Q. Kztさんからの疑問
軍隊の階級の呼称には次のようなものがあります。
大将−中将−少将
大佐−中佐−少佐
大尉−中尉−少尉
また、太政官の職位にも、次のようなものがあります。
大納言−中納言−少納言
大弁−中弁−少弁
大史−中史−少史
大外記−中外記−少外記
これまであまりこれを不自然だとは思っていませんでした。しかしよく見ると、なんだかおかしいではありませんか。
日本語では、大きさを表すのであれば「大−中−小」を使います。
大びん−中びん−小びん
大学生−中学生−小学生
のように。
いっぽう、数量を表す場合なら「多−中−少」の順ではありませんか。
なぜ、位・階級・地位・職位の序列では、「大−中−少」が使われるのでしょうか? 「大尉−中尉−……」とくれば、つぎは「小尉」になるはずではありませんか?
あるいは、もし「少佐」が正しいとすると、「多佐−中佐−少佐」となるべきではありませんか?
「大将−中将−小将」なら一貫性がありますが、実際にはそうなっていません。
誰かが最初にうっかり間違えてつけてしまったのでしょうか?
★こういうときは「間違っている」という気持ちを一度横に置いて、「正しい」とすればどんな解釈があり得るだろうか――と考えてみるとよいと思います。きっとわけがあるのです。
A. ヒデさんから
「大」の反対語が、「小」しかないと考えるとそのような疑問が生まれてきます。
でも、「少年」に対して、「大人」があるように、「大−少」という関係もあるようですよ。それなら納得ですね。
A. Hoshiyanさんから
幕末より幕府と一部の藩で行われた西洋式軍隊創設は明治新政府に引き継がれ、ヨーロッパの軍隊の階級を取り入れる際、律令制の官職にあてはめられた。
英語の“General”は「大将」で、律令制の呼び方は「だいしょう」。“Lieutenant
General”は「中将」で、律令制の呼び方は「ちゅうじょう」(和語では「すけ(介)」)。“Major
General”は「少将」で、呼び方は「しょうしょう」(和語では「すな(少)いすけ(介)」)だ。
聞きなれない和語の「介」は、「付き添って助ける」という意味から大将の補佐や補助という意味だろう。少将「少い介」に対して、中将には「大い介」と呼ぶことがあった。中将の「大い介」と少将の「少ない介」は大と少が対義語として使われていることが分かる。
「大」には規模などが「おおきい」という意味以外に、「優れて立派である」という意味がある。それが転じて、官職の等級や位がこの上なく高いこと表す。
「少」には、数などが「すくない」という意味以外に、「年が若い」という意味がある。それが転じて官職の等級や位が下位のものを表している。
「中」は単に大と少の間の中等や中位という意味だろう。
したがって、官職の場合、「大将−中将−少将」でも矛盾がないと思われる。
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