--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.763(2009.07.07)

Q. かかしさんからの疑問

 ある漢字について、疑問を持っています。
 それは、「曲」という字です。いうまでもなく、訓読みだと「まがる」と読みます。音読みだと「キョク」です。
「曲学」「婉曲」という熟語なら、「キョク」と読みながら、「まがる」という意味を感じることができます。
 ところが、「キョク」には、音楽の「キョク」があります。「名曲」「歌曲」の「キョク」です。音楽の曲の場合、私には、「まがる」という意味を感じられないのです。
 音楽の「キョク」と「まがる」には、関連があるのでしょうか? ぜひ、教えてください。

「ほぉ〜」と感じられる疑問です。私もぜひ、知りたい!(星田)


A. ごんたさんから

 私の個人的な意見ですが、一本調子である「音」に高低という加工を加えて出来たのが「曲」なのだと思います。
「音」をいろいろ「曲げる」という解釈なら、十分繋がりがある言葉だと思うのです。

A. Rinさんから

 基本にかえって漢和辞典を引いてみました。
 説明をかんたんに表現すると、

   曲がる→曲がりくねった道→まっすぐな道より変化があるもの→
   音程に変化がある音→楽曲

 さらに、

   平穏な日常に対し、変化がある物語→起伏に富んだ物語→戯曲

というものも。
 ずいぶんまわりくどいかもしれませんが、漢字のもつ長い歴史のなかでは、このくらいの変化が長い年月かけて起こるのでしょう。

A. 子沢山さんから

「曲」の反対は、「直」ですね。
「直」には、「まっすぐ」、「正しい」、「じかに」などの他に、「飾り気がない様子」などの意味があります。「素直」などがその例です。
 これに対する曲は、「曲がっている」、「不正」の他に、「飾った面白み」という意味を持ちます。「曲芸」などがその例です。
 この面白みの一つとして、言葉に抑揚をつける、「節まわし」を「曲」というのです。そこから、「音曲」などの言葉が生まれ、今の、「曲」の意味が生まれたようです。

A. 朝霧圭太さんから

 音を「まげる」とできたのが「曲」ということだと思います。

  ド・ド・ド・ド・ド・ド・ド

なら曲にはなりませんが、

  ド・レ・ミ・ド・ミ・ド・ミ

と音を上にまげたり、下にまげたりすると曲ができあがります。

A. 爽雨さんから

「曲」という漢字ですが 古い文字では金文にあります。こんな形でした。

     

 これが時代と共に変化し、篆書体では「U」に曲がった形に変化し、現在の「曲」へと変わっていったのですが、元々は竹や蔓などを編んで作った籠の形の象形文字で 竹や蔓をまげることを意味しました。
「まがる・まげる・こまごまとした・くわしい」の意味に使う文字で「枉曲(おうきょく)=法を曲げること」に使うようになったようです。
 現在は歌のふしの意味に使われることが多く「名曲」「歌曲」と使うようになったのです。音楽の曲も真っ直ぐでなく曲がっているとは考えられませんか。
 事実や相手の言葉などを曲げて解釈することは「曲解」、真理を曲げた誤った学問を「曲学」、心がひねくれていることを「邪曲」と使うように、曲がっていることに使っていますね。

 漢字は最初に出来たものの形をそのまま象る象形文字だけでは足りませんので、その字を2つ、3つ組み合わせて会意文字を作ったり、その字の音を表す形声文字を作ります。
 また、ちょっと複雑になりますが転注、仮借のように、元々なかった字形として表しがたいものを、同じ音の別の字の音のものを借りて表すこともあります。たとえば「冬」は、編み糸の末端を結びとめた形の象形文字で「終」の元の字なのです。これを四季の「ふゆ」に使うようになったのは仮借の用法で、「ふゆ」の意味に使うようになったので、区別するために、「おわり」の意味の漢字には糸偏をつけ「終」としたたようです。このような例は、

   「申→神」、「云→雲」

などたくさんあります。
 このように文字が誕生して3,300年になります。字形も変わっていますが、使い方も変化したようです。