--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.982 (2012.07.01)

Q. けいごさんからの疑問

 デンマーク、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイスランドの国旗には、長さの違うまっすぐな線で十字が描かれています。
 これらの国には、歴史的に何か共通点があるのですか?

ほんとだ! アイスランドもそうですね。言われるまで気がつきませんでした。(星田)


A. kamaさんから

 これら北欧の十字国旗は、スカンディナヴィア十字(またはノルディッククロス)といって、元をたどるとデンマークに行きつきます。
 デンマークは古い歴史を持つ国で、11〜14世紀にはイングランドを含む北欧周辺を支配する大国になっていましたが、1523年にスウェーデンが独立しています。フィンランドもアイスランドもノルウェーもデンマークとスウェーデンに翻弄されてきた歴史があります。
 スウェーデンの特徴的な青に黄色の十字は、1157年にエリク9世が青空に金十字を見たという故事にならったものという説がありますが、1448年にカール8世が国章として使ったのが起源とするのが確かなようです。
 本家デンマークの国旗はダンネブロと呼ばれ、1219年のリュンダニの戦いの最中に空から降ってきたとも言われる旗で、世界最古の国旗だそうです。
 そもそもなぜ十字を選んだかという点は、十字軍の存在が大きいでしょう。キリスト教国の証です。

A. 宇美浜りんさんから

 これらをまとめて「北欧5カ国」と呼ぶこともありますが、昔はすべてデンマーク領で、現在でも多数派の宗教は福音ルーテル教会であるなど、国旗以外にも共通点は多いです。
 デンマークは1000年以上続く王国で、一時は黎明期のイギリスをデンマーク人の王が支配したことがあるほど。グリーンランドがデンマーク領ですが、中間にあるアイスランドとイギリスが支配下だったころは海上で帯状につながっていたのです。
 スウェーデンは地図に地域名が登場してもデンマーク王の干渉が続き、1523年に独立。ロシアの黎明期とオスマントルコの台頭、宗教改革や新大陸への移民など、新たな時代が始まろうとしていた時期でした。
 ノルウェーはナポレオン戦争後に敗戦国デンマークからスウェーデンに譲られ、長い独立運動の末に1905年に独立。
 フィンランドはスウェーデン領でしたが、ノルウェーを受け取った代わりに戦勝国のロシアに譲られましたが、独立の意志は強く1917年ロシア革命の際に独立。ただしソ連から戦争をふっかけられ敗戦、カレリアをもぎとられました。
 アイスランドは第二次大戦でデンマークが占領されると、ドイツに占領されないよう先手を打ってイギリスが占領、のちアメリカが駐留し、1944年に独立しました。
 遅い早いの違いはあれ同じような生き方をすることも多かったのですが、最近はEU加盟などで互いに独自の道をすすむことも多いです。

A. Issieさんから

 旗竿側に縦の線が寄った十字の旗は、北欧諸国の国旗だけでなく地方旗などにも共通するデザインで「スカンディナビア十字」と呼ばれています(関係するのはスカンディナビア半島の国だけではないのですが)。
 その中で最も古いとされているのは、赤地に白十字のデンマークの国旗で「ダネブロー」と呼ばれています。
 このデンマークは、14世紀末にスウェーデンやノルウェーと同盟関係を結び、実際にはデンマークがそれらの国も合わせて支配しました。
 16世紀前半、スウェーデンがこの同盟から離脱して独立しました。青地に黄十字のスウェーデン国旗には独自の由来伝説があるのですが、実際にはダネブローを基にしたものであったようで、青と黄色というのはスウェーデン王家の紋章の色に由来します。
 ノルウェーはスウェーデンの分離後もデンマークの支配下にありましたが、ナポレオン戦争の後にスウェーデンに譲り渡されました。元デンマーク領であったことからダネブローが使用されていましたが、スウェーデン支配の下でダネブローの白十字にスウェーデンを表す青十字を重ねた旗が作られ、これが1905年の独立後も国旗として採用されました。
 アイスランドはノルウェー、そしてデンマークの支配下にありましたが、1874年にデンマークから自治を認められ、1918年にデンマーク国王主権下の王国、1944年に完全な主権を持つ共和国として独立しました。現在の国旗は独立前の1915年から使用されているものですが、ちょうどノルウェーの国旗と配色が逆になっています。
 フィンランドは12世紀半ば以来スウェーデンの支配下にあり、ナポレオン戦争の最中の1809年にロシアが奪い取りました。それでもスウェーデンの影響は強く、第1次世界大戦後に独立する際に、スカンディナビア十字の旗を国旗としました。
 フィンランド国民の大多数を占めるフィンランド人は、他の北欧諸国の国民とは言語も民族系統も違う集団ですが、「北欧」への帰属を強く意識したものなのでしょう。
 もっともフィンランド社会で文化的にも政治的にも優位を占めていたのは元の支配層で少数派のスウェーデン系の人々であり、北欧にアイデンティティを求めたのは自然なことだったかもしれません。
 ちなみに、フィンランド人と民族的に非常に近い集団が国民の大多数を占め、国歌もフィンランドと同じメロディの曲を採用しているエストニアの国旗はスカンディナビア十字ではありません。
 こうして見ると、スカンディナビア十字の旗は、特にロシアから独立したフィンランドがこのデザインをわざわざ選んだことが象徴するように、「北欧に属している」というアイデンティティを呼び起こすものなのでしょう。
 ついでに言えば、これら北欧諸国は海軍旗(軍艦旗)にも共通点があって、それぞれの国旗を長く伸ばして末端に燕尾状の切れ込みを入れたものを採用しています。ただし、これは北欧諸国だけでなく、バルト海に面したエストニアやポーランド、そしてドイツの海軍旗にも共通します。ラトビアとリトアニアの海軍旗は切れ込みのない、普通の長方形の旗です。