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疑問No.686 (2008.07.05)

Q. escargotさんからの疑問

 昔から不思議に思っていることがあります。
 船のように人や荷物を載せて運ぶことができる「気球」。ほとんどが丸いゴムや紙に空気が入っているだけの「風船」。
 これらの名前、逆のほうが意味が通じやすいと思うのですが……。なぜ、それぞれ今の名称になったのでしょうか?

もう、その名前で浸透してしまっていますから、ストローの先から「気球」が出てきたら、驚いてしまいますね。(星田)


A. 船橋さんから

 「風船」という言葉は一見中国から来た漢語に見えますが、実際は日本で作られた和製漢語だそうです。いつ頃成立した言葉なのか調べても分りませんでしたが、かなり以前の和歌や俳句にも「風船」や「紙風船」という言葉は登場していました。
 また、秋田の「紙風船上げ」というお祭りは、江戸時代(1773年頃)に平賀源内が江戸から秋田に伝えた風船遊びが始まりと言われていますから、その頃には「風船」という言葉はあったのではないかと思われます。
 当時の「風船」は、現在の紙風船もそうですが、丸くはなく、四角いものが多かったようです。また、風船には人を乗せるという発想はなく、あくまで用途は遊びと考えられていました。
 これに対して「気球」は、明治時代(1877年)に現島津製作所の島津源蔵氏が飛ばしたものが日本最初とされています。こちらは、当時「軽気」と呼ばれていた水素ガスを「球」体のものに入れたもので、このため「軽気 球」と呼ばれました。
「軽気 球」は、後に「軽」の部分が省略されて「気球」と呼ばれるようになります。
「軽気 球」は、船のように人が乗れ、風を動力として移動します。まさに「風船」と呼んだ方が正しい呼称と思われます。
 しかし「風船」という言葉には、すでに「紙でできた四角い遊具」のイメージが定着していました。対して、「軽気 球」は、明治の文明開花を象徴する西洋からやってきた新技術であり、戦争の道具でもあり、何より人の乗れるもので、「風船」という言葉の持つイメージとは全く異なるものでした。そのイメージを避けて別の名前である「軽気 球」という名前をつけられたといえる
かもしれません。
 余談ですが、「風船」、「気球」という言葉は、その後中国にも輸出されて、現在ではどちらも中国でも使われるそうです。が、「気球」の方が一般的で、たとえばアドバルーンは「広告気球」と訳されるそうです。逆に「風船」はそれほど使われていないそうで、「風船」という言葉が中国から来たのではと思っていた私にはちょっと驚きでした。