--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1085 (2014.02.21)

Q. 祐之さんからの疑問

 学生時代に「漢文」という教科を勉強しました。「現代文」と「古文」も学びました。
 現代文を学ぶのは当然として、古文も使い道があまりないとはいえ、日本人として「まあいいか」という感じです。
 しかし、
漢文を勉強する必要性が全く分かりません。
 学生時代、返り点やら何やらを参考書まで買って勉強した記憶があります。
 あのときに勉強した漢文の文章は、現代の中国語として通じるのでしょうか?

私は数学を教えていますが、数学も似たようなことをよく言われます。
 ですから、この疑問は大変気になります。
「そんなこと言ってたら、○○だって、△△だって学ぶ価値がないぞ!」
 なんて、他の教科を持ち出して理由とするのはやめてくださいね。
 私がボツにいたします。
 ある教科を学ぶ価値について話されるときには、実用的観点、文化的観点、陶冶的観点の3つの観点があります。
 私は、漢文は面白いと思ってます(文化的観点)。それだけでも学ぶ価値があると感じています。
 ただし、学校教育の場では、それ以外の観点における価値も求められるというのは、その通りだと思います。
 祐之さんは、実用的観点、陶冶的観点からの答えを求めていると感じました。みなさん、「漢文」を学ぶ直接の意義を熱く語ってください。


A. 岐泊さんから

 漢文の効用は次の5つです。

(1)国語の試験で確実に得点できる
(2)自分の日本語をステップアップできる
(3)日本史研究の基礎学力
(4)東洋文化圏(中国や韓国)では確実に自分の価値が上がる
(5)現代中国語作文の基礎力になる

 第一に、よく誤解されてるんですが、漢文は中国語じゃありません。「漢文」は日本語です。中国の古典文学を読むために生み出された、日本語の書き言葉(文語)の一種です。
 人造の書き言葉なので、文法は話し言葉よりずっとシンプル。「例外」も無いし、覚える法則はうんと少ない。
 国語は他教科より試験得点を上げにくい教科ですが、そういうわけで、漢文だけは、ちょっと頑張れば確実に得点できる、お得分野。国語試験で高得点を狙うなら、ぜひ漢文は外さないでください。
 さて漢文も日本語なんですが、書き言葉ですから、私たちはふだんあまり使いません。でもときどき、ちょっとかっこつけたいときとか、使いますよね、「書き言葉」。
 そういうとき、日本で歴史的に長い間「最高にクール」だったのが「漢文」でした。それで、今でも決めセリフとかによく使います。なぜなら、ほんのつい最近(※日本史上)まで「書き言葉」=「漢文」だったからです。
 江戸時代までの公文書は全て「漢文」でした。昭和初期(戦前)には公文書も基本的に「漢字カナ交じり文」(現代はひらかな表記になる部分が全てカタカナ表記の文)となりましたが、その文法は、やはり漢文を基礎にしていました。
 というわけで、お宝鑑定に興味がある人、歴史が好きな人、特に日本歴史を専攻したい人は「漢文」必修。
 その他の人にもお得な情報を一言。
 漢文をマスターすると、日本語で何か考えるとき、意外と便利(英語が得意な人なら英語で考えた方が便利な時ってありますよね。あんな感じ)。
 つまり漢文をマスターすると自然に、自分の思考力や普通の日本語もブラッシュアップできちゃいます。
 言い換えると、漢文とは、古代に開発され、現代も使われている、中国の古典文を即席で日本語化できちゃう(インスタント翻訳文が作れちゃう)非常に便利なツールです。
 だから漢文がちゃんと読める人なら、現代中国語でも文語(書き言葉)なら、ほとんど意味が解かります。
 中国では映画やテレビのドラマだと必ず字幕が付きますので、現代中国語学習ゼロでも内容ぐらいはすぐ理解できます。
 漢文の原文は、現代の中国人にとっての古文です。だから現代中国語で発音したところで日常会話ではほとんど使えません。
 でも、作文だと時々威力を発揮します。
 たとえば中国語の世界標準テストHSKは会話だけでなく「作文」力も問います。中国語も日本語と同じように、話し言葉(口語)と書き言葉(文語)が同じじゃないし、書き言葉や決め台詞には古典が生きてるからです。
 中国語の作文を勉強し始めると、最初は話し言葉の文法中心なので「漢文なんて役に立たないょ〜」と思ったんですが、文語らしい文語になるほど、昔からある用語や古典からの成句が多くなり、習えば習うほど「漢文やっといて良かった…!」と実感しました。
 将来、中級以上の中国語をマスターしたい人は、今のうちに漢文を身に付けておくようオススメします。
 さて「漢文」の原典(原文)は、中国でも有名な古典ばかりです。しかし実は現代中国でも、若い人ほど古典をよく知りません。だから、外国人なのに中国の有名な故事や四字熟語を漢字でスラスラ書いたり、意味を知っていたりすると、めちゃくちゃ尊敬されます(老若不問で)。
 まぁもし、日本の古典を日本人より知ってる外人と会ったら、私たちもかなり尊敬しますよね。同じです。
 実は3年前中国に来たとき、中国語は「ニィハオ(こんにちは)」と「シェシェ(ありがとう)」しか言えなかった私が、それでも何とか意志疎通できたのは、漢字と漢文のおかげ。困った時でも書けば何とか通じるので、話せない頃は本当に助かりました。
 だからここ、ちょっと強調しておきたいんですが、自分が漢文の勉強に何時間かけたか、その他教科に比して確実に圧倒的に少ないのですが、後で役に立った度は当然英語に負けますけど、習得にかけた手間が断然違うんで……。漢文、もしかすると高校教科中でコスパNo.1かも。