--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.775(2009.08.29)

Q. bluestarさんからの疑問

 最近の若い人たちの言葉で気になることがあります。
「4分」の言い方ですが、私は「よんぷん」と読みます。それを「よんふん」と言う人をちょくちょく耳にします。
 その方式で考えると「1分」は「いちふん」になりますが、そこはほとんどの方が「いっぷん」と言います。
 はたして「さんふん」「よんふん」と「さんぷん」「よんぷん」、どちらが正しいのでしょう? 学校ではどちらで習うのでしょうか?

「どちらが正しい」というのはないと思いますが、みなさんの周囲の状況をお伝えください。(星田)


A. ごんたさんから

 私の周囲にはそのような若者(?)がいないのであまり「さんふん、よんふん」と発音する人に遭遇した記憶はないのですが、人に説明する場合、

   「さんぷん、さんふん」
           ^^^^
と二回言って「分」を強調することはあると思うのですが、そのような使い方なら誰でもあるのではないでしょうか?
「分」なら2通りですが、「匹」だと3通りになりますが、その辺の違いを若者がどうしているのか興味はありますね。
 数によって単位または数の読み方が変わるのには規則があると思いますが、表記上は同じなので学校では教えることはないと思います、少なくとも私は習った覚えはありません。
 どちらが正しいかという疑問に関しては星田さんのおっしゃるように、どちらが正しいと決める事は難しいと思います。

 さんぷん:言いやすさを優先
 さんふん:意味をはっきり伝える事を優先

と私は分析するのですが、どうでしょうか?

A. まいねさんから

 国語学に関連したお話なので及ばずながら自説を申し上げます。
 これは、日本語の「ハ行」がややこしいことから発生しています。
 お尋ねの件は、「分」という言葉に限らず、ハ行の音で始まる、たとえば同様の序数詞「本」などについても言えます。
 1から10までの数にこれらの序数詞が付くとどうなるかを書き出してみますと、以下のようになります。

   いち……いっぷん……いっぽん
   に………にふん………にほん
   さん……さんぷん……さんぼん
   よん……よんぷん……よんぼん
   ご………ごふん………ごほん
   ろく……ろっぷん……ろっぽん
   しち……しちふん……しちほん
   はち……はっぷん……はっぽん
   きゅう…きゅうふん…きゅうほん
   じゅう…じっぷん……じっぽん

※NHKなどでは「じゅっぷん」ではなく「じっぷん」が正しいととっているようです。

「分」と「本」では、ほぼ同様の変化になることが解ると思います。これは、前に付く言葉の発音に由来しています。

 1) いち、はち → っぷ・っぽ(促音化+半濁音化)
 2) さん、よん → ふ・ぼ(濁音化:濁音便)
 3) じゅう   → っぷ・っぽ (拗音省略+半濁音化)

というようにパターン分けをしてみます。

1)
 これは、前に付く言葉の音が、「ち」で終わっています。
 この「ち」という音は、発音の成り立ちでいうと、一度舌を歯茎に付けて、息を溜めて出す音ですね?  ところが、問題の「ふん」、または「ほん」のハ行の音も、一度息を溜めてから開けたままの口に息を擦らせるようにして出す、ある意味珍しい音なのです。それを続けて発音するということは、短い間に息を止めて溜めて、止めて溜めてすることになり、やや忙しいです。
 そして、日本語は結構そういうややこしいことを嫌います。
(「あらたしい」が「あたらしい」に化けちゃったり、「山茶花(さんさか)」が「サザンカ」になったり、近いところで「秋葉原(あきばはら)」が「あきはばら」になったのはそういう理由らしいですよ)
 で、息を大きく溜めてごまかしてしまうのです。すなわち溜めたところは小さい「っ」の促音になり(促音便)、その分難しい「ハ行」の音を出しづらくなって、唇を一度閉じてより力が入った「パ行」の音、すなわち半濁音になってしまうのです(「はん」と読む犯、班、「ひん」と読む品、「へん」と読む篇、辺等の字もこうなると思います。「前科一犯」、「一品料理」、「一辺の長さ」など)。
 じゃあ、なぜ濁音「ぶん」「ぼん」にならず半濁音になるかというのは、ノリとしか言いようがないですね。
 音韻学では「p」は無声音、「b」は有声音ということになっているので、息に声が乗っていないだけ、ということで、ほんと、そこまでやっちゃ別物になるから、ぐらいの勢いの差じゃないでしょうか。
 ただ、音便化していない「はちふん」、「はちほん」は存在しているようです。その辺はあまり上手く理由付けできなくてすいません。

2)
 こちらは「ン」という音で終わっています。
 これは唇を閉じてしまうか、舌で息をせき止めて、鼻に響かせる音なのです(両方あることに注意、後述)。難しい「ハ行」の音を出す前に、息が一度止まっているので、こちらも力が入って、一度唇が閉じ、濁音化してしまうのです(濁音便)。
 濁音と鼻に抜く音は仲良しこよしです。動詞の連用形で「読みて」と言うべきところを嫌って鼻に抜いてごまかす(撥音便)と、「よんて」になりますが、そうなると、次に歯茎に舌を付けて息を止めるタ行の音が頑張りすぎて濁音化してしまいます。それが、「読みて」が「読んで」になる原理です。

3)
 これはちょっと学問的にはあやしいですが、拗音である「じゅ」に難しい「ハ行」がつくことで促音化プラス半濁音化したところ(1)の類似例)へ、ややこしいのを嫌って拗音の方を省略したと思われます。
 で、そういう発音のややこしいところのない「に」その他、は普通に「ふん」、「ほん」をそのまま付ける発音になるわけです。
 昔のローマ字(ヘボン式:駅名表示やプロ野球のユニフォームの名前表記)を習った方は、「ン」の音を表わすときにmを使ったりnを使ったりしたのを覚えておられるかも知れません。
 ヘボン式は、英語に近い、ヨーロッパ人が耳で聞いたように綴って、これを読めばちゃんと日本語になるように表わすことを目的にしたローマ字なので、当時の発音とその理論が生きています。
 ヘボン式では、バ行やパ行、マ行の前の「ン」はmで書くんです。それは、日本語の方で、バ行やパ行、マ行の前では唇を閉じて鼻に抜き、その他、ア行やカ行その他唇を閉じない音の前では舌で遮って鼻に抜いていることをちゃんと聞き分けていたからなんです。
 ですから、新橋は「shimbashi」、天満町は「temmacho」が正しいはずです。どうです? 書く方も言う方も、その通りにやってますか? ということで、「さんぷん」のローマ字は「sampun」になります。昔の人は偉かったなあ。

A. ごまさばさんから

 まいねさんのご回答のなかで、

》※NHKなどでは「じゅっぷん」ではなく「じっぷん」が正しいととっているようです。

との記述がありましたが、私の小二の息子の国語の教科書に「じっぷん」と書いてありました。
 息子がそれを読んでいて、「じっぷんじゃないぞ、じゅっぷんだぞ」と教えてしまいました。「じっぷん」が正しいのですね……。
 その他、テレビのアナウンサーの読み方で「ー(長音)」を表現しないなど、最近気になることがよくあります。
 たとえば、先日F1を見ていたときに、「ファステストラップ」と言っていましたが、「ファーステストラップ」とは発音しないんだぁ、と違和感を持ちながら見ていました。関係ない話ですみません。