さらに、ホルモン(内蔵)系の、ミノ(第一胃)やシマチョウ(大腸)のような消化管は、同じ筋肉でも平滑筋といって、骨格筋とは、組織の構造が違うので、まったく違った食感がします。
また、ハツ(心臓)は心筋ですから、また違った食感がします。
A. ほおーっさんから
焼肉と一言で括られますが、実は体の様々な部分(臓器)が食されています。
第一グループは、横紋筋(主に赤い筋肉)からなる部分です。カルビ、ハラミ(サガリ、横隔膜)、タン(Tongue,
舌)、ハツ(Heart, 心臓)などがそれです。
これらは強く大きな運動をする筋肉群で、その食感と味は筋肉線維の方向と脂肪(脂身)の混じり具合で変わってきます。顕微鏡で見ると、霜降りと呼ばれる高級牛肉では、繊細な線維と細かな脂肪が美しい模様を成しています。
僕の大好きなタンは、縦横に筋肉線維が編み込まれていて、そこに適度の脂身が混じっているためにあのプリプリ感を生み出しています。
ハツは太めの筋肉線維がある一定の方向性を持ちながらも、複雑に入り組んでいるためしっかりとした食感を生み出しています。心臓はいちばん働いている筋肉の一つですから、筋肉内には脂身はそれほどついておらず、味もさっぱりとしています。
次のグループはミノ(胃)、ホルモン(腸管)などの平滑筋(主に白色の筋肉)からなる部分です。
顕微鏡で見ると、横紋筋を毛糸で編んだセーターとするなら、平滑筋は布団の中綿のようで一本一本の線維がはっきりとしておらず、ある程度の方向性を持って層を作っています。これがなかなか噛み切れない理由です。胃や腸は常にゆっくりとした動き(蠕動運動)をしていますので、筋肉内にはそれほど脂身がありません。そこで、焼肉するときには、腸の周りに付いている内臓脂肪を少し残して焼くこともあります。
そして最後のグループが、その他の臓器からなる部分でレバー(肝臓)、ヒゾウ(脾臓)、マメ(腎臓)、テール(尾骨)などです。これらは筋肉でも脂身でもなく、それぞれの臓器そのものであり、細胞の塊と言っても過言ではありません。
たとえばレバーとヒゾウは、血液が多く含まれているため鉄分の補給源とされますが、レバーであれば肝臓の細胞が索状に繋がりあっているのに対し、ヒゾウは網状の線維内に血液細胞が充満していることから、食感に違いが生まれます。
いずれにしてもこれら臓器のグループには、脂身の旨味はありません。この舌にまとわりつく脂身が無いこと、血液成分が多く含まれていることからザラザラと感じられるのでしょう。
ちなみに、肝臓を無理やり脂肪だらけにしてしまった食材がフォアグラです。テールは基本的には、骨・骨髄からのダシがポイントなのですが、周囲に付いているお肉を食べますね。これは横紋筋ですから、第一グループに準じるとも言うことができます。
まとめると、焼肉の味と食感に違いを作り出す要素は、
(1)構成細胞の違い(横紋筋、平滑筋、その他の臓器)
(2)それらの細胞の構造(線維の走向等)
(3)脂身の量と混じり方
と言えます。
タレや胡椒漬けにし過ぎずに、素材の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
★麻生有美さん、舞武さん、カルビさん、ひろさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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