--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1058 (2013.09.01)

Q. とんぼさんからの疑問

 メールばかりで、たまに手紙を書くことになるとあたふたしてしまいます。
 「拝啓」で始めたら「敬具」で終わる、「前略」なら「草々」とか、頭語と結語ってなんだか決まってますよね。
 あれ、
どうして、「拝啓」なら「敬具」なんですか?
 理由を知れば覚えられるかもしれないと思って尋ねています。よろしくおねがいします。

時候の挨拶なんかも難しいですね。

 郵便局のサイトから「頭語と結語」
  
http://www.post.japanpost.jp/navi/mame_dear.html


A. Hoshiyanさんから

 中国では、宋の司馬光が礼に関する儒教の経書のひとつである「儀礼」に基づいて公文書や手紙などの書式を編纂した『司馬書儀』という本があって、書き方が厳密に決まっていた。
 日本でも平安時代後期から明治時代初頭にかけて、『司馬書儀』の影響を受けつつも日本独自に発展した「往来物」と呼ばれる書簡の教書が伝承されていた。
 この「往来物」の系譜を受け継ぐ明治期の書簡文の手本書を見ると、現在の「拝啓」に「敬具」、「前略」に「草々」や「匆々」といった組合せとは違う取り合わせや、頭語だけしかなくて、結語がないものもある。したがって、古くからの厳密な規則によって、「拝啓」に始まって「敬具」終わると決まっていたと考えるのは難しい 。
 そうなると、現代の口語体の手紙における頭語と結語の組合せは、習慣上ふさわしいとされることが多いという作法の集積による経験則であり、古くからの由緒ある決まりではないと考えられる。
 ここは「拝啓」には「敬具」、「謹啓」には「謹白」、「前略」には「草々」と覚えていただくしかないかもしれない。

A. 子沢山さんから

 手紙の頭語と結語の対応は、文化としてそのような様式として確立しているとしか言いようがないのですが、代表的な「拝啓」と「敬具」、「前略」と「草々」の意味について述べます。
「拝啓」は、「拝」が「拝む、へりくだって相手を敬う 例:拝見」、「啓」が「申し上げる 例:啓上」ということから、「敬意を以って申し上げる」という意味です。
「敬具」は、「敬」が「敬う 例:尊敬」、「具」が「詳しく伝える 例:具申」ということから、やはり「敬意を以って申し上げる」という意味になり、「拝啓」と「敬具」は同じことを意味しています。
 一方、「前略」と「草々」は意味が異なります。
「前略」は、「前文としてあるべき時候の挨拶を略し、いきなり用件に入ります」という意味です。「草々」は、草に「粗末 例:草案」という意味があることから、「粗略な様子」を意味しており、挨拶が無いなど十分に尽くされた内容でなかったことを詫びる意味があります。
 なお、女性のみが使用する結語として「かしこ」というのがありますが。これは「かしこまって(申し伝える)」という意味で、ひらがなを用いることによって堅苦しい印象を避けた女性らしい表現ですが、逆に言えば正式な文書には不向きなのでビジネスなどでは用いないのがルールです。