Q. お京さんからの疑問
病院に行くと待たされてばかりです。待たされるのは嫌いなクセして、自分の番が来たら、ゆっくりと診てもらいたいと思うのです。
そこで、疑問です。
今の日本で、いちばん足りないのは、どの科のお医者さんなのでしょうか?
やはり、ニュースでよく話題になっているように、産婦人科医なのでしょうか?
私は、医学部を希望しているわけではないのですが、どうも気になっています。
★歯医者や眼科などでは、予約制のところが多いので、待たされることは少なくなりましたね。ところが、大学病院などでは、予約をしていても、1〜2時間待たされるのもよくある話です。
海堂尊さんの本を読んでいると、解剖医が足りないとかよく書いてありますね。(星田)
A. ラケルさんから
私は、心の病気を診てくれる医師が不足だと思います
今はストレス社会と言われており、心の病に罹る人が多く成っていますが、精神科や心療内科の看板を見ることがほとんどありませんので、仮にうつ病かなと思ってた場合でも、どこに相談すればよいのか判りません
逆にいちばん多い医師は、歯科医師だと思います
どんな町にも、歯科医院の一軒以上は有りますので、その内共倒れにならないかと思っておりますが……。
A. nagiさんから
いつも興味深く拝見させていただいております。初めて投稿しますが、よろしくお願い致します。
まず、医師数などに関しては厚生労働省が2年ごとに調査し公表
されています。現時点での最新版は平成20年度のものです。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/dl/gaikyo1.pdf
医師の忙しさは需要と供給のバランスで決定されますが、各科の仕事の尺度が違うことから単に人数だけでいちばん足りない科はどことは言えません。現実は、勤務医はどの科も忙しいと思います。敢えて相対的に忙しい科を挙げるとすれば、産婦人科、小児科、救急科、内科全般などかとは思います。
ただこれだけでは現状はよくわからないと思いますので、もう少し詳しくお話し致します。
医師は以下の3つに大別されます。
(1) 基礎医学に従事する医師
(2) 病院等に勤める医師(勤務医)
(3) 診療所等を運営する医師(開業医)
ちなみに「解剖医(法医学医)」は(1)に属します。医師不足が昨今叫ばれていますが、今問題になっているのはこのうち(2)の勤務医が不足していることです。(1)もかなり少ないですが、身近に感じられにくいため問題化されることは極めて稀です。
勤務医(特に地方)が不足するようになってしまったのには、医療が細分化して以前より専門性が強くなったこともありますが、それ以外にも大きな理由があります。
一つ目は社会保障費の抑制です。
日本は典型的な少子高齢化社会であり、高齢者が増えれば病院に来る人が増え、社会保障費がかさむ事は誰でも理解できるのではないのかと思うのですが、それに逆行して特にこの10年間は社会保障費の抑制が強力に押し進められました。その結果、医療スタッフが火の車で働いているにもかかわらず、約8割の自治体病院が赤字という不思議な事態となりました。またその影響は地域医療の中核を担っていた中小病院により強く影響を及ぼしています。これは明らかに各病院の責任ではなく、制度的な欠陥に他なりません。病院が赤字では新しいスタッフを見つけることは難しく、現場は疲弊しスタッフは燃え尽き辞めていき、残ったスタッフの負担は更に重くなるという悪循環に陥っています。
今年10年ぶりに診療報酬が増額されましたが、単に下げ止まったとの印象で、実質は4年前の水準以下のままです。
二つ目は女性医師の増加です。
以前は1割程度であった医学部の女子占有率も、最近では3〜4割ほどに達しています。しかしそれらが医師として皆定着するわけではありません。当然ですが、勤務医は基本的に24時間365日いつでも呼び出しがかかる状態で当直もあります。また当直明け勤務は当たり前ですので、結婚し子どもができれば仕事と家庭の両立は極めて困難であり、医師免許を持っていながら家庭に入らざるを得ない女医さんは多いです。
三つ目は医療を取り巻く環境の変化にあります。
具体的にはいわゆる「コンビニ受診」や医療訴訟リスクの増加などです。少ない人数で何回も当直しているわけですが、軽症でも気軽に深夜、患者さんは来院され疲労は蓄積されます。緊急処置を要する重症患者さんは当然受診されるべきですが、具体的には薬がなくなったと深夜に受診される患者さんもおられますし、救急車をタクシー代わりに使う患者さんすらおられます。(地域と病院の規模によりますが、救急受診患者の約8割は軽症とのデータがあります)
また、医療行為にはリスクが必ず伴いますが、その大原則を認識されずに感情に任せて訴訟を起こされるケースが後を絶ちません。良かれと思って行ったことが悪い結果を生むことは当然あり得ます。産婦人科医や小児科医が他科と比べて少ない本当の理由は、昼夜無く忙しいということよりも、医療訴訟の実に7割は産婦人科と小児科で占められることを、医療関係者は皆常識として知っているためだと思います。
この他にも臨床研修医制度など様々な問題があり、複合的な理由で結果的に勤務医が不足しているのが現状です。
少ないのであれば医師数を増やせばいい、と言うのは、あまりに問題を単純化しすぎておりナンセンスだと私は考えます。今後の日本の医療についてどのような理想を持ち、それを実現するため社会としてどのような責任や負担をしていくのか、国民的な議論が必要な時にきているのではないでしょうか。
A. 隠れ鉄道ファンさんから
たしかに社会保障費の抑制・女性医師の増加・医療を取り巻く環境の変化等によることも挙げられますが、もう一つ大事なのは、救急救命に関係する医者・看護師等の関係部署の方ではないかと思います。中小病院では救急救命処置設備がなく、大病院でさえ断るケースがあり新聞・ニュースで報じられています。
海外からの医師・看護師雇用も一つの案と思いますが、障害の想像として言葉・文化生活環境の相違と日本医師会が海外雇用者に対して断固反対しているのではないかと思います。
現実フィリピン国では医者・看護学校卒業(研修期間含む)後、約3分の2が海外就職(契約期間)と聞いています。
それて救急救命は3K(きつい・休みがない・給料安価)があり、このあたりの労働改善・就職先がないと言いつつ、仕事を選択する甘さに問題があると思います。
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