私が愛用しているインスタント味噌汁は、具と味噌が別々の袋に入っています。これらをお椀に入れて、湯を注いでできあがりです。
味噌の袋には、この袋を開けやすくするために「切り込み」が入っています。
ところが、具の袋には「切り込み」がありません。その代わり、「どこからでも開けられます」と表示されています。
この表示があるのは、袋を縦長に持ったときの左右の片側です。表示がある方の側は、たしかに表示通り、すこし袋をひねれば亀裂が入って、どこからでも開けることができます。しかし、表示のない側は、(手触りは同じなのに)がんばっても開けることができないのです。一体これは何がどう違うのでしょうか? 不思議でなりません。
状況が伝わったかどうか、かなり不安ですが、よろしくおねがいします。
★ありますよね。切り込みも入ってないのに、「開けられます」というタイプの袋が! どういうことになっているのでしょうか?
「こちらからならどこからでも開けられます」、商標名「マジックカット」についてです。
開けられる側の端に、長さ0.5mmの「穴」がたくさん開けてあります。
穴といっても袋を貫通しているわけではなく、最外層のフィルムだけに開けてあります。
構造的にはその加工がしてあるだけですが、強度自体は他の端とほとんど変わらず、剪断力(指で挟んで開けるような力)がかかったときだけ穴と穴の間が裂けて簡単に破れるようになっています。
開けられる側をよーく見てみると、たくさんの細長い穴が肉眼でも見えます。手元の小袋では、以下のように互い違いに3段空いていました。
| |
| | | | | | | |
| | | | | | | | | |
| | | | | | | | | |
旭化成(グループ内の一社)が開発した「マジックカット」の技術を応用した袋は何処からでも開ける事ができます。
見た目では見えない程小さな穴を規則正しく並べて、それでどこからでも切ること事が可能となってます。
肌ざわりが同じという感想ですが、それは袋を閉じる際に熱圧着したときにできる形状(エンボス形状)のお陰で、小さな穴が手で触っても感知できないためです。
この技術は開発されてから20年以上経過してますので、すでにライセンス使用料無しでも使うことが許されてます。最近は「こちら側のどこからでも切れます」と言う表示と共に多く使われるようになってます。
ただし「マジックカット」という技術の名称は旭化成の登録商標となってますので、「マジックカット」と表記されてたら旭化成にライセンス料を払って使ってることが判ります。
この「マジックカット」技術の誕生には面白い逸話も残ってますが、そちらは他の回答者にお任せしましょう。
質問者様への回答からは少し逸脱しますが、「マジックカット」なのに切れない!そういうイライラを経験した方も多いかと思います。
我が女房殿は特に、期待した結果が得られないと、その反動で返ってイライラさせられるタイプなので、とばっちりが私に向いて来てしまい、その分「切れなかったマジックカット」も印象強く残ってしまってます。
そこで、マジックカットなのに上手く切れないという現象についても(脱線話題で恐縮ですが)少し考察してみたい。
まずマジックカット以前の袋を開ける場合、上部にあるギザギザか、或いは「開け口」とか「切り口」と表示された切り欠き(英語ではノッチと呼ぶ)部分から引き裂くことになります。
ギザギザカットの場合、何処からでも開けられますが、このギザギザを目に見えない大きさにまで小さくした物がマジックカットの原理に近いと思ってください(実際には、その構造では不用意に切れてしまうので実用的では無いらしい・・・旭化成のマジックカット開発中に試してNGとなったアイデアだそうです)。
そういう切り欠きが無い場合、爪楊枝で突き刺すとか、歯で噛み切るとか、そういう破れ目の切欠を作ってやって、そこに応力を集中させることで袋を開けることができます。
この「応力集中」という現象が袋を開ける行為には必要であり、さらに「連続破断」という現象を起こさせることで、袋は開けられます(難しい表現になってしまいましたが御勘弁ください)。
「切れないマジックカット」の原因は、この「応力集中」か「連続破断」のどちらかを阻害する要因があるから起こると考えられます。
そして、その多くはマジックカットを応用してる食品メーカーの技術者が「その問題点を正しく認識できてない」ことに起因してる場合がほとんどだと思われます。
それ以外の要因として、袋を開けようとしてるユーザー側の指先に水分か油脂成分が付いていて、応力集中ができてない場合もあります。全ての場合で食品事業者の問題とはいいませんが、誰がやっても同じように開け難いならば、それは食品事業者に改善を要求してよいかと思います。
さて、以下は「開け難いマジックカット」の具体事例です。
例1: 水分や油分が付いて、袋自体がふやけて応力集中を阻害してしまってる例(スーパーの刺身の醤油やワサビ、パック入り納豆のタレなど)→タレ袋をパックの外に梱包する事で問題解決可能
例2: 袋自体の材質の繊維方向が切る方向に対して直角で連続破断を阻害してる例(最近は減少傾向にある)→袋の材質を変更する事で解決可能
例3: 袋の閉じ方で熱圧着層の最後の部分が異常に硬くて連続破断を阻害してる例(上の例2が減った分、最近目立つ事例)→熱圧着器(シーラー)の構造を改良する事で解決可能
どの例でも、消費者が食費事業者に改善要求を行うことで事態は進展しますので、消費者が声を上げることが必要です。
★えんさん、ミステリアスさん、さちこさんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。