--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.719 (2008.12.02)

Q. Julianさんからの疑問

 昔、英語の時間に「th」の発音を習いました。あの「th」、自分ではきちんと発音できているのかどうか、わからないのです。
 中学校のとき、先生から
「今の発音は違う。ちゃんと舌を噛んで!」
と注意されました。言われたとおり、舌を噛んで発音すると、
「そう、それでいい」
 ちゃんと聞き分けているのです。でも、発音している当の本人は、音の違いがわかりません。発音はできているようなのですが、音の違いがわかりません。
 思えば「th」の発音の仕方は習いましたが、聞き分け方は習った覚えがありません。「th」をうまく聞き分けられる方法を教えてください。

まいったなぁ。聞き分け方を、文字で説明できるのかな?
  「this」は、「ディス」「ジス」「ズィズ」でもないのです。(星田)


A. アンギラスさんから

 結論からいえば「何千回も何万回も聴いて、聴き分ける」しかないと思います。
 たとえば、英語の歌を歌詞を見ながら何回も聴く。その際「th」「s」に蛍光ペンで印を入れておくとか。
 人間が産まれて、まだ喋れない時期でも、その言語を何万回と聞いているうちに、脳の中に子音・母音を判断する神経回路が形成されます。そして言葉が出るようになったら、周りの人が話しているような音になるように試行錯誤を繰り返しながら、「th」では舌先を少し噛む感じ? 「r」は舌を立て気味かな? 「L」は舌を前歯につけて「n」みたいな感じ? 「f」「v」は下唇を噛む感じ? というように覚えていくのでしょう。

A. YOSHYさんから

 私自身、語学の専門家でもなく、語学でそれなりの資格・技量を持った者ではないので、その程度の人の戯言と聞いて頂ければ幸いです。
 さて、「th」の発音で日本語の「サ行(又はザ行)」で表される発音との差異ということですね。
 日本語の「サ行」ですが、「し」以外は、基本的には英語の「s」の発音と一緒です。
「th」の場合は舌をかみながら発音、「s」は噛まずに発音となるわけですが、両者の聞こえ方の違いは、呼気量の差と高音成分の多寡です。
 正確に発音できておられると言うことなので、次の単語を読んでください。

   sigh(ため息)、  thigh(腿)、  shy(内気な)

 sigh では「s」を発音するときに舌が歯から離れているために、勢いよく、かつ、鋭く息が出ます。
 thigh では、舌を噛んでいるため息の出口が小さく、鋭い呼気の流れはありません。shy では、日本語の「し」と同じ発音で、「s」と同じように舌の先端は、歯にはくっつきませんが、舌の上の面位置が、「s」を発音するときのように、口蓋の近くに位置するのではなく、もっと下の方で発音されますので高音部分の成分が少なくなります。
 従って、「s」の方が「sh」よりも音声に含まれる高音成分が多くなります。「th」の場合はもともと呼気の流量が少ないため、舌と口蓋の間隔はあまり関係がなく、音程に差がありません。
 中国語を勉強されておられる方でしたら、「s」と「sh」は有気音、「th」は無気音という分類に近いのではないでしょうか。

 同様に、濁って「ザ行」となった場合はどうでしょうか。例として適当な単語が思い当たりませんが、次のような物はどうでしょうか。

   this(これ)、JIS(日本工業規格)、dis−(反対の意味を表す接頭語)

 日本語の「ザ行」と英語の「z」は全く同じで、両者とも発音するときに一度口蓋に舌をくっつけて発音しているので、言語学的には「z」の前に「d」が入ってます。従って、「どっと」声が出てくるはずです。
 ちなみにフランス語の「z」行では、口蓋に舌を付けずに発音しますので日本人がフランス語の発音を習得するときにはちょっと訓練が必要となります。
 他方、「th」の方は、口蓋に舌を付けることはないため(恐らくよほどしたが長くないかぎり無理)、発声されるときの鋭さがありません。
 私の思いつくのは以上ですが、現実には「th」を発音するときに舌を噛まず、歯の裏側に舌を押しつけて似たような音を出す人も多いようですし、通常は会話の中での判断となりますのでそんなに困ることはないと思います(正確でない発音は訛っているとか、教養がないと思われますが)。
 よく言う品のない冗談ですが、レストランで「lice(しらみ)」を注文しても絶対「rice(米)」を持ってきます。

A. kztさんから

「th」は日本語にない独特の子音のひとつなので、カタカナ表記も不可能ですが、濁らない「th」も濁る「th」も、その先生のおっしゃる通り「舌先を歯に挟んで出す」としか何とも言いようがないものです。
「舌先を歯に挟んで正しくthを発音しているかどうか」は、注意すると正確に聞き分けることができます。
 あなたが「どうしても聞き分けられない」「聞き分ける方法がわからない」というのであれば、酷なようですが、それはあなたがまだ「th」をしっかり発音できていない(習熟するに至っていない)、ということを意味しているのだと思います。
 これは単に慣れの問題でしかなく、誰にも容易に修得できる技術です。挟んでいる音と、挟んでいない音を、何度も何度も聞いて、発音しているうちに、自ずとわかるようになりますよ。

A. 船橋さんから

「th」の音を聞き取るには、「th」の音を出せるようになるのがいちばんです。逆に言えば、自分が「th」の音を出せない人は、「th」の音を聞き取ることがむずかしいです。
 では、「th」の音を出すにはどうすればよいか?というと……、「上の歯」と「舌」を付けた状態で、

「ざーー」、「じーー」、「ずーー」、「ぜーー」、「ぞーー」

と言ってみるという訓練がいちばんです。普通の「ざー、じー、ずー、ぜー、ぞー」と交互にやってみるとよいでしょう。
 舌と上の歯を付けた状態で「ざーーー」と言うと、普通の「ざーー」と比べて舌と歯がびりびりと震えてしびれるのがわかると思います。その、「舌と、歯がびりびりしてる響き」が、「th」の音です。
 これができるようになると、「V」の音も出るようになります。「上の歯」と「下唇」を付けた状態で、

「バーー」、「ビーー」、「ブーー」、「ベーー」、「ボーー」

と言います。「th」のときと同じように、歯と唇がびりびりと震えるのですが、その「下唇と歯がびりびりする響き」が「v」の音です。
 日本語の感覚だとちょっとわかりにくいかも知れないですが、英語の発音上では、「th」と「v」はとても近い音と考えられています。
 さて、余談ですが、「th」の音というのは、出せなくても実はそれほど困りません。英語のネイティブスピーカーの中でも「th」の発音できず、聞き取れない人が結構います。
 たとえば、アイルランドの公用語は英語ですが、多くの人は「th」を発音をしません。だから、文脈上判断できないような場面で、「three」と言うと、
「それは数字の『3(three)』か? それとも『木(tree)』か?」
と聞かれます。
 また、ドイツやオランダの人たちが英語を話すときも、「th」を発音しないことが多いようです。彼らは、three を、「dree」のように発音します。
 ドイツ人に言わせると、「英語なんてのは、ドイツ語の方言」であり、北の方(UK)に伝わる間に汚い音がたくさんまじって、「th」なんておかしな音が作られたんだ、だそうです。なので、外国人が必死で「th」を練習している
のを見ると、かなり違和感を感じるそうです。
 これを日本語に置き換えてみると、たとえば外国人が標準語でなく方言を喋ると、日本人としては違和感がありますよね。
 これと同じように、日本人が必死で「th」の練習をしているのも、ドイツ人やオランダ人から見るとちょっと違和感があるようです。