--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.687 (2008.07.08)

Q. むちむちさんからの疑問

 コピーしてすぐの紙の印刷面を手でなぞると、インクがにじんだり、流れたりします。しっかりと乾くまでは、触らない方がよいですね。
 しっかりと乾いた後でも、濡れた手で触ると、やはりインクがにじみます。
 ところが市販されている印刷物は、表面を濡れた手で触っても、塗れはしますが、インクがにじむことはありません。新聞だって、濡れますが、にじみません。何が違うのでしょうか?
 また、新聞紙(ザラザラ)と、雑誌の表紙(ツルツル)は、感触が違いますよね。あれって、印刷の「何か」の違いですか? それとも、単に紙の質の違いなのですか?

ツルツルの紙でも、印刷してすぐは、触らない方がいいのかな?(星田)


A. アンギラスさんから

 まず、コピーは「トナー」と呼ばれる粉が、多少は染み込んではいますが、基本的に紙の表面に乗っているだけです。それに対して、印刷物ではインクが紙の中心部まで染み込んでいます。市販の印刷物を濡れた手で触っても滲まないのは、インクが油性だからです。
 紙は、抄造したままだと新聞紙・ティッシュのように表面はザラザラです。ツルツルした紙は漉いたあと、表面に印刷インクと相性の良い石油系の樹脂(接着剤のようなもの)と石灰など白い微粉末を混ぜたものを塗工しています。紙の質や図柄の濃い・薄いにもよりますが、印刷物でも特別な乾燥処理をしないかぎり、2〜3時間以内に触るとインキが手につきます。

A. 如熊夢さんから

 むちむちさんが「コピー」と呼んでいるのは、「インクジェットプリンター」による印刷物のことではありませんか?
 一般的なコピー機ではトナー粒子を熱で融かして紙の表面に定着させるので、水で滲むことはないはずですが、プリンターのインクであれば乾燥後も水溶性で水に弱いものがみられます。
 商用印刷では、油性インクを用いるので、水に強い印刷物ができ上がります。
 雑誌の表紙やグラビアページ等に使われるツルツルの紙には、粘土や炭酸カルシウムの粉末とデンプン等を材料として混ぜたり表面に塗ったりして、強度を高めインクののりや発色を良くする加工がなされています。その分高価なものになりますので、あまり高い印刷精度が求められない新聞等では安価なザラザラの紙が用いられることになります。

A. ライナスの毛布さんから

 質問者さんが書かれているコピーは、自宅やSOHOで利用されることの多いインクジェット式のことでしょうか。
 オフィスで利用されている主流と思われるPPC式(トナーを静電気と熱を利用して紙に融着するもの)だとコピー直後に水で濡らしても大丈夫ですよ。
 インクジェットも染料系インクは発色がより美しいですが、確かに水には弱いですね。一方、一部では顔料系インクを用いたものもありますので、耐水性の高いものもあります。
 市販印刷物(いろいろな印刷方式がありますが主流はオフセット印刷)は、耐水性が高いですね。もともとオフセットというのはインクが水を弾く性質を利用して、「版面」から離れた場所、つまり「オフ・セット」にある「紙」に印刷する仕組みなのです。オフセット印刷にご興味が湧かれたら別途お調べになってみてください。ですから、水では流れません。
 紙の質ですが、インクジェット用紙として販売されているものは、紙の上に化学処理などが施されていて、標準的なものだと

   紙→バリア層→キャッチャ層

となっています。キャッチャがインクを捉え動きにくくし、バリアが紙への浸透を阻害するわけです。
 両面用インクジェット用紙では、

   キャッチャ層→バリア層→紙→バリア層→キャッチャ層

 表面がツルツルのコート紙などもインクジェット用紙だとキャッチャ層が流れにくくしてくれる訳です。
 ただし、無加工の粗悪品にインクジェット用と偽装販売しているものも少なくありません。あるいは、染料系インクを対象として作られた用紙に顔料インクで印刷しても効果が得られないなども考えられます(粒子の大きさなどが違いますから)。
 オフセット印刷などに利用される紙にも、商品価値として様々な種類の紙質が用意されています。
 ところで、雑誌などでページをめくるときにザラッとした感触をお感じになることがありませんか。印刷直後に次に印刷されて出てくる紙とこすれ合って滲んだり裏写りしたりすることを予防するために、オフセット印刷機の最終行程あたりに粉を吹き付けるんですよ。

A. 船橋さんから

 コピーと印刷では、次のような大きな違いがあります:

 印刷:紙の繊維の奥深くまで液体である「インク」を染み込ませる
 コピー: 紙の表面に色のついたプラスチックの粉「トナー」を熱でくっつける

 紙というのは、何層にもわたる繊維の集まりで、濡れた指で紙をこすれば紙の表面の繊維が取れてしまいます。「コピー」ではそのとき一緒に紙の表面の「トナー」の粉も取れてしまうため、文字が滲んだように見えます。特にコピー直後の紙が暖かい状態では、トナーが落ち着いていないので注意が必要です。
 ところが、「印刷」では繊維の深くまで「インク」が染み込んでいますので、多少紙の表がはがれても印刷した文字は簡単には消えないのです。また、「印刷」した場合、インクの種類と紙の種類で決められた乾燥の時間を取った後に出荷されますので、その意味でも印刷物の方が安定しているという面もあります。
 実際には、印刷の種類も沢山ありますし、トナーの進化はもの凄いものがありますので、必ずしも上記の通りではないことも多いのですが、参考まで。
 新聞紙と雑誌の表面の違いは、印刷の違いではなく紙の違いです。
 新聞紙には、新聞印刷用の「浸透速乾方式」にあった薄くて軽くてインクがすぐ乾き(新聞ではこれが重要です!)、かつ安い紙が使用されています。
 これに対して、ある程度保存してもらえる可能性のある雑誌の表紙は、塗工紙と呼ばれる上質紙に塗料を塗ったものを使用します。
 もちろん、新聞を塗工紙で作ってもよいのですが、そうすると印刷後の乾燥に数時間かかってしまうため配達はお昼過ぎ頃になってしまう上、値段も数倍になってしまうのでちょっと現実的ではないでしょう。
 さて、この「塗工紙」、英語では「glossy」といいます。「glossy magazine」というと、「表紙が塗工紙の雑誌」ということで、「高級雑誌」と言う意味になります。
 私の友人で、ニューヨークで地味な雑誌の編集をしてる女性がいるんですが、会うたび「いつかは、Glossy Magazineの編集者になるんだ!」と息巻いてます。今の「ざらっと」した表紙の雑誌社だと、年収は100数十万円らしいのですが、「つるつる」の表紙の雑誌社に勤めると少なくとも3000万円以上になるのだそうです。もちろん、その雑誌を購入する人たちも、それなりの人たちです。
 アメリカは日本では想像できないほどの「格差社会」なんですが、たかが雑誌の表紙の紙でも「格差」があるんだな、と本屋で雑誌棚を眺めるたびに彼女を思い出しては感心したり、ぞっとしたりしてます。