Q. 順子さんからの疑問
今度、2016年にブラジルのリオデジャネイロで「夏の」オリンピックがあります。南半球の国でオリンピックが開催されるのは初めてではありませんが、珍しいことだと思います。
南半球の国で夏のオリンピックを行う場合、開催時期、場所、競技方法など、何か特別な配慮事項があるのでしょうか? それとも、南半球に住んでいた人が北半球のオリンピックに出場するのが逆になっただけの話で、特別な配慮はないのでしょうか?
「南半球での開催ならでは」のようなことを知りたいと思います。よろしくおねがいします。
★シドニーやメルボルンでも、夏のオリンピックは開催されています。(星田)
A. Issieさんから
なかなか回答がないようなので、開催時期だけ調べてみました。
南半球での夏季オンリンピックは過去のメルボルン、シドニー大会と、今度のリオデジャネイロ大会の3回です。それぞれの開催時期を見ると
1956年 メルボルン 11/22〜12/
8
2000年 シドニー 9/15〜10/
1
2016年 リオデジャネイロ 8/ 5〜
8/12
というわけで、メルボルン大会が「南半球らしく」かなりずれて開催されています。それでも年内開催ですが。現地では「春」なんでしょうね。シドニーは最近の大会で標準となっていると思しき8月から1月遅れとなっています。
リオデジャネイロは「標準そのまま」ですが、ここはもともと熱帯で気温の季節変化のあまりない所ですから、どこでやっても変わりはないのかもしれません。それでも、8月がいちばん「涼しい」季節であるようです。
1896年のアテネ大会で始まった近代オリンピックですが、最初のアテネ大会(4/6〜15)を除いて、初めの頃は何か月もの期間にわたって開催されていました。たとえば万博とセットだった1900年の第2回パリ大会は5/14〜10/28、1908年の第4回ロンドン大会は4/27〜10/31と、夏をはさんで春から秋まで。ほかの大会も3か月ほど、夏を丸ごとかけて開かれていました。
現在のように約2週間となったのは、1928年の第9回アムステルダム大会(7/28〜8/12)から。このあと、1936年の第11回ベルリン大会(8/1〜16)までは最近の「標準」と同じ8月前半に開かれています。
この標準から初めてはずれたのが、ほかでもない1940年の第12回東京大会でした。期間は9/21〜10/6。当時の新聞には、気候統計上、オリンピックにいちばんふさわしい時期はいつかを調べて決めた、という記事があります。もっとも、この大会は日中戦争が始まって返上してしまいました。
けれども、1964年の第18回大会が10/10〜24に開かれたのは御承知の通りですね。
1964年東京大会の次の1968年メキシコ大会も、10/12〜27と東京とほぼ同じ時期に開催されました。1988年の第24回ソウル大会は9/17〜10/2。
こうして見ると、以前はある程度の開催時期の融通はついていたようです。けれども最近は、2008年の第29回北京大会(8/8〜24)のように、現地の気候があまり考慮されないようですね。
2016年に立候補していた東京も7/29〜8/14なんて時期を予定していました。今年、2010年のような猛暑だったらどうするつもりだったのでしょう。
もしかしたら、現在のオリンピックは純粋なスポーツ競技以上に、営業面やプロ団体との調整があって、時期の融通がつきにくいのかもしれません。
ちなみに夏季大会よりもずっと開催時期の制約の大きい冬季大会は、過去いずれも2月頃。
いちばん南で開かれたのが1998年の長野大会で、南半球での開催はありません。そもそも亜寒帯(冷帯)に相当する緯度帯に陸地がない南半球では、冬季大会を開ける都市自体が限定されてしまうので、なかなか開催は難しいかもしれません。
★南半球での開催の場合、「規定」として何か配慮事項があるというよりも、開催地の方で、工夫を重ねるということになるのでしょうね。(星田)
A. Rinさんから
オリンピック開催地の制約についてですが、気候の他に地形も深くかかわるようです。
第二次大戦の前は、中止になった札幌大会を含めて原則として夏季大会と同じ国で開催しましたが、1928年のみ冬はスイス、夏はオランダでした。
冬もオランダに開催権があったのですが、オランダは低地が多くスキーができる山がなかったためだといわれています。
逆にスイスとオーストリアは冬季のみ。山国なので夏季大会用の広い土地が少ないのかも。しかし、これらは克服されていくでしょう。
1908年ロンドン大会より前は水泳を自然の川や湖などでしましたが、テムズ川の汚濁がはげしかったロンドンでは当時はめずらしかったプールでおこない、今ではプールが主流です。将来は暑い国で人工スキー場で冬季大会をするかも。ただ五輪終了後も人工スキー場の需要見込みがなくては作らないでしょうけど。
いずれ南半球でも他の大会と変わらずに行われたり、ヨーロッパとアメリカの開催地争いの末に、中間地点として北大西洋の真ん中アイスランドで、屋内や地下施設で暖房に守られて行う、なんてこともあるかもしれません。
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