--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.742 (2009.04.04)

Q. なるみさんからの疑問

「素朴」ではないことはわかっているのですが、質問させてください。
 電波についてです。
 スピーカーから音楽が流れているときは、スピーカーから「音の波」が出ているのですよね? 音は目には見えないのですが、その振動を鼓膜でキャッチしているのだと、「納得」できるのです。
 わからないのは、電波です。
 ラジオ放送は、どうやって、どこから「電波」を出しているのですか? また、私たち受信する側は、どうやって「電波」を受信しているのですか?
 音だったら、聞きたい音も聞きたくない音も聞こえてしまいます。電波もたくさん届いているのに、どうして目的の電波だけを受け取ることができるのですか? また、逆に、音の場合でも、「目的の音」だけを選んで聞くなんてことが可能なのでしょうか?

電波はどうやって出てきて、どうやってキャッチされるか?
 さあ、「納得できるように」説明していただけますか?(星田)


A. Shoichiさんから

 電波を説明するのは、磁界と電界の関係を理解してもらわなければならないので非常に困難です。そこを承知で誤解を恐れずに、ごくごく簡単に言ってしまえば、放送局は強力な電磁石で磁力線を放出しているのです。
 その磁力線の届く範囲にあるアンテナには微弱な電流が起こります。ラジオやテレビはその電流を聞こえる(見える)ように大きく(増幅)しているのです。
 電波には周波数という決められた枠で放送されているので、いろいろな電波の中からめあての周波数(放送局)に合わせる(同調)するのです。
 雷が近くなるとAMラジオからガリガリという音が聞こえますよね。あれは、放電現象である稲妻が電波を出しているからです。しかし、それはあらゆる周波数が混ざっているので、どの局を聞いていても聞こえてくるんですよ。

A. 異邦人さんから

 仕事でカーオーディオ開発をしていて音も電波も深く縁のある者です。
 電波は電磁波の一種です(身近な可視光線なども電磁波の一種です)。電磁波は読んで字の如し、電界と磁界に深い関わりがあります。電気を流すと磁界が生じ、磁界があると電気が起きます。電波はこの現象が繰り返しおこなわれることによって空間を伝わっていきます。そして電波は金属にぶつかると電気が起きます。受信はアンテナなどの金属によりその電波を電気信号に変え、最終的にはその中に含まれる情報を我々は利用している形となるのです。VHFとUHFのアンテナ形状に違いがあるのは受信したい周波数に合わせているためです。
 音でも「目的の音」だけを選んで聞く事は可能でしょう。ただし需要がありません。なぜなら同一周波数の音はビープ音と言われるいわゆるブザー音でしかないからです。しかし一部の周波数音域を調整する機能は使われております。それがBass(低音調整)とかTreble(高音調整)と言った機能になります。 

A. 三田誠弘さんから

 音声→電波というのは、実は、3段階の変換をしているので、一言で説明するのは不可能ですね。

1、人間の音声は要するに空気の振動です。だから、アルミ箔のようなものを振動させることができます。そのアルミ箔の先に針をつけておいて、回転する太いローソクにあてると、振動が溝として刻まれます。こんどはそのローソクの溝に針をあてると、アルミ箔が振動して、音声が再現されます。これがエジソンの蝋管の原理ですね。

2、次のそのアルミ箔の振動を電圧に変換する装置を作ります。同じ装置を2つ作って回路で結ぶと、電圧の変化がアルミ箔の振動に変換され、音声が復元できます。これはマイクとスピーカの原理で、ここで重要なことは、マイクとスピーカーはまったく同じ原理の装置だということです。
 ちなみにわたしはそのことを、大人になってからですが、学研のオモチャの回路(電子ブロック)で確認して驚いた記憶があります。そのオモチャでは、マイクのかわりにイヤホンを使うようになっていたからです。

3、音声が電圧の変化に変換されてスピーカーに伝わるということがわかれば、その電圧の変化を電気信号に変換して電波で送る。説明はこれで充分でしょう。この説明はデジタル放送の場合です。アナログ放送の場合は、もう少し複雑な説明になりますが、電話もいまやデジタルの時代ですから、アナログの原理をむきになって説明するのはむだではないでしょうか。

三田誠弘さんから、ご回答をいただき、感激しています。
  お忙しいところ、ご対応いただき、ありがとうございました。
  さて、上記の文中の「3」については、続くYOSHYさんのご説明をお読みください。(星田)

A. YOSHYさんから

 直感的に理解することは、大変難しいですね。
 私自身、専門家でもなく、その方面の学校を出たわけではありませんが、35年前の高校の教科書の知識から説明を試みます。
 放送局は放送を流すとき、搬送波と放送内容の二つを足し算して、電波塔(送信用のアンテナ)から流します。
 前者は、その放送局が割り当てられている中心周波数で、例えばNHK第1ラジオ(大阪)は666kHz が割り当てられています。
 後者は放送の内容〜音の高低に音の強弱を掛け合わせたもの……、平たく言えば録音された電気信号そのもの(高い音は高い周波数の信号で、大きい音は大きい振幅)です。
 この足し算の方法は、AM方式とFM方式の2種類があります(短波では、SSBという前者の亜流がありますが)。いわゆる、長波放送、中波放送、短波放送は前者で、FM放送は後者です。
 後者の方が雑音が入りにくいということで、当初音楽番組を主として流すところが多かったです。ただ、少しややこしいのは、その上のTV(VHF、UHF)ですが、確か音声はFMで、画像はAMで送っていたはずです。

 両者の差は足し算の方法が少し違います。
 AMの場合はそのまま足しますが(普通の音は正弦波のように上がプラス1までふれたら次はマイナス1までふれるわけですが、SSBでは電波がもったいないので、振幅の上半分だけ搬送波に乗せます)。
 FMの場合は音の高低を搬送波の周波数とのずれになるように(100Hz の音は中心周波数から100Hz、10000Hz の音は中心周波数から10000Hz ずれる様に)足し込みます。
 以上で、放送として送信する電波信号はできあがりです。

 次に、その信号を10kW くらいから、大国では1000kW などというレベルまで出力を上げ、電波塔(送信用のアンテナ)に電流として送り込みます。
 アンテナに送られてきた電気信号が増幅された電流は、アンテナ付近の電界を変化させ、その変化が行き着くところまで伝わっていきます(正確には、電界の変化と磁界の変化とが交互に起こるようですが)。
 今度は、受信側ですが、電波塔からの電界(磁界)の変化が受信用のアンテナに届くと、アンテナにそれに応じた電気信号が流れます(送信と全く逆のことです)。
 次の作業は、搬送波の部分を引き算します。昔のラジオでは、チューニングと言ってダイヤルをまわしながら引き算する周波数を調整します。
 きれいに搬送波を引き算すると、元の放送内容の音が出てくるわけです(SSBではそのときに切り捨てた下半分を複製し、普通の音にします)。
 では、普通の音と違って一つの局しか聞こえないのはなぜかと言うことですが、もともと、同じような周波数の局が近隣に存在しないような電波の割り当てをします(これは国内の話で、国外の大規模放送局、国内でも遠くの放送局では同じ周波数の搬送波を有しているものがあり、普通のラジオでは「混信」して両方の局の番組が聞けたり、どちらもよく聞こえなかったりしました。もちろん高級なラジオでは、強い電波の方だけを選択しますが……)。
 それと、もし、比較的近い周波数であっても、中波でも9kHz の差があるので普通の音より9kHz、18kHz 高い音となりますので、可聴域を超え聞こえにくくなります(実際はチューナー部分にフィルタがかかっており中心波からあまりはずれた電波は拾わないようになっていると思います)。

 ところで、普通の音で聞きたい音だけ聞くにはどうしたらよいか。
 人間の脳は、関心のある音、注意している音は他より聞き取れるようにはなっていますが(カクテルパーティー効果と言ったと思います)、完璧には無理です。ただ、音に指向性を付けて一定の方向の人にしか聞こえないようにすることは可能です。
 一般に波は周波数が高ければ高いほど指向性(一定方向に行こうとする性質)が強くなります。
 たとえば、周波数が低い「音波」という波は、少々発信している方向からずれても聞こえますし、少しでも、隙間が有ればそこから入ってきます。
 一方、周波数の高いものの代表として「光」は直進性が高く、何か遮るものがあれば(たとえば日食・月食)、影として直接波を遮ることができます(実際は、あちこちで散乱・反射したものがあたり真っ暗闇の影はできませんが)。
 この性質と放送局の原理を利用し、たとえば、超音波を搬送波としてそれに目的の音を乗せることは可能です。そうすれば、人間の可聴域(20kHz を超えた音はたとえ鼓膜を振動させたとしても全く関知されず、それに乗せた可聴域の音だけが「うねり」として聞こえるはずです。
 展示用のブースの間隔が狭く説明をスピーカーからそのまま流した場合、隣のブースを見ている人の聞こえるのを回避する手段として一時実用化されたはずです。