Q. みつさんからの疑問
いつも楽しく読んでいます。挿し木についての疑問があります。
園芸には詳しくないので、挿し木ができる植物といえば、アジサイくらいしか知らないのですが、枝を挿して増やす方法ですよね。
あの枝の上下を間違えて挿し木したら、やっぱりうまくいかないのでしょうか? 成功率が下がる程度で、うまくいくこともあるのでしょうか?
★それで、思い出したのですが、うちの観葉植物のパキラが天井まで達して窮屈そうなので、適当なところからバッサリやりました。切り落とした枝を15cm程度に切りそろえて、そのうちの1本を鉢に挿しました……。そしたら葉っぱが出てきちゃいました! 上下が正解だったのかな?
今では、バッサリやった方のパキラが天井に達しています。(星田)
A. bluestarさんから
これはあくまでも想像ですが、さし木する植物は、基本的にどこで切っても根付くと思います。
根は重力に従って下に伸び、土中の水分や栄養分を吸い上げ、枝葉は日光を求めて上に伸び光合成をおこなうよう遺伝的に決められてると思います。
したがって、上下逆さまに植えても多少の成長の遅れはあっても、成長するのではないでしょうか?
茎の中の維管束(水を通す管)に人間の血管のような逆流防止弁があるとは思いませんので……。
A. たけうみさんから
結論を先に言うと、さかさまではうまくいきません。
植物の茎には極性があり、茎の上下方向が決まっています。茎の切り口の先端側からは芽が、切り口の根側からは根が生えてきます(本来できるべき所ではないところにできる芽や根なので「不定芽」「不定根」といいます)。
逆さにすると、逆さにした上側には根が、逆さにした下側には芽が出てきます。
茎の極性には植物ホルモンが関係していると考えられています。カルス(未分化の細胞塊)が何に分化するかは「オーキシン」と「サイトカイニン」という植物ホルモンの濃度で決まるので、極性についてもこれらの植物ホルモンに関係ありそうです。
高校生物の教科書には、この極性のことが出ています。ご参考までに。
A. まいねさんから
無理みたいです。
ご質問を読んでまず思い当たったのが、弘法の逆さ杖伝説ですね。
弘法の逆さ杖伝説というのは各地にあるようで、各地の大木(枝垂れになっているものの由来を示すことも多い)の由緒として伝えられているようです。弘法大師(親鸞聖人のこともある。いわゆる旅の高僧)が手にしていた杖を挿していったところ、それが根付いたというのが主な内容ですが、それが上下逆さだったため、芽吹いたその木は枝が下向きに伸びるようになったというふうに、珍しい枝垂れの木の理由付けに高僧の法力を当てている形と見えます。それも、長年杖として使って乾燥しきっているものから芽が出るというところが高僧のパワーの強さを物語っているのではないでしょうか。
翻って、枝の上下を逆さにしてはふつう根付かないものという常識があってのことと推察されるのではないかと思われます。
枝垂れの木に弘法大師が逆さに挿した杖の起源をもつものの例
・長野県南安曇郡奈川村
・奈川村野枝垂栗(村指定天然記念物)
弘法大師が通りかかったときに挿した杖が根付いたもので、逆さに挿したので枝が下向きに伸びるようになったという伝説があります。
でも、ふつうに園芸のQ&Aを見ると、挿し木で枝の上下を間違えると根が出てこないから気をつけてってすぐに言われてますね。細かい生物の話は抜きで、経験上の常識のようです。
高校の生物の話というと、わたしにとっては昭和、バブル前になってしまいますが、たしか、植物の成長についての単元で、植物の茎を1センチぐらいに切って、シャーレの水に浸したカット綿かなんかの上においておくと、根に近い方からは根が、てっぺんに近い方からは葉がまた出てくるんだよというようなことを教わった気がします。
もとの茎のどの辺を取っても、より下の方から根っこが出る、細胞が、自分は根っこに近い方だということを覚えているんだという持って行き方だったような。だから、植えられたときの上下、すなわちその状態での重力は細胞の
「記憶」を覆すことはできないということで、逆さに植えてももと根に近い方からは根が出てしまう、出ようとしてしまうので、結果、根付くことはないということではないかと思われます。バブルを経て、学会の方も新しい実験をやって新説が流布しておるようでしたらゴメンなさい。
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