カナのキー配列は、1923年に山下芳太郎とBurnham
Coos Stickney が作ったカナタイプライターが元になっています。
山下は、日本語から漢字を追放しカナ書きだけにしよう、という活動をおこなっていて、その目的のため単身ニューヨークに渡り、カナタイプライターを作ってくれるよう
Underwood という会社に頼みに行きました。そこで、Underwoodの技術者だったStickneyと、カナタイプライターのキー配列を考えたのです。
Stickneyは、五十音の各行をそれぞれ近くに集めておいた方がキー配列が覚えやすい、と考えました。そこで、アイウエオを上の方に、カキクケコをまん中に、サシスセソをその左下に、タチツテトをそのまた左に、という形で作っていったのが、このキー配列です。それぞれのキーに2つずつ文字が入っていて、数字やセソヘケなどはシフトキーを押しながら打つしかけでした。
1952年に日本タイプライターという会社が、アルファベットとカナの両方を打てるタイプライターを発売しましたが、この時にカナのキー配列は大きく変更されました。QWERTYUIOPを入れるため、小書きのィや記号などは削られました。ASDFGHJKLのために数字がいちばん上の段に移されて、小書きのァゥェォャュョなどは削られました。ZXCVBNMを入れるため小書きのッは削られ、セソヘケムメが右の方に追い出されました。
1965年にはIBMが、アルファベットとカナの両方を使えるコンピュータ用のキーボードを製作しました。この時、ヲが削られてソが元の位置に戻りました。また、シフトキーなしで全てのカナが打てるよう、ヌやロや半濁点は新しいキーに移されました。
さらに1970年に電電公社(現在のNTT)が、小書きのァィゥェォャュョッを復活させて、ヲを追加したコンピュータ用のキーボードを作りました。この電電公社のキー配列が、現在のパソコンのキー配列に受け継がれているのです。
つまり、初期のカナタイプライターでは五十音順を元にしたキー配列だったものが、たくさんの人がその時その時の変更を加えていくうちに、現在のパソコンのキー配列になったのです。したがって、それぞれのキーを移動させた理由はあっても、キー配列全体が1つの理由で説明できるわけではないのです。