建築の仕事に従事している人であれば、皆知っていることと思いますが、思いのほか回答が寄せられていないようなので、誠に僭越ながら、私目が回答させて頂きます。
断面がギザギザになっている鉄板は折板(せっぱん)といい、主に屋根の材料に使用します。この利点は、鉄板を折板にすることで鉄板自体に強度が出るため、構造の梁間にその折板を渡すだけで屋根を構築することができます(通常は屋根のための裏下地材が必要)。
また、端部はその折板を重ね合わせるだけで、その接続部は高い防水性を有することができます(メンテナンスも容易に行えます)。
工場や倉庫等、大空間を形成する必要がある場合は、屋根材を軽くし、建物の構造を簡易化させ、建物自体のコストを安く押さえるメリットがあります。
デメリットとして、降雨時の音の問題や、熱の伝達等がありますが、工場や倉庫では、これらの問題をそれ程重要視されないため、折板を利用し、コストを優先する傾向があります。
この折板屋根は現在でも多く使用されていますが、建物のデザイン上見えにくくなっている建物が多くなっているため、気付かれない場合が多いと思います。
次に、「屋根の面がすべて南側に向いて建てられているような気がします」についてです。
建物を設計するときは、建物内への採光を考えて設計します。
敷地の形状にも依りますが、仮に正方形の敷地の中に長方形の建物を設計するとすると、その建物の長方形の長辺を南面に向けた方が、建物内の採光がよくなることから、特別敷地内に制限がないかぎりは長辺方向を南に向けます。それにより、屋根も同様に、長辺方向に対して勾配が付く事になります。これは、日本で太陽が南方向を適切な角度を持って通過することに依ります。
赤道直下の国に行くと太陽は真上を通過するため、これら屋根や建物の向きは必ずしも一定ではありません。
しかし……、
》「古い工場の屋根は、なぜ、ギザギザした山切りカットのような形にってい
》るのでしょうか?」
この質問をもう一度読み直すと、屋根の部材の話ではなく、全体的に見た屋根の形を言っているように思えてきました。この場合、答えが違います。
工場の屋根は通常の家のような山ひとつの屋根でも平らな屋根でも問題ありませんが、屋根をギザギザカットの形にすれば、屋根からの採光やその窓を利用した排煙面積を確保しやすくなる為、このような形状の屋根を採用します。
また、その部分の防水上の処理も容易に行えます(建築基準法で、建物に必要な採光面積や火災時の排煙面積が規定されています。壁面に有効な窓等を確保出来ない場合は、このような屋根を採用します)。
屋根面が /‖/‖/‖ のような形の場合、‖の面は、屋根の扱いですが、実際は壁のような物です。その部分に窓を付け、採光と排煙に利用します。