Q. ともやさんからの疑問
マイクロフォンについて疑問があります。
短くして「マイク」といいますが、正しくは「マイクロフォン」だと思います。つまり、「小さな音」という意味ですよね。
これに対して、「メガホン」という道具もあります。これは、「大きい音」という意味だと思うのです。
そう考えると、メガホンは確かに声を大きくしてくれます。この道具を「メガホン」と呼ぶことに違和感は感じません。ところが、マイクロフォンは音を小さくするわけでも、小さい音を拾うわけでもありません。なのに、どうして「マイクロフォン」と呼ばれているのでしょうか?
もう一つ、マイクロフォンとメガホンはどちらが先に発明されたのでしょう?
★私の予想では、メガホンが先かな? 需要があるように思います。
A. kztさんから
マイクロフォンは小さい音声を感度よく拾う装置、メガフォンは大量の空気を振動させ大きな音声を出す装置で、用途がまったく違います(入口と出口)。
マイクロフォンは、小さな音声を敏感に拾うために、音波を検知する部分の慣性質量がごく小さくなければならず、マイクロということばはこれに由来します。
メガフォンは、音声信号を電気的に増幅して、大きなコーンとそれに接する大量の空気を力ずくで振動させる装置です。大音量を出すためには、大量の(大質量の)空気を同位相で振動させねばなりません。メガということばはこれに由来します。
どちらにも「……フォン」と付き、原理的にはほぼ同じものですが、用途は正反対なのです。メガフォン(スピーカー)をうんと小さくすればマイクロフォンになりますし、マイクロフォンをうんと大きくすれば、メガフォン(スピーカー)になります。
「マイクロフォンは音を小さくするわけでも、小さい音を拾うわけでもありません」と質問にありますが、マイクロフォンはまさに後者の「小さい音を拾う」ための装置なのです。
厳密に言えば、マイクロフォンには増幅器が付随していないことが多く、アンプで増幅します。またメガフォンにはアンプがセットになっていることが多く、スピーカーだけではメガフォンと言いません。上述の「メガフォン」に
(スピーカー)と付記したのは、原理的にほぼ同じなのは「マイクロフォン」と「スピーカー」だからです。
マイクロフォンは音を拾う装置ですが、スピーカー代わりに使うことも原理的には可能です。ただし、ものすごく微小な音しか出せません。
スピーカーは、音を出す装置ですが、マイクロフォン代わりに音を拾うことも原理的には可能です。ただし、とてつもない大きさの音声でなければ、拾えません。小さい音声ではコーンが振動しないのです。
ちなみにイヤフォンが小さくて済むのは、鼓膜近傍の空気の質量がごくわずかしかないからです。
A. うにうにさんから
先に発明されたのは
megaphoneで、17世紀の中頃の発明とされています。
もっとも、紀元前5世紀の古代ギリシャの仮面劇で、口の部分にメガフォン状の共鳴器具がついた仮面が使われたことがあるそうなので、昔から似たような思いつきを考えた人はいたのかもしれません。
一方、19世紀に入ってから(正確には1827年)、チャールズ・ホイートストーン(電報の仕組みを発明した人)が、いまでいう聴診器のような装置を作り、それに「マイクロフォン」と名付けました。
彼が micro という語を使ったのは、「聞こえないくらいの小さい音を、耳元にまで伝えてよく聞こえるようにする装置」という意味であり、「小さくする」という意味ではありません。
それ以前に、microscope(顕微鏡)という単語は17世紀中頃にはすでに使われており、こちらは
micro(小さなものを)scope(見る)という構成ですので、それと同様の発想で名付けたのでしょう。
その後、1876年になってエミール・ベルリーナーが、今日のような電気信号に変換する装置を発明し、これも「マイクロフォン」と呼びました。
その時点では、「聞こえないくらいの小さい音を拾う」という意味合いは失われており、単に「音を拾う」という意味合いだけで、聴診器と共通する名前を使ったのではないでしょうか。
ネット検索をしていたら、同様の質問があり、「マイクロフォンだって音を小さく(というか電気信号に変えて聞こえなく)しますよ。それを大きくするのはアンプやスピーカーの役割」という趣旨の回答が寄せられていて、面白い説ですが、たぶん後知恵ではないかと思います。
★マロさん、村野さんからも、回答をいただきました。ありがとうございました。
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