Q. SHOWさんからの疑問
「ある」の反対は「ない」ですよね。
でもちょっと待ってください。本当にこれって正しいのでしょうか?
「ある」は「動詞」です。「ない」は「形容詞」です。「動詞」の対義語が「形容詞」になるということがなんとも不可思議なのですが……。
もし、これが正しいとしたら、なぜ、品詞が変わるのに対義語として正しいのでしょうか?
また、対義語で品詞が変わる言葉が他にもあるのでしょうか?
★もしかすると、「ある」の反対は「ない」ではないのかな?(星田)
A. ごんたさんから
国語の勉強をとうの昔に卒業した私ですが、こういう理屈を考えてみました。
「ある」=「(○○が)存在する」と置き換えると、
「ない」=「(○○が)存在しない」が対義語になるのではと思います。
つまり「ない」というのは単に「ある」を打ち消す言葉で、正しく表記するならば、「あるない」「あらない」(あらざる)というような正しい対義語があったが、省略されて現在の形になったのではないか?と想像するのです。(英語でも存在を示す言葉Existの反対はNot
Existですね)
A. イブパパさんから
1.反対語「有り、無し」のそれぞれの口語体「有る、無い」から。
2.または,動詞「ある」の活用形の否定形である「あらない」が省略されて「ない」となったのではないかと推測します.
自分自身改めて驚いたのですが、動詞「ある」の否定形が「あらない」とは知りませんでした。5段活用であれば当然なのですが,「あらない」なんて使っているところを見た記憶がないから、てっきり「ない」が否定形だと思っていました.
今回の疑問の正解がどうであれ、勉強になりました.
A. 新山英輔さんから
いい問題ですね。なんだか物理学の対称性の破れ問題を思いだし、もしかしたらフカーイ哲学的な意味があるのかな、などと思ってしまいました。
でも、ふと漢語に目を転じると、「有無」ということばがあります。ここでは見事に対称性が保たれており、「ある・ない」問題は物理学や哲学の問題ではなく、単なる日本語文法の問題らしいとわかります。
そこで考えてみると、そもそも対義語がない言葉があります。「なる」「する」「やる」「もつ」などの対義語は、「ならない」「しない」「やらない」「もたない」などの否定形しかないのではないでしょうか。
その流れでいくと、「あり」(文語)または「ある」(口語)の対義語は、「あらず」および「あらない」となる。その「あらない」が省略されて「ない」になった、と考えたらどうでしょうか。
もちろんこれは私のご都合主義的仮説です。
A. れっこいさんから
2008年11月19日に放送された「クイズ雑学王」を見ていたら、「激しい」(形容詞)の対義語が「おだやか」(形容動詞の語幹)、「険しい」(形容詞)の対義語が「なだらか」(形容動詞の語幹)となっていました。対義語の品詞が異なる(あるいは対義語が同じ品詞内にない?)例は結構あるみたいです。
※ちなみ、にこの疑問とほぼ同じ質問が昔「週刊朝日」に連載されていた「日本語相談」にありました。肝心の答えは忘れてしまいましたが、結構むずかしい答えだったと思います。
A. 圭太さんから
日本語の成立と関係があると思います。
<1>やまとことば の「あり」と漢語由来の「無し」
土着の やまとことば には概念を表す抽象語がほとんど無いため、特に仏教や律令制度伝来後は、漢語で補わざるを得ませんでした。
「ある」は古語では「あり」や「おり」でしょうが、いずれも動詞です。具体的にものが存在することを表すので、やまとことばに古くからあったと思われます。
「無し」は目に見えないことを表す抽象語のため、漢語由来だと思われます。因みに、漢文では「無」は動詞です。
元からセットであったわけではないことが、品詞が違ってしまっている原因ではないでしょうか。
<2>神道などの影響
日本古来の神道では、「死」を非常に忌み嫌います。ないことは「死」につながるので、それを口にすることが無意識的に憚られるようになり、やはり「あり」と対等には「なし」が扱われないため品詞が違ってしまったのではないでしょうか。
現代でも、日本語は否定が煩雑です。例えば、英語と比べると、all
〜 なら「全ての〜」と簡単にすむのに対し、not
all 〜 となると「全ての〜が…というわけではない」と途端に面倒くさくなります。
また、「ない」は形容詞の中でも、特異な存在です。名詞を修飾しにくいのです。「ない袖は振れぬ」のような固定化された表現はともかく、自由に名詞の前につけるわけにはいきません。「ない手段を講じる」はおかしいわけで、やはり「講じる手段がない」と言わざるをえません。
以上全て学術的裏づけの全くないひらめきですが、面白い疑問だったので考えてみました。
A. Matthew Eyesさんから
「ある」が動詞で、「ない」が形容詞であるのは、次のような理由によると考えます。
「ある」というのは、元来存在しなかったものが現われて、そこに存在するという意味です。つまり、時間の経過とともに変化したことを表わしています。このため、品詞としては動詞になります。「現われる」も「ある」も「ar・・・」という音を含みますが、これは言葉の成り立ちが同じためです。
これに対して「ない」というのは、そこに存在しない状態が継続しているという静的な表現で、動きや変化を全く含みません。したがって品詞としては形容詞になります。
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