--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.728 (2009.01.17)

Q. イチローさんからの疑問

 電車に乗っていると、各駅停車が駅の待避線に入り、急行が隣の通過線を猛スピードで追い抜いて行く光景をよく目にします。どうして急行が間違えて待避線に入り込んで各駅停車に追突しないのか、とても不思議です。
 明治以来の鉄道事故史の専門書をひもといてみても、そういう事故は見事に皆無です。
 日本中の鉄道で、1日にそれこそ何千、何万回と繰り返されているはずなのに……。一体どんな危機回避のしくみが取り入れられているのでしょうか?

もちろんそんな事故はない方がよいのですが、日本の長い鉄道の歴史の中で、このような事故が起きていないとすれば、それはすごいことですよね。(星田)


A. 洞窟ピングーさんから

 ポイントが待避線側になっている間は信号が赤になるからです。
 赤信号を無視して進入しようとすれば、ATSによりブレーキが自動的にかかります。

A. だーくまんさんから

 結論から言えば、コンピューター制御です。
 駅員の方が持っている(売られていることもあるようです)ダイヤ(長い紙に、線のいっぱい書いてあるやつ)を見たことがあるでしょうか? あれを、数値でコンピューターに入力し、信号などの通過記録や列車からの情報を元に、コンピューター制御で衝突しないように、信号やポイントを操作しているようです。
 CTC(列車集中制御装置)、PTC(運行管理システム)、ATC(自動列車制御装置)、電力管理システムなど、名前があるみたいです。

A. 異邦人さんから

 待避線に入線した列車はポイントで閉塞されているから事故になりません。
 基本的に鉄道は一つの信号区間の中には1編成の列車しか存在できないので、優等列車が後ろに迫る普通列車が待避線に入線しないかぎり、後発の列車は追越が出来ません。
 そのために先行する列車を待避線に入れて閉塞区間を解放させる必要があるからです。

A. YOSHYさんから

 ポイントがあるから、ATC(ATSまたはATS−S)があるからと言うものは疑問を呈された方もご存じだと思いますので、それがちゃんと作動していなくとも事故の起きない理由を考えたいと思います。
 最初に、一般的認識として待避線は本線から急カーブで入り、本線はまっすぐであると言うことです。
 その前提で、ポイントが待避線の方に閉じている(待避線の方に行くようになっている)、ATC等が機能していない場合、

1.設問の猛スピードで突進してきた場合、恐らく惰性でポイントを乗り越え、そのまま本線突っ走っていくと思います。
2.上記よりは遅いが、ポイントに沿って曲がれるほど遅くない場合、確実に脱線します。
3.それより遅い場合は、ほぼ徐行状態だと思いますので、ぶつかる前に運転手が止めるでしょう(ただ、その速度で駅を通過するとは思えませんが)。

 鉄道史上、待避線につっこんで大事故になったケースはなかったようですが、逆に待避線で待っていた電車が通過列車が通過したと勘違いし、のこのこと本線に出てきて接触事故を起こしたという記録はあります。
 また、小生のうろ覚えですが、操車場に止めてあった貨物列車が、しっかりブレーキをかけていなかったため、何かの拍子に勝手に動き出し、待避線の客車にぶつかったという話があったような気がします(40年くらい前のことですが……)。

A. でんしゃさんから

 鉄道の安全は「閉塞(へいそく)」で守られています。それは、自動車や路面電車と違って、信号と信号の間(閉塞区間)には「ひとつの列車しか存在しない」という約束です。
 つまり列車は、ひとつ前の列車が進んで、信号が黄色や青にかわって「ひとつ前に進んでも良い」と指示されて、はじめて前に進めるのです。
 追い越しの駅でも同じで、前の列車が「退避側」に入り、ポイントが切り替わり、進んでも良いという信号の指示で、追い越し側(本線)に入ります。
 昔は、ポイントを切り替えるのも人間、信号を確認するのも人間でしたが、事故を経験しての技術改良で、大きい鉄道会社では、コンピュータと連動したシステムとなっています。
 イチローさんは「皆無」とおっしゃっていますが、誤進入や接近しすぎは、実は結構起こっています。
 また、「追い越す電車が待避中の電車に衝突」という事故ではありませんが、それに近い事故は、私の眼前で起こりました。退避していた電車が勝手に発車。追い越しの特急に衝突しての脱線事故です。
 残念ながら、鉄道の技術やシステムは「事故で進歩・進化」するのが現状です。

【 阪急六甲駅事故 】
阪急神戸線六甲駅構内にて、1984年5月5日、11時30分頃、梅田行特急と山陽電鉄の回送が衝突。山陽電鉄の運転士がATSの電源を切り、車掌の発車合図がない状況で、しかも、信号も確認せずに発車したことが原因とされる。
回送が本線に出たところで、特急が衝突。特急の前3両が脱線、回送電車は4両全車が脱線。73人が負傷した。

A. ごんたさんから

 単純に、走行する列車の進路がクリアなら信号が青、そうでない場合はどこかで赤信号が点り、そこで青になるまで待つこれだけです。

 列車同士の追突を避ける為に後続の列車が知りたい情報は……、

(1) 先行する列車を追い越したい場合
・先行する列車は駅などの待避線に入っているか?
・待避線と本線のポイントが正しく切り替わったか?

(2) 事故などで先行する列車立ち往生していないかを防ぐ場合
・先行する列車が予定通りに各所を通過しているか?

だと思います。したがって、ポイントの前や踏切など事故の起こりそうな場所には必ず信号を設けて追突を防いでいます。
 信号とポイントの切り替えは、今なら無線やコンピュータなど、電気的に列車がどこを走っているのか把握し自動的に行っています。
 昔はタブレットと呼ばれるカム状の部品を列車(運転手)と駅(駅員)で受け渡しを行い、後続の列車の為の信号やポイント切り替えを制御していました。
 私の幼い頃の記憶ではポイントの切り替えは小さな駅だと手操作だったような気がします(どのタブレットを受け取ったらどこのポイントを切り替える、といった具合に)。
 しかし、大きな駅では切り替える箇所も多いので、事故を防ぐためにもそのような場所では電気的に切り替えを行っていたのではないかと想像します。

 私は実際に鉄道関連の仕事に従事したわけではありませんので、以前見聞きした情報の記憶や自身の仕事などの経験なども踏まえて想像の範囲で意見させて頂くことをお断りしておきます。
 まず、過去の事故が皆無というのは正確ではないと思います。
 いわゆる、ニュースで取り上げられるような人命や社会的に影響のある重大な事故が(ほとんど)無かっただけでしょう。その寸前で回避できた小さな事故(これを「ヒヤリ、ハット事故」といいます)、あるいは、社会的に大きく取り上げられずに済んだ事故は数知れずあるのではないかと思うのです。
 事故というのは小さなミスの積み重なりでもありますから、それらが少なくなれば安全運行にも繋がります。一つのミスが大事故に繋がる現代とは異なり、小さなミスが大事故に発展しなかったことが幸いしたのでしょう。

「ヒヤリ・ハット活動」は皆がそのような事例を隠さず報告する事で類似事故を防ぐという活動ですが、もう一つの安全活動として「危険予知活動」という活動があります。
 これは危険を危険として気付く感受性や集中力を高める活動で、その手法のひとつに指差し呼称(駅員がホームでよくやっているアレです)というのがあります。これは作業の要所の確認事項を声に出して確認する事で集中力を高め、行動の正確性を高める、という効果があるそうで、その効果は何もしない場合に比べ、誤りの発生率が約6分の1に減少するというデータがあるそうです。

 現場の教育も厳しく行われ、自身や現場の人たちの責任意識が今より高く、元々のミスが少なかった上に、人員が今より多く配置されている関係で一人のミスを他の人がフォローするシステムが形成され、ミスの連鎖が起こりにくい環境にあったのではないでしょうか。
 また、現代のように高速・大量輸送の時代でなかったぶん、事故を回避する時間が稼げたこともあるのでは……と思うのです。

A. 現職運転士さんから

 なぜ追突事故を起さないか? これは「軌道回路」というシステムがあるからです。
 鉄道の信号は、ある一定の区間を持って電気的に区切られています。その区間に電車が来ますと、軌道回路が短絡(簡単にいうとショート)して信号は停止信号(赤信号)になります。
 電車のいる区間に進行信号(青信号)は表示できないシステムになっています。各駅停車列車がホームに入線すると信号が赤になり、その後転轍機(ポイント)がぐりぐりと動いて、快速列車が通過する進路に向いて進路が構成されます、進路に異常がないと快速列車が通る線路の信号機が進行信号が表示されます。この軌道回路というシステムで鉄道の安全が守られているのです。
 補足ですが、線路が破断したり、ポイントが途中で止まったりしても進行信号が表示されることはありません。

A. うにうにさんから

 鉄道の運転席の後ろに立って、前方を見ていると、線路の傍らにところどころ信号機が立っているのが分かります。この信号が衝突防止の大事な役目を果たしているのです。
 道路にも信号機があります。赤は止まれ、青は進め、という基本的な意味は、道路も鉄道も同じですが、両者で大きく異なる点があります。
 道路の信号機は、一定の時間が経過すると色が変わり、周囲に車がいるかどうかには影響されませんので、1台も通っていなくても時間が来れば赤になります。
 これに対して鉄道の信号機は、そのときそのときで、前方に列車がいるかどうか、いるとしたら車間距離はどのくらいか、またポイントが自分の通れる方向に開いているかどうか、といった状況をリアルタイムに反映しています。つまり、「信号の表示」「ポイントの状態」「列車の位置」がお互いに関係づけられた一つのシステム(連動装置という)を作り上げているわけです。

 車間距離は、実際には次のような仕組みで示されます。
 まず、信号機と信号機との間には列車は1つしか入れないことにします(このようにしたとき、信号機と信号機の間の区間を閉塞区間と呼びます)。列車が信号機のある箇所を通過すると、その信号機は赤になります(赤を現示する、といいます)。その1つ後ろにある信号機は、1つゆるい表示(たとえば黄色)を現示します。さらにその1つ後ろにある信号機は、もう1つゆるい表示(たとえば緑色)を現示します。
 この場合、列車がどんどん進んで行くにつれて、ある特定の信号機が現示する信号は、赤→黄→緑と変化します。(道路の信号とは逆ですね)。そして、次の列車が通過すると、また赤になります。
 今の例では赤・黄・緑の3段階でしたが、場合によっては赤と黄の間に黄色2個が入ったり、黄と緑の間に「黄と緑の同時点灯」が入ったりして、4〜5段階になることもあります(線区による)。
 さらに、それぞれの信号の現示に対応して、速度制限を設けておきます。JRで一般的に見られるのは次のようなものです。

  赤  (停止):その信号より手前で停止
  黄×2(警戒):時速25km以下でその信号を越えて進んで良い
  黄  (注意):時速45km以下(線区によってはもう少し速くても可)
  黄と緑(減速):時速65km以下
  緑  (進行):その区間で定められた制限速度いっぱい

 こんなふうになっているのは、鉄道は自動車と違って急ブレーキがきかないからです。鉄の車輪と鉄のレールとの摩擦は、ゴムタイヤと道路との摩擦に比べるとずっと小さいので、仮に自動車並みの急ブレーキをかけたとすると、車輪がロックしてレール上をすべっていってしまいます。
 さらに、鉄道車輛の進路はレールによって決められてしまい、自動車のようにハンドル操作で進路を変更して前方の車輛や障害物を回避して衝突を避けるということもできません(ので、そもそもハンドルがついていません)。したがって、追突を防ぐには十分に車間をとらないといけません。
 なお、速度制限を設けても、運転士が信号現示を無視してスピードオーバーで進んでしまうと事故につながります。
 そこで、それぞれの速度を超えて信号を通過すると、自動的にブレーキを掛けるようなシステムもあります(自動列車制御装置、ATC)。これは新幹線や都市部の区間などでは使われていますが、相当な設備投資が必要なので、他の線区では、赤信号だけは守らせる装置、つまり自動列車停止装置(ATS)が設けられています。

 さて、ここからは、ご質問のケース(つまり普通列車が急行の通過待ちをする)について具体的に説明しましょう。なお、鉄道の信号保安システムは、実際にはさまざまな種類があり、単線か複線か、また列車の本数、走っている列車の種類などによって変わりますので、路線によって異なっていますが、ここでは代表的な事例を取り上げます。また、とりあえず複線区間、つまり上りと下りのすれ違いは自由にできるものとします。

 いま、普通列車が駅の待避線に入ったとします。このとき、駅の入口(構内に入るすぐ手前)にある信号機(場内信号機という)はどのような表示をするでしょうか。
 場内信号機は、これから駅に入ろうとしている列車に対して、そのまま進入していいかどうかを表示します。ここのケースでは、進入方向が2つ(本線と待避線)ありますので、信号機が2つ並べてあります(1つの信号で兼用して、その代わり、どちらの線に進めばよいかを示す進路表示器を取り付けてあることもありますが、ここでは本線用と待避専用の2つがあると仮定します)。
 普通列車が駅に入った直後は、ポイントは待避線の方を向いていますので、本線用の場内信号機は赤(停止)を現示しています。また、待避線用も、すぐ前に列車がいるので停止現示です。そして、1つ後方の第1閉塞信号機は1段階緩い、たとえば「注意」を、もう1つ後方の第2閉塞信号機はたとえば「減速」や「進行」を、現示していることでしょう。
 このままでは、後ろから来た急行は、いつまでたっても駅構内に入れません。そこで、駅員がポイントを切り替えて、本線方向に開通させます。すると、本線用の場内信号機が、赤から緑に変わります(駅の前方で列車が立ち往生でもしていれば別ですが)。一方、待避線用のほうは赤のままです。この瞬間に、後方の第1・第2閉塞信号機も、一緒に緑(進行)現示になり、急行列車はそのまま進めるようになります。

 さて、急行が通過していった後、こんどは普通列車の運転士の立場になってみましょう。
 目の前にはもう1つの信号があります。駅の出口に置かれているもので、出発信号機といい、その名の通り、列車を出発させていいかどうかを示します。急行が通過し終わるまではもちろん赤現示ですが、通過し終わって前方に遠ざかってしまっても、前方のポイント(待避線が本線に合流する)が本線方向に開いている間は赤現示のままです。
 ポイントが待避線方向に動くと、ようやく、さらに前方の列車の位置によって「注意」や「進行」などを現示します。
 運転士は、信号を指さして「出発進行!」と叫びながら確認して、列車を発車させます(「出発進行」は決まり文句のように思われていますが、「出発信号機が緑を現示した」という意味ですので、もし黄色なら「出発注意!」となります)。

 その後、普通列車も発車し、駅構内は空っぽになりました。場内信号機はどうなったか、みてみましょう。
 本線用は「進行」を現示しています。ところが、待避線用は、列車がいないにもかかわらず、黄色2つの「警戒」だったりすることがあります。これは、仮に列車がそちら側に入ろうとすると、ポイントで本線から分かれて、カーブを通過するため、あまり速度を出していると脱線してしまうからです。

 ところで、急行が各駅に追突する事故は明治以降皆無である、という指摘がありましたが、それは調べた範囲でたまたま載っていなかっただけに過ぎないのではないかと思います。
 以下、主として久保田博著『鉄道重大事故の歴史』、山之内秀一郎著『なぜ起こる鉄道事故』を参考に書きます。

 鉄道の統計では、列車衝突・列車脱線・列車火災の3つをあわせて列車事故といいます。これらのうち、比率としては脱線が最も多いのですが、衝突もそれなりの割合を占めています。
 詳しいデータが残っているのは1902年(明治35年)からですが、毎年の列車事故の発生件数はずっと3桁です。特に、戦争末期の1944年は742件、翌45年も703件と、資材も人員も欠乏して非常に劣悪な環境のもと、事故が多発していたことがわかります。
 初めて100件を割ったのは1958年で、その後1964年(東京オリンピックの年)からは毎年2桁で推移しています。

 鉄道事故史の本に載っていなかったということでしたが、事故は毎年何百件も起こっていましたので、当然ながら、大きな事故を中心に書くことになるでしょう。中には、100人を超えるような死者を出す重大事故(主として脱線や信号取扱いミスによる)も何度かあります。それらに重点を置いて記述すれば、どうしても急行の追突などは陰に隠れる形になってしまう、ということではないでしょうか。

 しかし、探してみると全くないわけではありません。
 1941(昭和16)年9月16日、山陽本線網干(あぼし)駅で起こった追突事故は、ご質問者がおっしゃっているパターンに当てはまると思われます。
 停車中の上り普通列車に、後から来た上りの急行列車が場内信号機の赤現示を無視して時速85キロで突っ込み、65人が亡くなっています。
 当時はまだATSはなく、これがきっかけでようやく整備に取り組むことになったそうです。

 他にも、「場内信号機の無視」「ポイント切り替えのミス」といった事故はかなり頻繁に見られます。
 たとえば、1930年4月25日、東海道本線石山駅。本線がふさがっていたので、後続の列車を待避線を使って通過させようとしたが、場内信号機の注意現示を無視してポイントで脱線、13人負傷(「後年もこの種の事故は繰り返された」と書かれています)。

 1941年1月18日、常磐線四ツ倉駅。停車中の上り貨物列車に、後続の上り旅客列車が追突、2人死亡。原因は貨物列車の到着後に場内信号機を停止現示にするのを忘れたため。

 1964年10月26日、水郡線下菅谷駅。停車中の普通列車に後続の普通列車が追突。原因は四ツ倉駅と同じパターン。

 最後の2つは、衝突した方の列車が、本来「通過」させる列車ではなかったようですし、石山駅の事故も追突はしていませんので、質問者さんのお考えの事故とは異なるかも知れませんが、原因の所ではつながっています。
 こういったケースがある以上、通過列車が誤進入して追突という事故も(載っていないだけで)それなりに起こっているのではないかと考えられます。もし本当に皆無だとしたら、奇跡的な偶然というべきでしょう。
 また、はっきり「皆無」だとわかる「鉄道事故史の専門書」をご覧になったのでしたら、ぜひ読んでみたいので、書名・著者名などをご教示いただければと思います。

A. うにうにさんから

 続けて、うにうにです。実は、いちばん大事なことを書き忘れていました。
 前の回答で縷々述べてきたのは、物理的に追突を回避する、いわばハード面の話ですが、その大前提としてソフト面がありました。
 ある意味では当たり前すぎるので、つい書き忘れてしまっていましたが、本当はまずそちらが先にあって、それを確実に保証するのがハードのシステムというべきでしょう。
 そのソフト面とは、
「待避線を設けてある駅でのみ追い越しが発生するように、列車ダイヤを組む」
です。