--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.804 (2010.01.19)

Q. kztさんからの疑問

 古代からある武具の話です。
 槍と矢を考えてみますと、手に持って使う槍と、弓で射る矢は、使い方に違いはあっても、いずれも細い棒の本体に、硬く鋭利な先端部を有しているという基本的な形態ではよく似ています。先端を研いだり、場合によっては毒を塗ったりする点も共通です。
 槍の最先端は「穂先」といいます。これは万人が違和感なく受け入れることができます。
 しかし、
矢の場合、的に突き刺さる、とがった側の名前は「矢尻」というのです。なぜいちばん先端の部分なのに尻なのでしょうか? 矢の最後尾、羽根のさらに後ろが矢尻というのなら、まだ解りますが……。矢尻は「鏃」とも書きますが、音がシリであることには変りありません。
 ちなみに英語では、矢尻は「arrowhead」、槍先は「spearhead」です。いずれも、名は体を表していて、違和感なく受け入れられます。どうやら、日本語だけの問題のようです。

東京証券取引所の「アローヘッド」も話題ですね。
  『龍馬伝』の初回でも、目頭と目尻の問題をやってましたね。
  なぜ、「矢尻」なのか? こういうのって、きっと、答えがあるのですよ。(星田)


A. 賢さんから

「シリ」という言葉は、動物の臀部から転じて、「器物の下の端」という意味があるようです。
「矢尻」という名前が決まる前のことを考えてみてください。
 地球上には重力がありますから、矢は床の面に置かれて保管されます。たいていは、矢筒に入れて保管されます。このとき、尖っている部分は、底に接しています。
 矢を取ろうとする人間は、当然上から矢を掴もうとします。矢の尖っている部分を上に向けて置いておくと、慌てているときなどに手に刺さってしまうかもしれません。当然、矢の刺さる部分は下に向けて置く習慣になるでしょう。「矢の下の端」だから、矢の「シリ」であり、「矢尻」です。
 西洋剣や日本刀は一般に「横向きに置いて」保存、展示されます。この段階では、どちらが「先」でどちらが「尻」とするかは決められません。
 矢と同様の例を探してみたところ、日本刀の鞘の先端(中の刃の切っ先側)は、実用的に常に「下に向けて」いるせいか、「鞘尻」と呼ぶそうです。

A. 岐泊さんから

「やじり」がなぜ「矢」の「尻」なのか。
 それは「しり」(尻)という語に古く「(物などの)端、または先」という意味があったことに由来するのでしょう。
「尻」を同様に使う語としては地名にある「野尻」(野の端)、現代ではほとんど使いませんが、「川尻」(川の端、川口(かわぐち)とも言います。現代では「河口」と呼ぶことが多いかな?)などがあります。
 つまり「やじり」とは本来、「矢の先」という意味を持ったことばだったのです。
 ちなみに広辞苑などで「矢」を引いていただけば図解があると思いますが、矢は大きく「鏃(やじり)」と「箆(の)」に分かれ、「箆」の端に弓の弦に引っ掛けるためのY字型部品「矢筈(やはず)」があり、その下に羽がつきます。
 というわけで、矢の鏃と反対側の端は「ヤハズ」と呼んでいます。

A. 子沢山さんから

 先に回答されている方の内容と重複しますが、矢に対する日本人の認識が関与するのだと思います。
 kztさんがご指摘の通り、槍の先端“穂先”、英語での矢の先端“arrowhead”というのは、槍や矢が使用される状態から名付けられたことは明白です。
 ところが、日本語での矢の先端“矢尻”というのは、矢が矢尻を下に立っている状態から名付けられたことになります。
 あまり一般的ではありませんが、杖の地面に接する部分を「尻」といいます。また、矢尻の異称に「根」という言い方があるようです。これらから考えると、やはり日本人の矢に対する認識には、矢が矢尻を下に立っている状態、すなわち矢が保管、収納されている状態が基本になっているようです。
 どうしてこのようになったかは個人的な推察になりますが、日本の弓矢の構造やその使い方に理由があると思います。
 アーチェリーに代表される洋弓と異なり、構造のシンプルな和弓は扱いや構造が大変デリケートです。普通に狙って撃ったらそれてしまうため、最初からずれの分を補正して狙いを定めなければなりませんし、矢を放つときに弓と矢が当たらないように弓を少し回すなど射手がすべき動作が多く、弓や弦の材質や硬さの調整なども細やかです。
 そうした状況で、矢に関しては矢の軌道を安定させる矢羽や弦にかける矢筈(はず)と呼ばれる端側に、より大きな注意が払われ、こちら側が矢の中心、頭とも言うべき認識が生まれ、先の保管された状態での名付け方になったのではないかと思います。