Q. コーンさんからの疑問
駅のホームには、「○○○」や「△△△」などの印が付けてあって、乗車す
る人はそこで待つようになっています。
いつも感心するのは、電車がほぼその位置で停車することです。あれは、電車の運転手さんは、あの位置で止めているのですよね? 運転手さんにとって、それは、どれほど大変なテクニックなのでしょうか?
道路の交差点にあんなにわかりやすく停車線が引いてあるのに、きちんと止まらない車が多くいます。そこで止まろうとしないのか、止まれないないのか。やはり、電車の運転手さんは訓練されているのだろうなと思いました。
★交差点で、停車線に車の後部を合わせるくらいの大胆な車を見かけること
があります。ギリギリで交差点を通過できなかったわけでもないのに……。
A. みつおさんから
電車を運転している友人に、昔、すこし聞いたことがあります。
もう慣れたとは言っていましたが、車の運転と比べれば難しいとのことでした。
電車を停止する場所、つまり、ホームを目測できてからスピードを落とすというものではないようです。電車のスピードにもよりますが、駅の数キロメートル手前から徐々にスピードを落としていくように聞きました。
A. サンディエガンさんから
東武博物館に行くと本物の電車を運転することができます。もちろん電車が本当に動くわけではなく、パンタグラフや車輪部分が個別にセットされていて、操作をするとその部分が動くことが確認できます。
基本は「電車でGO!」で体験できる操作方法なのですが、パンタグラフの上げ下げで大きな音がしたり、実際にモーターが回って、本物の車輪が回り迫力があります。
さて電車の運転ですが、自動車の運転と違い、アクセルを無段階で調節したり、ブレーキの利き方をペダルの踏み方で調節することができません。アクセルにあたるのはモーターのスピードを決める3ノッチか4ノッチのハンドルと、ブレーキはオンかオフかの2位置しかありません。
電車をスタートさせるには、
(1) ブレーキをオフにする。
(2)
モーターのスピードをノッチを切り替えることで速くしていく。
と比較的簡単です。
ところが電車を止めるのはなかなか難しい。駅手前の数
km のところで、指定のスピードになるようにノッチを切り替えてスピードを落としていきます。ホームに入ったら微速前進のスピードに抑え(最低スピードノッチ)、停車位置に近づくとモーターを停止して微速前進し、停車位置に来たときにブレーキをオンにします。
微速前進のスピードが速すぎるとブレーキをかけたときに急停車になり、「へたくそ」とお客さんからののしられることになります。
A. よしなしごとさんから
トラックなど重い車は、乗用車に比べて停まりにくいのです。重ければそれだけ慣性が働くからです。ましてや電車なんてトラックの比ではありませんから、止まるのにも一苦労です。
重さで止まり方が変わるということは、通勤列車のような乗客が多くて重いときは、昼間のすいていて軽い電車よりも止まりにくくなります。雨が降って路面が濡れていたり、気温によってもブレーキ特性がかわるそうです。想像しただけでも大変そうです。
ちなみに『「運転」〜アシモからジャンボジェットまで〜』という本があります。いろんな乗り物の運転手へのインタビューなどが書かれていておもしろい本でした。
★ということは、大型客船を止めるのは、もっと難しそうですね。
A. 元運転士さんから
某地方都市で実際に電車を運転していた元運転士です。今は違う部署に異動したので、実際に運転はしていません。
さて、自動車の運転と電車(厳密には気動車や機関車も含みますが「電車」で統一します)の運転で大きく異なるのは、電車の運転士が運転するのは、決まった範囲の路線だけだということです。いきなり見知らぬ路線を運転することはありません。
そのため、自分の乗務範囲であれば、線路の曲線や勾配、信号機の配列はもとより、線路沿線のいろいろな目標物(オーバークロスする道路や線路際の看板等)を暗記しています。
また、電車の運転では鉄のレールの上を鉄の車輪で走行するため、摩擦係数が極めて小さいことが特徴です。そのため、駅を出発した後、一定の速度まで速度を上昇させたら、しばらくはノッチ(自動車のアクセルに相当)もブレーキも操作しない時間帯があります。これを鉄道では「惰行(だこう)」と呼んでいます。
自動車ではすぐにスピードが落ちるところですが、電車ではそうでもありません。その後、駅が近づいたところでブレーキをかけて停止させるのです。
コーンさんの疑問である「運転士が停止させるテクニック」ですが、若干乱暴に言ってしまえば、大体決まった操縦をしているため、大体決まった位置で大体同じ速度になるため、大体同じようにブレーキをかければ、大体決まった位置に止まるのです。
ブレーキをかけ始める目標物は、自分の指導操縦者から教わるのが多いと思います。指導操縦者からは、見習い期間中、ずっと横に乗ってもらっていろいろな事を教わるのです。たとえば「○○駅では信号機の1本手前の電柱」とか「××駅では駅手前の踏切」とか、「△△駅では線路際の広告の看板」といった具合です。
もちろん微調整はあり、電車の個別の特徴、運転している時間帯や当日の天気(特に雨や雪の時は要注意)等に応じてブレーキを加減するのがテクニックではあります。減速度を感じながらブレーキを調整するのですが、よく「減速度は尻で感じろ」と教わりました。
他の方が回答されているような、ブレーキがオンとオフの2段階しかない電車というのは、あまりないと思います。
また、停止の手順も勘違いされることが多いのですが、ノッチを下げると速度が下がるというものではなく、停止するためにブレーキをかけ始めたら、普通、途中でブレーキを緩めることはしません。再度ブレーキをかけたいときに効きが悪くなるからです。
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